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76話:カウンターのお仕事


 今日はオウカ食堂のカウンターで売り子の手伝いをしている。


 私的には手伝うならキッチンの方がいいんだけど、何でも顔見知りのお客さん達から、たまには私にもカウンターに立ってほしいと要望があったらしい。

 その事を皆で話し合った結果、私は週一でカウンターに立つことになった。

 尚、キッチンには週二で入る事になってる。

 むう。もうちょい入る頻度をあげたい今日この頃。

 て言うか毎日でもいいんだけど、あまり手伝い過ぎると仕事が減って困るらしい。

 うーん……この子達、また休みの日にこっそり仕事してたりしないよね?

 ちゃんと休まないとダメだって、もっかい伝えとかないと。

 サボることは無いんだけど、仕事しすぎるから気をつけないとなー。


 カウンターの仕事に複雑なことはあまりない。

 注文を聞いて、キッチンに伝え、お金をもらい、お弁当を手渡す。

 それだけの事なのだが、なにせお客さんの数が多いので、中々に大変な仕事だ。

 荒っぽい冒険者が主なお客さんなので、トラブルが起こりやすい仕事でもある。


 本来は、そうなんだけど。


 実は開店以来、接客に関するトラブルは一度も無い。

 お客さんはしっかり列に並んでくれて、商品を受け取ったらぱぱっと退いてくれる。

 たまにお釣りを間違う子がいても笑って許してくれたりする。

 顔が怖い人は優しい説、再浮上。


 いや、一応理由らしきものは分かってんだけどね。

 ちなみに情報源は常連さんの一人だ。


 カウンター係はまだ火を扱えない小さな子がメインでやっていて、基本的に男女一セットで仕事をしている。

 お互いが助け合いながら慣れない手付きでお弁当を渡したりしているんだけど、どうやらそれが理由っぽい。

 うちの従業員の年齢的に、家の手伝いを頑張ってる子どもに見えるんだとか。

 列に並んでる皆さん、表情が緩みっぱなし。

 お弁当を受け取って笑顔でお礼を言ったりしている。


 何と言うか……他所で働く時のことを考えると、本当にこれで良いのかと疑問に思うところではある。

 ……まー問題が出てないから、良しとしておこうか。


 ただ、私がカウンターに居たらたまにビクッとなる人がいるのはどうにかならないだろうか。

 だからと言って他の子と同じような対応されると大分ムカつくけど。

 今日もまた、飴玉もらっちゃったし。


 そのあと、昼の休憩までひたすらお弁当を売った。

 その内何人かから、流れるように求婚されたけど、いつもの顔ぶれだったので笑顔でスルーしてやった。


〇〇〇〇〇〇〇〇


 さてさて。お店も落ち着いたし、少し休憩するかと中に引っ込んでみたものの。

 店の裏手は休憩中の子でいっぱいだったので、表のベンチに腰掛けて氷水の入った水筒を仰いでいる次第だ。

 キッチンも大変だけど、こっちもこっちで大忙しだなー。

 

「あら、オウカさん。表にいるの珍しいですね」

「おっと、カノンさん?」


 いきなり美人に声かけられたと思ったら、カノンさんだった。

 相変わらす絵に描いたような美人さんだ。

 何となく、見ているだけで幸せな気分になれる。


「どもですー。いま休憩中なんですよ。ようやく人の波が一段落しました」

「大盛況ですね。良いことです」


 自分のことのように喜んでくれた。ちょっと嬉しい。


「おかげさまで。今日はお休みですか?」

「残念ながら公務ですね。人の流れが集中しているので、問題が出ていないか視察に来ました」

「あーなるほど。ご苦労様です」


 お客さんが沢山いるってことは、この辺りに人が集まってるってことだもんね。

 人が集まればトラブルが起こるものだし、治安的な意味で見に来るのは納得だ。

 まー、実情は平和そのものなんだけどね。


「ついでに噂のお弁当を買おうと思ったのですが、売り切れてしまっていました。

 人の量も凄いですが、お客さんの流れる速さが尋常じゃないですね」

「お弁当一つが大銅貨一枚なんでお釣りも出にくいし、メニューも少ないから早いんですよ」

「なるほど。元の世界のファストフード店を思い出しますね」

「お? それ料理名ですか?」


 聞いたこと無い言葉だな。どんな料理なんだろ。


「料理名では無く、ジャンルですね。酒場、食堂、屋台のような」

「ふむ……? 今度詳しく聞かせてください」

「ええ、喜んで」


 カノンさんの居た世界はこちらに比べて色々と発展していたようで、たまにあっちの事を聞かせて貰っている。

 特に食事と娯楽に関して。

 実はお弁当屋を考え付いたのもカノンさんの話がきっかけだったりする。


 あ、てか、そんな事より。


「カノンさん、武術大会の出場ってもう取り消し効きませんか?」

「さすがに難しいですね。と言うかやはり、本人の意思確認は無かったんですね……伝えていると聞かされていたのですが」

「こないだギルドで聞かされました。て言うか私、武器無しだと戦闘力無いんですけど…」

「……予選、大丈夫ですか?」

「あはは。実は怪我しないように負けようと思ってたりします」


 うん。素の戦闘力でベテランの冒険者に勝てるとは思わないし。普通にやっても試合開始から数秒で負けちゃうだろう。

 そもそも出場する理由なんて無いんだし、予選始まってですぐ棄権しちゃえば怪我もせずにすむと思う。


「そう言えば、カノンさんは大会に出るんですか?」

「……ええ、まあ。否応無しに英雄の部に出場が決定しています。他に出場できる人が限られていますので」

「あれ? ツカサさんとかレンジュさんは出ないんですか?」

「その二人が出場するとなると、会場が持たないだろうと」


 あーうん。確かに。

 魔王と殴りあってゲルニカの地形変えたツカサさんと、それに並んで最強と呼ばれるレンジュさんだもんね。

 確かに下手したら王都無くなるなーとは思ってたけど……そっか、見れないのか。

 納得いく話だけど、少し残念だな。


「でもそれだと、英雄の部ってカノンさんとアレイさんだけなんじゃないです?」

「私はお兄様の勇姿を見ることが出来ればなんでも良いのですが、他にはハヤト君と一般の部の優勝者で、合計四人です」

「お。『魔剣使い』シマウチハヤトさんも出るんですね」


変幻自在の魔剣(デュランダル)』の加護を持つ剣士、シマウチハヤトさん。

 召喚されてすぐ、当時最強と呼ばれていた前騎士団長のオーエンさんと加護無しで渡り合った英雄。


 デュランダルの戦闘記録を読み込んだ時に分かった事だけどさ。

 実はこのシマウチハヤトさん、剣を振るのに加護を一切使用していない。

 ただの勘、何となくだけで、歴戦の騎士団長や強大な魔物と渡り合った天才である。

 どんな人なのか、ちょっとだけ興味がある。


 いやまあ、あまり期待はしない方がいいかもしれないけど。

 英雄って癖が強い人多いからなー。


「ちょっと楽しみが増えました。何にせよ、お互い頑張りましょう」

「はい、お互いに」


 力なく笑いあって握手をした。

 カノンさんって手も綺麗だなーとか、現実逃避的な感想が浮かぶ。


 ううむ。とりあえず、大声で棄権する練習でもしとくか?


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