33話:古代遺跡
英雄と魔王の最終決戦の時、『神魔滅殺』と魔王が地形を変える程の激闘を繰り広げたのは結構有名な話だ。
地が割れ、空が裂け、新たな山脈が出来たと言われている。
まぁ、あの勇者……もとい、ツカサさんならやりそうな話ではある。
で、その最終決戦が行われたのがゲルニカの旧魔王城付近だ。
そして旧魔王城から程近い場所に、私の目指す遺跡があった。
と言うか、埋もれていた。
「ねーリング。入口、無くね?」
「――検索中……土に埋もれています。他に出入口はヒットしません」
「まじか」
まあね。そんな天変地異レベルの戦いが近場であったら入口が埋もれててもおかしくはないけどさ。
大きなため息を一つ。しゃーない、やるか。
拳銃型デバイスを構える。でも今回使うのは魔弾じゃなくて大きなドリル。
きゅいぃぃぃぃぃん……!
甲高い音をたてながら地面をガリガリ削って行った。
〇〇〇〇〇〇〇〇
「――オウカ。出入口部に到着します」
「おっけ。大分掘ったなー」
既に私一人では地上に出られない深さだ。
ま、飛べば問題ないんだけど。
てか到着って言ってたけど……このすべすべの石かな。
真っ黒だけど銀色の線がたくさん入ってる。
「――解析中……完了。そちらの端末に触れてください」
「端末? あ、この丸い奴? ほいほいっと」
よく分からない球に触ってみると、目の前の壁ががしょん、と横に開いた。
うわ、凄いな。勝手に開くのか。
中を覗き込んでみると意外と明るい。
よく見ると、幾何学模様というのだろうか。カクカクした模様が壁一面に彫り込まれていて、それが光ってるっぽい。。
「おー。すげえ。ドア勝手に開いたわ」
「――マップ更新。解析を続けます」
「ありがと。しっかし、この壁なんで光ってんの? 便利でいいけど」
「――周囲の魔力を利用して発行する素材のようです」
「なにそれめっちゃ便利じゃん」
小さなカケラくらいなら持って帰ってもいいかな。
試しにドリルで削ってみるか。
……あ、だめだ。めっちゃ硬い。全く掘れないわ。
しゃーない。諦めて中に入りますか。
てか案外あれだな。カビ臭くもないし、空気がしっかり回ってるっぽい。
それも魔法で何とかしてるんだろうか。凄いな、古代遺跡。
……そういえば、何で古代遺跡の方が今より技術が発達してんだろ。
そういうもんだと思ってたけど、よく考えたら不思議だな。
「――警告:魔力反応。前方、スケルトン一体です」
「え。埋まってた遺跡なのに魔物いんのか……リング」
「――Sakura-Drive Ready.」
「Ignition」
薄明かりの中、淡い桜色が舞い上がる。
マップを確認、すぐ近くに赤い光点。一匹か。
けれど油断はしない。全力で、駆ける。
「さあ、踊ろうか」
出会い頭に銃底を叩きつける。しかし不意を突いた一撃は剣で受けられた。
こいつ、骨の癖に力が強いな。
相手の押し込む力を利用して回転、遠心力を乗せて逆側から銃底を叩きつける。
剣を弾き飛ばし、さらに突き刺すような蹴り。
吹っ飛んだところを狙って頭に一発。
頭蓋骨が弾け、体も塵になって消えていく。
ん? 何か、違和感があるな。
これ、魔弾の威力上がってないか?
試しに前方に向かって射撃。
奥の方の壁で盛大に火花が散った。
「リング、威力上がってるんだけど。何かした?」
「――確認しました。申し訳ありません。
――先日、リミッターが限定解除された事が原因かと思われます。
――威力増加に伴い有効射程が広がった分、使用される魔力量も増加しています」
「謝る事ないけど、何メートルくらい行けるの?」
「――およそ百メートルですが、魔力量を増やせば最大射程と威力が増加します」
「一気に五倍か。て言うかもっと伸びるのね」
今までが大体二十メートルくらいだった。それ以上離れると貫通しない事があったけど、いきなり射程伸びたな。
「――また、拡張機能の使用制限が解除されました。
――戦闘記録の追加インストール、及び記録読込の優先順選択が可能です。
――加えてコキュートス、インフェルノ両機の管制AIに感し」
「待った。一気に意味分かんないこと言うな。全く分からん」
久しぶりに出たな、謎言語。
相変わらず訳が分からない。
「――謝罪:申し訳ありませんでした」
「とにかく、威力が上がったのは分かったわ。他に便利なものがあったら任せる。後で時間ある時に教えて」
「――了解:自己判断で必要箇所のダウンロードを開始します」
いまいち理解できてないけど、とにかく遠くから攻撃できるのはありがたい話だ。
私って基本的に一発もらったら戦闘不能だろうし。
普通の子なら自然に使える身体強化すら使えないからな。
できるだけ危険は避けていきたいところだ。
「――オウカ。前方に魔力反応。スケルトン三体です」
「ちょうどいい。試してみようか」
目標との距離、およそ三十メートル。
普段より少し多めに魔力を廻し、発砲。
その桜色の銃弾は遠距離から見事に頭を貫いた。
おお。いい感じだな。
続けて二体目、同じように頭を撃ち抜く。
ふむ。これ、最大まで魔力込めたらどうなんのかな。
ちょっと試してみるか。
体を流れる魔力を限界まで拳銃に廻し、軽い気持ちでトリガーを引いた。
瞬間。薄紅色の光条が閃き、スケルトンごと遺跡の壁を貫通した。
……なるほど?
「おい待て。遺跡の壁ってめっちゃ硬かったよな?」
「――肯定:おそらく魔法銀製の盾を貫通する威力です」
「……誰もいないとこで練習しようか」
「――推奨します。周囲に敵性反応無し」
「了解」
拳銃をホルダーに差し込む。桜色が消え、通路はまた壁の薄明かりだけになった。
……てか遺跡に穴開けて怒られたりしないかな。
いや、埋まってたくらいだし大丈夫か。
どちらにせよ、危なくてそうそう使えるもんじゃないのは分かった。
「とりあえずさー。目的地わかる?」
「――検索中……マップに表示します」
「お、ありがと。案外近そうね」
目指す場所はそんなに離れてないようだ。
何はともあれ、まずは目的地に向かおう。
危険物の取り扱いについては、また後日考えるとしましょうか。





