第73話/Jacks
第73話/Jacks
ルゥと別れた帰り道。俺は、とある店に向かっていた。アオギリの言った、ジャックスに会うためだ。まだいると確信があるわけではないが……
ジャックス。英語表記にするとjacksだ。これを逆さまに綴ると、skcaj、スカッジになる。あまりに単純だったが、今のところこれしか手掛かりがない。そもそも、こっちで英語表記が通じるのかも怪しいな。
そして俺の推理では、スカッジのオーナーがジャックスだと踏んでいた。自分の名前をもじって、店名にしたんだ。
足を止める。目的地に着いたのだ。俺は暖簾をくぐると、目の前の人物に声をかけた。
「オヤジさん」
「……ダンナ」
そこにいたのは、屋台のオヤジ……俺がジャックスと考えている人がいた。
「オヤジさん。いきなりだけど、少しいいかな」
「……」
オヤジは無言だったが、俺の言葉をまっているようだった。
「あなたは……あなたの名前は、ジャックス。メイダロッカ組初代組長の友人、ですね」
「……何ゆえに、そんなことを?」
「全部推測です。ポッドの店の名前がジャックスの逆さまだったから、ですよ」
「……なら、怪しいのはポッドの方なのでは?」
「俺も最初はそう思いました。ポッドは、先代がよく店に来ていたと言いましたから。けど、あなたはこう言っていたのを思い出したんです。先代は、うちの常連だった、とね」
「……」
「だからこう考えたんです。スカッジは、もともと別の誰かの店だったんじゃないか。ポッドはその誰かから譲り受けたんじゃないか。だとしたら、その譲った人物がジャックスなんじゃないか」
「……そしてそれが、アッシだろうと」
「ええ。それならうちの常連というのも筋が通るし、ポッドが得意でもない弁当屋をやってるのも納得できる……けど、分からないこともあります」
「ほお?」
「ええ。それは、あなたが先代の友人であることを隠していることです」
そう。別にこんな探偵まがいのことしなくたって、ひと言いってくれれば済んでいた話だ。それをどうして、オヤジは教えてくれなかったのだろう。
「……何か理由があったのだろうとは、思っています。けど、今の俺には……俺たちには、あなたが抱える秘密が必要なんだ」
「……別に、秘密なんて大それたもんじゃありません」
オヤジは一つを残して、照明を落とした。薄暗い屋台の中を、白熱灯のオレンジ色がぼんやりと照らす。その光は、オヤジの顔に深い陰影を刻んでいた。
「それに、隠すつもりもなかったんでさ。ただこっぱずかしかったもんで、話す気もなかったですがね」
「こっぱずかしい?」
「けどここまでバレたんじゃあしょうがない。すべてお話ししますよ、ダンナ。アッシとアオギリのオジキの話をね」
オヤジはグラスに酒を注ぐと、一気にぐいっとあおった。
「かっ……アッシはね、ダンナ。もとはプレジョンのヤクザだったんです」
「オヤジさんが……」
「ええ。昔からガタイと腕っぷしだけはよかったもんで、調子にのってイキってばかりいた、ただのチンピラでしたよ。そんなもんだから、いつしか目をつけられて、アッシは嵌められる形でプレジョンを追われることになった」
オヤジはおもむろに片手を差し出した。その手には、本来あるはずの小指の先がなかった。
「小指を……?」「小指を……?」
「ええ。おかげで命は拾いましたが、無一文で見ず知らずの場所に放り出されましたから。ひたすら歩いてここの町先でぶっ倒れた時は、さすがにのたれ時ぬ運命かと思いましたよ」
オヤジはさまよい歩いた挙句に、パコロにやってきたのか。
「そして結果として、アッシはまたも命を拾うことになる。一人の獣人の女の子が、アッシを助けてくれたんでさ」
獣人……俺がルゥ出会ったように、オヤジも誰かと知り合っていたのか。
「その子は見ず知らずのアッシに、懸命に尽くしてくれた。今思えば、単に身寄りのない状況で、自分を守ってくれる存在が欲しかっただけだったのかもしれやせんが。それでもアッシにとっては、それが何より嬉しかった」
オヤジはひと口酒を飲んだ。
「けれどある日、その子はパッタリ来なくなった。探しに行ってみると、どうにも悪い男どもに捕まっていた様でしてね。アッシがやつらの根城へかちこんだ時には、その子の耳と尻尾は焼きっ切られちまっていた」
「なっ……!」
「連中にとっちゃ、家畜と何ら変わらない感覚だったんでしょうがね。ぴーぴー喚いていやしたが、聞く気はありゃせんでした」
オヤジの細い目の奥で、火花が散っている。まさかオヤジは、そいつらを……?
