復讐24話
もう、何人に裏切られた?
10? 20? 100??
あの後も追っ手が来た。
皆、かつての仲間だった。
土属性のUS《大地ノ守護者》を使うゴルドーブ。
重力のUS《重サヲ司ル者》を使う、ラーグ。
味方だった頃は心強かった。
だが、もう味方ではない。
もう、一緒に戦えない。
裏切りは人を劣化させる。
裏切った者も、裏切られた者も。
「っ………ぁ」
あの2人のUSをまともに食らって立っているのが不思議でたまらなかった。
スキルのおかげだ。
だが、そのスキルももう使えない。
もう、消えてしまった。
「なんッ………で………なんで俺が………こんな目に………ッ!」
「おい! 居たぞ!」
「クソッ、兵士かよ………」
まだ一般兵よりは高いステータスは残っている。
それと、勘を駆使して、なんとか逃げ延びるユイト。
だが、逃げた先でも石を投げつけられ、避けることもせずに傷を負い、謂れのない罵倒を浴びせられ、侮蔑の目を向けられた。
もう、身も心も限界だった。
すり減った精神は、ユイトから生きる気力まで奪い去ってしまいそうだ。
「あ………ぅ………」
ユイトは進んでいく。
瞳には、もうかつての様な希望に溢れた光はなく、只々暗く重い。
俯いて前を向こうとせず、うわ言をつぶやいている。
それでも、足は前へ前へと進んでいく。
「ユージン………アリシャ………リーリア………師匠………」
かつては抱いていた友情や恋情は憎悪に変わっていった。
「マーリャ………キュール………リュール………キャサリーンヌ………アルマ………」
これは夢ではない。
いくら否定しようとも、何もかもが現実だ。
「ゴルドーブ………ルーグ………ラルグ、ファマロ、ティア、アブトール、クルシュ、ウィル、モリア、アリアナ、ジョセフ、フォールド、ファナ、ヴァレン、リアーナ………っ!」
皆、敵である。
「何で裏切るんだッ!!! 醜いからか!? この力のせいなのか! だったら何で優しくした! 何で希望を持たせた! こうなることくらいわかっていただろう!? これが見たかったのか!! こんな絶望を見せたかったのか! 何が勇者だ………何が英雄だ! 全部嘘だろうが! ちくしょう………ッ、ちくしょうッッ………………ぅ、ぅう、うううあああああああああああああああああアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
慟哭はやがて怒号へと変わる。
何故悲しいのか。
誰のせいだ。
誰が自分をこんな目に遭わせたんだ。
何を憎み、恨めばいいんだ。
…………俺は、どうすればいいんだ。
そう思った瞬間、ユイトの中でかすかに残っていた支えのようなものが完全に崩れ去った。
そしてユイトは、あの洞穴の中で、復讐を誓った。
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「これこそが、今のお前の原点」
俺の………原点。
「私は見ているぞ。お前の歩いた道を。だが、お前の歩く道は、まだ見えない。お前のこの先を私は知らない。しかし、始まりを忘れるな。原点を魂に刻め。そして、己が復讐を果たす道を進め」
忘れるものか。
何もない空っぽの俺が持っている唯一がこれなんだ。
忘れてたまるか。
これを失えば、俺は生きる理由が無くなる。
何故ならこれは、空っぽになった俺に残った、唯一のモノなのだから。
「さァ、行くがいい。復讐者よ」
意識がだんだん遠のいていくのがわかる。
ユイトは、徐々にボヤッとしていく意識の中、最後のこんな声を聞いた。
「その道の果てを、私に見せてくれ」
最後の最後に聞いたその声は、何故か今までより、人間らしい声がした。




