復讐18話
「これが扉か………」
地面の灰を払って現れたのは、人一人分くらいの大きさの鉄の扉だった。
もう、しばらく動かされていなかったのか、かなり錆びている。
「まぁ、あんな骨の山のが出来るくらい放置されてたら仕方ないな」
砂鉄で灰を退けていく。
すると、
「ん? 何だこれ?」
扉には6つの円があり、それぞれマークが書かれている。
3つの円があり、それを囲う1つの円。
その外に1つの円。
そして、外の円の方へ更に離れたところにもう1つの円がある、と言った配置だ。
天秤のマーク。
武器が集合したマーク
大きな眼のマーク
この3つの円が集まっており、それを囲っている円には、3つの円を腕で覆っているヒトが描かれている。
その外に、
炎に包まれたドクロのようなものを表したマークがある。
そして、
「ん? これは………?」
何故か外の円には何のマークも書かれていない。
えらく汚れているし錆もひどいので、単に見えなくなっているだけかもしれない。
「よく考えてみたら、この遺跡にこんなマーク無かったよな………何なんだ一体」
ユイトがこの遺跡で見たものは、まだ全貌の一部だけなのかもしれない。
そう思えてならなかった。
「今はいいか。さてと、この扉を開けるとするか」
ユイトは取手に手をかけ、強く引っ張った。
しかし、
「あ? 動かねぇ?」
ビクともしない。
どれだけ強く引っ張っても動く気配すらない。
「どうなってる? 何でここまで強く引っ張ってるのに何も反応が無いんだ?」
軽く屈み、思い切り踏ん張ってもう一度引っ張るが、やはり動かない。
「鍵穴は………やっぱないか。んー、不可解。これは扉じゃないのか?」
ユイトは扉をコンコンと叩いてみる。
しかし、奥には確実に空洞があるようだ。
「………このマークか?」
5つのマーク。
これが鍵を握っている気がする。
「………このマーク………髑髏に炎か」
ユイトは、その中の1つに何か思うところがあった。
髑髏と炎。
ユイトはそれに手を伸ばす。
それぞれのマークは、何かを象徴しているとユイトは思った。
そしてこのマークは——————
バチッ!!
「痛ッッ!」
円に触れた瞬間、手に謎の痛みが走った。
少し手が痺れている。
電撃のトラップかと思ったが、どうも様子が違う。
すると、
「!?」
そこから謎の光が溢れて、ユイトを照らした。
「お、お、おぉ? 害は無さそうだな………む」
光は空中に文字を書き始めた。
“閉ざされた扉に触れし者よ。我が問いに答えよ——————汝は何者だ”
「何者?」
おおお、どう答えれば正解なんだ?
人間? 異世界人? 黒神 結人?
ユイトは少し頭をひねって考えてみる。
わからない。
「………何者………何者か」
頭の中を空っぽにして考えた。
今の俺は何者か。
そうだ。
簡単な事じゃないか。
これは、俺が生きる唯一の理由。
俺はそれを果たそうとする者。
ならば、答えはただ一つだ。
「俺は………“復讐者”だ!」
“復讐者………通行を許可する”
ガコンッ!
「あ?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
完全に今思いついたのに、と思ったが、許可をするなら別にいいかと放っておいた。
音が聞こえたのはこの扉の奥。
扉をよく見ると、マークの配置が少し変わっていた。
何も書かれていない円が消えていたのだ。
「じゃあ………」
扉を引っ張ると、さっきまでビクともしなかったのが嘘のように簡単に開いた。
「今のが鍵だったのか………?」
ユイトは一歩前に踏み出した。
すると、
「!!」
不気味な気配に思わず足が止まる。
頭の奥で、これまで培った勘が警鐘を鳴らしていた。
奥から何かを感じる。
その謎の気配に圧倒されそうになった。
「何かが………いる!」