「……殺しちゃいません。もっとも、奴らは死んだほうがマシと思ったでしょうが」
「……それじゃあ、今はその子は……?」
「元気でやっていやす。今ごろ、たいしてうまくもない弁当でも仕込んでるんじゃないですかね」
「え!」
思わず大声を上げそうになった。それって、ポッドのことだ。ポッドも獣人だったとは……
「ちょうどそのころに出会ったのが、アオギリのオジキです。オジキはアッシらに住む場所と、生きる術を与えてくれやした。アッシが料理を、ポッドが医術を学んだのはそん時でさ」
「多才だったんだな、先代……」
「そうでさぁね。どちらかというと、人の長所を伸ばすのが上手いといいやしょうか。今思い返せば、具体的な指導は何一つ受けてない気がしやす」
そ、それもすごい話だな……
「ダンナの察しの通り、スカッジはアッシの店でした。ポッドは住み込みの従業員だったんです。ただ、悪いことしてるとバチが当たるといいますか、時たまたちの悪い連中が訪れることがあったんでさ」
そうか、オヤジは最初から屋台をやっていたわけじゃなかったんだな。
「アッシは同じ穴の狢でしたが、ポッドはカタギだ。アッシは店を譲って、一人屋台でこの町をうろつくことにしたんです」
「なるほど……」
「さて、いかがですかい。これがアッシたちとオジキとの全てですが」
「あ、そうだった!それ以外にも聞きたいことがあるんです」
「なんでしょう。ここまで腹割ったんだ、答えられることならお答えしやすよ」
「実は……先代は、マフィアについて、なにか言ってなかったかと」
「マフィア、ですか……」
オヤジはしばらく考え込んでいたが、やがてお手上げだというように首をふった。
「すいやせん、ダンナ。皆目検討もつきません」
「どんなささいなことでもいいんです。先代から、なにか聞いてませんか?」
「……ダンナ、えらく食い下がりやすね。まるでアッシが知っていると、確信がおありのようだ」
「そ、それは……」
本当のことを言って、はたしてオヤジは信じてくれるだろうか。
「えっと……馬鹿げてると思うでしょうが、先代から聞いたんです」
「……」
「……あの、別に気が触れたとかではなくでですね」
「いや、失敬。驚いていたんですよ。まさかほんとに現れるとは……」
現れる?困惑する俺をよそに、オヤジはぬーんと唸っている。
「あの、オヤジさん?」
「……じつは、オジキから言いつかっていたことがありまして。『ワシが死んだ後、ワシからの伝言だと言いに来る奴がいたら、そいつに渡してほしい物がある』、とね」
え……死んだ後に、伝言?それじゃまるで、死後に幽霊になることが分かっていたみたいじゃないか……?
