復讐23話
「うぐっ………急いで逃げないと………マーリャのUSで見つかってしまう」
ユイトは、一階を徘徊していた。
兵士が多い。
何として抜けなければならない。
「どこいくのぉ?」
くねくねと腰をひねりながら近づいてくるのは、かなり奇抜な格好をしたオカマだった。
「!? そうか………お前もいたのか………」
このオカマの名はキャサリーンヌ。
おかしな名前だが、強い。
体術の達人で、五大属性のうち、火を操る。
彼は、王都の冒険者ギルドのギルドマスターだ。
一緒に酒を飲んだり、クエストにも何回も行った。
信頼している。
だが、
「あらま、お前ですって? 口調が変わってるじゃな〜い。ゴ・ミ・ク・ズの分際で………ナマ言ってんじゃねぇぞォオオオオ!!!!!!」
もう、何を信じればいいのかわからなくなった。
運が悪い事に、ここには五大属性使いが、多数集まっている。
そしておそらく、それらは全員敵であると思い知らされた。
「クッソ………!!! 何でだ………俺が何かしたのか!? 訳がわかんないよ! 何でこんな目に遭うんだよ! おかしいじゃないか! こんな………こんなのあんまりじゃないか………………ッッ!!」
キャサリーンヌは、ピタッと足を止めた。
そして、俯き、眉を顰めた。
ユイトは少し、希望を持った。
わかってくれたのか? と。
だが、そんな希望はあっさり壊された。
「ぷっ、ふふふ………おっほっほっほ!! おかしい? あんまり? 知った事じゃないわよ! それは全部、あなたがバケモノだからでしょお? あんな醜くて悍ましい英雄を、誰が求めるっていうのかしらぁ? 勘違いしてんじゃねぇよ!! いいか? テメェはもう用済み何だよォ!! とっととくたばれゴミクズ」
愕然とした。
ここまでくる流石にわかる。
もう、味方などいないのだ。
ユイトは、その場に立ち尽くした。
「アバヨ、バケモノ!」
US《万物ヲ灰燼ニ帰ス者》
放たれた業火は、全てを焼き尽くすが如く燃え上がり、ユイトを込こもうとした。
「させぬよ」
ユイトがそれを避けようとした瞬間、突然横から水が飛んできた。
US《激流ヲ制スル者》
「アルナ………!」
「ユイト、久しいな」
青髪ポニーテールの少女がユイトにそう言った。
彼女の名はアルナ。
魔王討伐前に戦った魔王幹部との戦闘で、共に戦った戦友だ。
交流は以前からあり、 よく一緒に過ごした。
「君は、味方………なのか?」
「ああ。勿論だ」
アルナはユイトの横に並んだ。
「キャサ、ユイトに手出しはさせぬぞ」
「あらぁ、アルナちゅあ〜ん。そっちに着く何て愚かねぇ〜。そいつ生きてても誰も得しないゴミなのよ〜」
「ふん」
アルナは小声でユイトに尋ねた。
「まだ戦えそうか?」
「うん。でも、あと一戦が限界だ」
グレイルのUSによって、もう、勝てるかどうかギリギリのステータスになっていた。
「そうか………グレイル殿が………では私は奴を引きつける。そのうちに逃げろ」
「! そんな………君を置いて逃げる何て………! それに、 君は奴の親友だろう!?」
「案ずるな。私は奴と相性がいい。死ぬことはまずあるまいし、私も奴を殺さない。さァ、行くんだ!」
ユイトは振り向いた。
アルナはその姿をじっと見ている。
………
「どうしたユイト、急げ!」
「もういい………」
「え?」
「もう………いいッッ………!!」
ユイトは、ボロボロと涙を流しながら、こう言った。
「それも………演技なんだろ………ッッ!?」
「一体何を………」
「演技じゃないならッッッ!! ………演技じゃないらなら、なんで師匠がやったって知ってるんだ………?」
「!」
そして、アクアの目が、途端に冷たい物になった。
ああ、その眼………やっぱり、もう何処にも、味方なんかいないんだ………
「クッソオオオオ………………ぉぉ………」
「んもう、演技下手ねぇ、アルナちゃん」
「知らぬよ。キャス、消すぞ」
「はいはーい」
2人は、同時にUSを放った。
「ッッッ!!!!!!」
ユイトは、ありったけの力でそれを耐え、2人の足を動けなくさせたあと、街へ逃げていった。




