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【二巻発売中!】追放された勇者の盾は、隠者の犬になりました。  作者: 家具付
いかにして盾師と隠者は日常をつづっているのか
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轟音=日常に盾が必要な東区


そして到着した東区との境は、なんだか大きな丸太をいくつも組み合わせた形をしていた。

これは何なんだろう、何かの結界なのかな。

それともこれが、北区では誰でも人間に見える術のなにか?

まじまじとそれを見上げていると、くいを手を引かれてしまう。お兄さんは迷いなく進むらしい。

先を行くマイクおじさんの方はもっと足取りが軽い。

でも。

マイクおじさんは当然のように剣に手を伸ばすし、片手の盾はいつでも構えられるようになっている。

何かしらの緊張感を伴うらしいのだ。

マイクおじさんはソロではそこそこ、でも足をやられているから、外のフィールドに出ない人。

その人がこれだけ緊張するって東区なんなの。

なんて思いながらも、開いた片手をどう動かすか考えていたら。


「おお盾をかまえておけ、子犬。すぐに理由はわかるから」


お兄さんがふわりと自分には薄絹を被せて、忠告をしてくれた。

その薄絹は天女の羽衣と呼ばれる素材で、見た目は軽やかでも上位防御装備を凌駕する代物だ。

至高蜘蛛といわれる、非常に高い山にのみ生息する、霞をすすって生きる蜘蛛が尻から出す糸を使用しているのだとか。

これは上位防御装備なんて、玩具みたいな防具だとか。

見た目は日差しを遮る、そこら辺にありそうな砂漠の布なんだけど。


「お兄さん、あれ被らないの。いつも被ってる布」


「あれはここでは目印になりすぎる、ひっそり動くにはこちらの方がまだいいだろう」


ああ、神殿でもどこでも、お兄さんの目印になったもんな、あれ。

この前被った布を見た、人間の対応を思い出して納得したおれだった。

そして、東区ってだけでそんなに危険なのかと疑いを抱きながら、おれはお兄さんと丸太の入り口を抜けて、

突然響き渡った轟音で、盾が必要と言われた意味を知った。

反射で盾を構えて正解だ、がれきがパラパラ落ちている。

お兄さんも庇う形で展開したおれのデュエルシールドは、いい仕事している。

焼け出されて結構、損傷しているかもしれないのに。

手入れをきちんとしなければ。


「やれ、先導しすぎたらだめだな。やっぱり凡骨の範囲内にいて正解だ」


いつの間に戻ってきたのか、マイクおじさんがおれの背中で言っている。

いったいいつ、おれの守備範囲に入ったんだ……あなどれない。

シールドをおろして周囲を見回せば、住人は慣れたもので落ちてきたがれきをよけていたり、飛び越えていたりしている。

さらには当たり前の顔で撤去作業している集団もいる。

何なんだ。

訳が分からないから、固まったとたん。

また爆音が今度は上からで、デュエルシールドを上に掲げて防ぐ。


「ふんぬっ!?」


結構大きいがれきがシールドに直撃したぞ、これ!?

片手ではぶれるほどの衝撃で、こんなの滅多にない重さだ。

腰の筋肉を使ってそれを払えば、重たい音がその辺に落ちた。


「おい誰だ? シュペルのがれきをあんなに軽々吹っ飛ばす猛者」


「マイクが連れてるから、新しい住人だろ。それよりも夜明けまでにこれを撤去するのが先だお前たち!」


「まったく、若君たちは困ったものだ」


音の背後でいくつかの声を拾う。がれきに名前がある事に対しての突っ込みがいるのか、それとも撤去が当たり前のことに色々な衝撃を受けるべきなのか。

若君なる何者かが、これを引き起こす事に対して苦情を言うのが先なのか。

全然わからないんだが……わからないんだが……


「凡骨がいるなら楽に通れるぞ、ほらこっちだ」


マイクおじさんが当然の調子で言い出すから、取りあえず意識を切り替えた。

ここをお兄さんが通るために、盾は有効に動くだけだ。

さて、どれくらい根性が必要かな。内心で予想しても、次に来たがれきでそれは覆された。

おれの三倍くらいのが飛んできて、しょうがないから全力で薙ぎ払う羽目になったのだから。


「だれだよこんなくそ迷惑なことしでかしてる連中!?」


わめいたおれは悪くない。北区がひそやかと言えそうな位、このあたりすごい。すさまじい。

上の方から爆音と轟音とがれきが降って来るのが東区の日常なのか、それでほかの住居に被害は!?

というかこんな争いみたいな事日常で、普通の生活おくれるのかよ!?

おれの思いは伝わったらしく、マイクおじさんがおれの範囲で言う。


「だから北区と東区と西区で、住み分けてるんだ。いかんせん東区は騒がしいことこの上ないんだからな」


「そんな軽い言葉で終わる事か!? 何かすごく間違ってるぜおじさん!」


「大丈夫だ、もうじき五時になる」


「は……?」


お兄さんがどこかを見て時間を言い出し、それと同時に間の抜けたような鐘の音が響いた。

すると轟音も爆音もがれきも止まったのだ。


「大体若君たちの通学時間帯だけだからな、騒がしいのは」


何を知っているのか、お兄さんが普通だと言わんばかりの声で言った。


「……とりあえず、わかぎみって……」


「日が暮れる前に物件三つは回るぞ、凡骨。隠者殿。一つ目はここからほど近い場所で、市場に近いから買い物が便利だ」


おれの質問は、せかすマイクおじさんによって解決されなかった。

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