「まさか、ダンナがその人になるとは思いもしませんでしたが。ダンナ、いったいどうやってオジキの伝言を聞いたんです?」
「ああ、墓参りの時に……」
いや、よそう。正直、うまく説明できる気がしない。
「俺にも原理はよく分からないんですが。今日、そういう経験をしたんです」
「そうですか……あの人は、どこか掴みどころのない人ですから。ひょっとすると、どこかでひょっこり生きてるのかとも思いやしたが……」
「うぅ~ん……それは流石にないと思います……」
なんたって、俺はこの目で幽霊になってるのを見てるからな。
「ふふっ、冗談ですよ……分かりやした。ダンナ、オジキからの伝言です。ワシの部屋の、空色の背表紙の本を探して読め。以上でさ」
空色の本……
そこに何が……あるいは全てが、描かれているのだろうか。
「ありがとう、オヤジさん。礼はまたいつか」
「ええ。お待ちしてやす」
俺はスッと立ち上がった。
「……ダンナ!」
暖簾をくぐりかけたところで、オヤジから声をかけられた。
「追伸です。オジキはもしこっぱずかしいようなら、一人の時に読め。ともおっしゃってました」
恥ずかしい?ほんとにどんなことが書かれているんだろう……
「わかりました。なにかあれば、後でお知らせしますよ」
「……いえ、そいつは結構です」
「え?」
「オジキは、アッシにはそれを伝えようとはしなかった。きっとアッシではいけない理由があったんでしょう。なら、アッシはそれを知らない方がいい」
オヤジは確固たる口調で言い切った。
「……はい」
俺はそれだけ残して、屋台を後にした。
オヤジとアオギリ。友と呼ばれた二人の間には、きっと目に見えないものがたくさんあるのだと思ったからだ。
「あ、ユキおかえりー。どうだった?」
「キリー」
俺が事務所に戻ると、キリーが退屈そうに煙草を燻らせていた。
「ちょうどよかった。キリー、手伝ってくれないか?」
「むえ?」
俺は自分の部屋……つまりは、元はアオギリの部屋だった場所へと向かった。
「キリー。どうやらここに、空色の背表紙をした本があるらしい。そしてそれは、先代からのメッセージなんだ」
「おじいちゃんの?」
キリーはきょとんとした顔で言った。
「ああ。それで、探すのを手伝ってほしいんだけど、いいか?」
「うん!なんだか宝探しみたいでワクワクするね!」
キリーはスーツの上着を脱ぎ捨てると、積み上がった本の山を切り崩しにかかった。
これなら部屋を片付けとけばよかったな。俺は少し後悔しながら、本棚を調べ始めた。
しかし、空色の本はなかなか見つからなかった。捜索が三十分に及ぼうかというとき、キリーが声を上げた。
「あ!」
「なに!キリー、見つかったか!?」
俺は一目散に駆け寄ると、キリーの手元をのぞきこんだ。
「ユキ、これ。すっ……………………ごいエッチな本」
「やめなさい!」
結局、目的のものはどれだけ探しても見つからなかった。
「うあーん、モヤモヤするよぉ」
「くそ、なんでだ?もしかして、部屋の外にあったりするのか……」
「えー!」
「……キリー?あれ、ユキも。帰っていたんですか」
「あー!ウィロー、いいところに!」
「はい?」
俺たちはウィローに事のあらましを説明した。
「なるほど……それが本当なら、確かに貴重な情報ですね」
「オヤジさんがウソをつくとは思えないんだ。なら、必ず事務所のどこかにその本がある……ってことだろ?」
「そうですね。こうなったら、家捜ししますか!」
「わたし、他のみんなも呼んでくるね!」
「ああ……くそ、どこだー」
それからしばらくの間、事務所の本という本はひっくり返され、引き出しという引き出しは引っこ抜かれた。
「キリー、そっちはどうだ?」
「だめー。なんにもないよ」
「こちらの棚も全滅です。スー、あなたの部屋は?」
「ちょ、ちょっと待って。そろそろ本棚までの道が開通するから……」
「……正直言わせてもらうけど、スー。あんたの部屋がいちばん怪しいわ」
「ええ」
「うん」
「そうだな」
「うわーん!いじめないでよぉ!」
かくして俺たちは奮戦したが、とうとう目的の本は見つからずじまいだった。
「ど、どうなってるんだ……」
「やっぱり先代の部屋が怪しいのでは?」
