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195話

本日は大量投稿します。


191話〜です。


「で。言い訳を聞こうか」

「あー……あのですね……」


 オウカ食堂、ユークリア本店。

 腕を組んで仁王立ちしている私の前には、正座しているフローラちゃん。


「ほれ、言ってみ?」

「えーと……オウカさん、お店にいないし、いいかなーって。確実に儲かるのも分かってたので……」

「ギルティ」

「あああ、相談しなかったのは悪かったと思ってるんで、私にもプリンくださいぃ!」


 うっさいわ。人を簡単に売りやがって。


「ねー。一応聞くけどさ。他に何がやらかしてないよね?」

「……えへっ?」

「よーし全部吐け。話はそれからだ」



 聞き出した結果。

 書籍化。演劇化。王都に銅像。船の先端に彫刻。魔法都市で自動人形の販売。

 出るわ出るわ、悪行の数々。

 よくもまー、本人が知らないところで好き勝手してんな、おい。


「いやだって、需要があるんですもん……」

「ほう。じゃあ需要があれば自分も売り出すの?」

「そんな訳ないじゃないですか」

「ギルティ」


 プリン没収確定。




 半泣きで惜しんでるフローラちゃんの目の前でプリンを食べるという残虐な仕打ちをしてみた。

 これで少しは懲りてくれるといいんだけど。


「でさー。前に儲けすぎたからとか言ってたけど……これが理由?」

「あ、いえ、それとは関係なしにヤバかったですね」

「……えーと。それさ。今、ヤバくない?」


 確実にその時よりお金集まってるよね?


「いえ、消費先が見つかったのでそこは大丈夫です」

「お? なになに?」

「ゲルニカの鉱山を買いました」


 ……は? 山買ったって言ったか、いま。


「ごめん。説明して」

「ゲルニカに魔法銀が採れる鉱山があったので、オウカさん名義で購入してあります。また、採掘や運搬、作業員の賃金等のコストも全てこちら持ちです」


 それでも儲けは出ますけどね、と笑うフローラちゃん。

 えぇ……山って、買えるものなんだ。

 その発想は全くなかったわ。


「他にも、アスーラに大型船を三(せき)購入してますね」

「は? なんで船?」

「単純に運搬コストを重視した感じですね。人員は列車があれば問題はないんですけど、鉱石はさすがに運べないので」

「はぁ……なるほど。よく分かんないけど、さすがだねー」


 船かー。確かに言われてみれば船はありだったなー。

 そんで船員さん雇って、護衛の冒険者さんにも来てもらって、たくさんお魚をとってもらうとか。


「他にも施設を色々と建てていますね。治療院の本部と協力して各町に治療院を建てたり、孤児院を増やしたりですね」

「……うわぁ。それかなり大事じゃん」

「いやまぁ、評判はかなり良いですよ? なにせオウカさん名義なので」

「いやそこ関係あんの?」

「大ありですね。知名度高いですから」


 あー。そういや国中に知られてんだっけか。

 え、なに、て事はさ。


「もしかして私、周りから見たら凄いことになってない?」

「なってますね。次期女王が政治を始めた、みたいに言われてます」

「……もうやだ。おうち帰ろっかな」

「構いませんけど、私に任せてる間は止まりませんよ、これ」

「なるほど。そういう方向で来たのね……」


 これはあれか。店長って思われたくないから、代わりに私の知名度を上げる作戦か。

 でもなー。それ、大きな穴が空いてんだよなー。


「ねーフローラちゃん。そもそもさ、自分が周りにどう思われてるか知ってる?」

「え、なんですかいきなり。店長として見られてるのは知ってますよ?」

「いや、実質全部フローラちゃんがやってるって、周りにバレてるからね?」

「……は?」

「だって私、店にいないし。確認も許可も全部フローラちゃんだし」

「……あああ!?」


 あー。やっぱ気づいてなかったのかー。

 フローラちゃん、どっか抜けてっからなー。

 そりゃ私がいないのに許可出してたら、フローラちゃんが仕切ってるって思われるでしょ。


「まーあれだね。自分で退路を潰した感じだね」

「……やらかしました。大失敗です」

「改めて、店長就任おめでとう。やったね!」

「何て事でしょう……いやまだ、何か手はあるはずです!」

「……いーけどさー。なんでそんなに断り続けんの?」


 言っちゃなんだけど、今じゃ多分国で一番大きな店なんだし。

 そこの本店店長って、普通だと自分から立候補するもんじゃないのかなー。


「うーん……ぶっちゃけた方が良いですか?」

「うん。理由は知りたいかなー」

「……オウカさんの下が良いからです」

「は? え、どゆこと?」

「私たちはオウカさんのおかげで仕事が出来ています。だから私は、オウカさんの下で支えたいんです」


 ……んー。言いたいことは何となく分かるけど。

 それ、そんなに重要かな。


「私としては大事なところなんですよ。私が上にいるのは納得行かないです」

「なるほど……でもそれってさ。横並びじゃだめなの?」

「ダメですね。私が下です」

「んー。じゃあさ、私は店長じゃなくて、もっと上の役職にしちゃえば?」


 まー例えば、貴族と王族みたいな感じで。

 私を無理やり上にしちゃえば良くないか?


「……なるほど。それならいっそ、オウカさんをギルドマスターにしちゃいましょうか」

「……はぁ? ギルド?」

「名前は……飲食ギルド、ですかね。いっそ国中の飲食店を巻き込んじゃいましょう。その方が利便性も高くなりますし、国も発展しますから。

 そうと決まればさっそく王城に打診ですね」

「いや、ちょ……」

「ありがとうございます! 私はこれから本店店長を名乗ります! これからもよろしくお願いしますね、ギルドマスター!」


 待って! 元気よく走り去らないで! 話が大変な事になってるから!


「フローラちゃん、待っ……ダメだあれ、話聞いてないわ……」


 ……よし。諦めよう、うん。

 最近、諦めが肝心だなって事を知り始めたわ。

 名前だけ貸す方向で行こう。

 流されてる感が凄いけど……うーん。まぁ気にしない方向でやるか。

 悩んでも仕方ないし。


 しかし今度ギルドかー……フローラちゃん、めちゃくちゃだな、ほんと。


次話から最終話スタートです。

もう少しお付き合いください。

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