「えー、ちゃんと探したよぉ。けどエッチな本しか出てこなかったもん!」
「……」
「ウィロー、解ってやってくれ。その、いろいろと」
「ええ。いやその、呆れて……いろいろと」
結局その日は、解散ということになった。
俺もとぼとぼと部屋に戻る。だけど、諦めきれないなあ。部屋にあるって、オヤジは言っていたのに。やっぱりもう少し探してみようか。
「……ところで、なんでここにいるんだ?」
「んー?えっへっへ」
俺は、相変わらず下は丸出しの恰好で、ベッドに寝っ転がるキリーに声をかけた。
「なんかね、久々におじいちゃんの話したなって。おじいちゃんがいなくなってから、そのことに触れちゃいけないような気がして、ちょっと寂しかったんだ」
「……そうか」
「うん。だから、もう少しここにいてもいい?」
「ああ。けど、俺も適当にすごさせてもらうぞ」
「いいよ~。しばらくしたら戻るね」
そう言うと、キリーは寝そべって本を読み始めた。この部屋に転がっていたものだろう……まさか、エッチな本じゃないだろうな。
俺はそんなキリーを横目に、本の捜索を続けていた。本の中身までパラパラまくってみたり、日焼けで変色したんじゃないかと目を凝らしてみたり……こんなんで見つかれば、それこそ拍子抜けだが。
パサリ。
ふいに、なにかが落ちる音。振り返ると、キリーの手元から本が滑り落ちた音だった。すーすーという寝息も聞こえる。
「なにがしばらくしたら戻る、だよ……」
ベッドを取られてしまった。仕方ない、今日は下のソファで寝るか。さすがに二人一部屋では……
「ん?」
そういえば、俺は今日戻ってから、ずっとキリーと一緒だったな。一人になることは、なかったんだ。
(こっぱずかしいようなら、一人の時に読め……)
オヤジの言っていた、伝言が頭の中に響く。これってつまり、一人の時に読む、恥ずかしいものってことなのでは……!
俺は慌てて、キリーが落とした本を拾い上げた。ちょっと中身を見てみれば、やっぱりエッチな本だ。
「まさかこれが……」
俺はがばっとページを開くと、もくもくと本を読み耽った。このどこかに、ヒントが隠されているのかもしれない……!
「……」
しれない……
「……うは、ダメだ!」
これ、どぎついぞ!キリー、お前はこれを真顔で読んでたのか……その当の本人は、あどけない顔でヨダレをたらしているのだが……
しかもよく考えれば、これって空色の背表紙でもなんでもないぞ。いかん、煮詰り過ぎて迷走しているな。
「だいたい、こんなもんその辺に置いとくなよな。そりゃ嫌でも目に付くって……」
こういうのって普通隠さないか。そんでもって場所はたいがい……
「!」
頭のなかに電流が走ったようだった。
そうか、一人の時に読むような、恥ずかしい本を隠しておく場所!
俺はキリーの眠るベッド、その下に手をつっこんだ。奥まで腕を進めて行くと、コツンと指先になにかが当たる。
「でりゃ!」
引き抜いたのは、空色の背表紙をした一冊の本だった。ビンゴだ。
「やった!よし、さっそく……」
「見つけたか」
「どわ!」
おどろいて本を落っことしそうになった。
俺の横にいつの間にか、先代……アオギリが座っていた。
「せ、先代……無事だったんだんですか」
「ばかやろ、幽霊に無事もクソもあるか……ぐうぅ」
「せ、先代……?」
アオギリは頭を抱え、苦しそうに唸っている。ど、どうしたんだ?
「いや、なんだかあからさまに苦しそうですけど……」
「当たり前だ!何の仕打ちだよこれは……くそぅ、ワシがなにしたってんだ」
「はぁ……」
「なんでお前も止めてくれなかったんだよ!」
「えぇ?」
「キリーだよキリー!よりにもよってなんでコイツに読ませちゃったんだ!」
「え……ああ、そういう……」
そうか、さっきキリーが読んでた本。あれはつまり、アオギリのコレクションだったわけで、それを自分の娘に読まれてしまったわけで……
「お前のフォローも何だあれ!解ってやってくれってどーいう意味だよ!」
「だったら隠しておけばよかったでしょう……」
「うるせー!そんな中学生みたいなマネできるか!」
だったら中学生のほうが利口だな……
あれ、でもどうして俺たちの会話をアオギリが知ってるんだ?
「先代、いつからいたんですか?」
「ああ?ついさっきだが……あぁ、そういうことか。ワシの姿が見えなかったのに、会話の内容を知っとったからだろ?」
「ええ」
「昼間も言ったが、この幽霊状態は夢を見とる感じなんだ。眠りが深いときは何も見聞きできんが、それが浅くなってくると、ぼんやり夢うつつに覚えとるんだよ」
「へぇ……じゃあ、盗み聞きとかはできないってことですね」
「……お前、ワシのこと痴漢か何かと思っとらんか?」
「い、いえ!聞いてたなら止めればいいのにと思って……」
「それができたらとっくに止めとらい!」
アオギリはがっくり肩を落とし、すぅすぅと寝息を立てるキリーを見つめた。
「……相変わらず、ぱんつは丸出しだな。子供のころからちっとも変っとらん」
「……らしいですね。リルも言ってました」
「お?リルにも会ったか。そうか、やっこさんも戻ってきたんだな」
「ええ。ずっと留置所にいたんですが、つい最近」
「そうか……ステリアも喜んどるだろう。ずいぶん寂しそうにしとったからな……」
アオギリは目を細めて、キリーの顔に手を伸ばした。前髪に触れようとしたその手は、しかしてするりとすり抜けてしまった。
「……こいつにも苦労かけたな。もう少し一緒にいてやれりゃよかったんだが」
「……キリーは先代の話をするとき、いつも楽しそうにしていますよ」
「そうか。そいつは……しかし、少し見とらん間にまたでかくなったな。い~い女になったもんだと思わんか、えぇ?」
「いや、俺に振られても……」
「言っとくが、キリーに手ぇ出したら一生とり憑くからな。ていうか、今もよからぬこと考えとりゃせんだろうな」
「……俺をなんだと思ってるんですか」
むしろお説教はキリーにしてほしい。この子の無防備さは時々心配になるほどだ。
「ま、それはさて置いてだ。お前さん、ソレ。見つけられたんだな」
アオギリは俺の持っている空色の本を指さした。
「ああ、はい。こうしてまた会えたんだから、無駄足になっちゃいましたけど」
「いや、そうでもない。じつは、ちぃと話しにくいことでもあるんでな。悪いが、そいつを読んでからにしてくれんか」
「え?ええ、構いませんが……」
「よし、じゃあちょっくら散歩してくる。少ししたらまた会おう」
アオギリはすっくと立ちあがると、律儀に扉をすり抜けて部屋から出て行った。幽霊なら壁でもなんでも関係ないだろうに。
「さて、それじゃあ……読んでみるか」
俺は空色の背中を一撫ですると、中を開いた。
それは、日記のようだった。ただ、毎日記されているような、きっちりした物ではない。断片的に、思ったことを書き殴った、備忘録といった感じだ。
「……半月の日、早朝。キリーがおねしょをしていたことに気付く。布団を干して問い詰めるが、キリーは最後までワシがもらしたんだと言い張る。年寄り扱いしやがって……」
な、なんだこれ……
いや、これはキリーと出会ってからの記録なんだ。アオギリがマフィアと関わっていたのは、もっと前のはずだ。
ペラペラと捲っていくと、とあるページで目が止まった。
“オレが悪かった”
それだけが綴られたページ。
「これはいったい……」
さらに捲ると、どうやらその先はアオギリがまだ若かった(といっても四十代くらい?だろうが)ころが書かれているようだった。
アオギリは、いつからこっちの世界にいるんだ?
こっちに来てから数年なんてもんじゃなさそうだぞ。十年、下手するとそれ以上……
「……“三日月の日。あのクソガキにまた出会う”」
クソガキ……誰のことだ?かなり遡ったから、キリーたちのことじゃないはずだ。俺はその箇所をもう少し読み進めてみた。
つづき




