194話
本日は大量投稿します。
191話〜です。
さてさて。今日は亜人の街ビストールに来てみた訳だけど。
相変わらず、もふもふに満ち溢れている街だな。
あぁ、なんて素敵な光景だろう……
ちょっとあの辺の子に声かけてみるかなー。
……はっ!? いやいや、私にはネーヴェがいるし。浮気は良くないな、うん。
ネーヴェに知られたら猫パンチされてしまう。
いやまぁ、それはそれで嬉しいけど。
んー。大通りは誘惑が多くてダメだな。とりあえず、オウカ食堂行ってみるかー。
久しぶりのビストール支店は、相変わらずだった。
かなりの数のお客さんたち。
楽しそうに働く亜人や魔族の人々。
そして、外からでも見える大きな私の似顔絵。
……おい。また増えてんだが。
つーかなんだあのポーズ。あんなんした事ないぞ。
あっちはなんか花とか舞ってるし。
いや、それより……なんだアレ。
受付の上に置かれたカゴ。その上にある木の板に、意味の分からない事が書いてある。
『オウカ店長グッズ・ビストール支店限定発売品!』
…………なあ。色々と言いたいんだけど。
あんなもん売れるわけ……あ、今の人買っていったな。
「……おーい。ステイルさん読んでー」
「オウカさん!? はい! すぐに呼んできます!」
受付にいた亜人の子に声をかけると、すぐさま中に引っ込んで行った。
そして五分もしない内に、店内から笑顔のステイルが姿を表した。
「オウカさん、お久しぶりです」
「いいから。説明、してもらおうか?」
「はて。何の事ですか?」
「絵が増えてんのは妥協しよう。でも何だ、あのグッズ!?」
私ひとっことも聞いてないんだけど!?
何て事やらかしてんだアンタら!?
「あぁ、お陰様で大盛況です!」
「いや違うそうじゃない! 何であんな物置いてんの!?」
「その……前回同様、お客様の要望でして……」
「またかっ!?」
真面目にこの街の需要が意味分からないんだけど!?
私はただの町娘だぞ、おい!
あの似顔絵みたいに可愛くないからな!?
「はて。しかし、本店には許可を貰っているのですが……」
フローラちゃん!? 嘘でしょ!?
「フローラさんは快諾してくれましたよ?」
「……そっちは明日問い詰めるとして。とりあえずアレ、撤去しましょうか」
「しかし、ビストール支店で一番人気の商品なんです。別途支店を出すべきかどうか、本店と検討中です」
「……うっそだぁ」
「いえ、本当です。こちらが売上を書いた紙ですね」
渡された紙をじっと見てみる。
確かに、一個単価が低いくせに、どの弁当よりも売上が高い。
どうなってんだ、ビストール。
「まぁ、どの英雄よりも人気ですからね、オウカさん」
「あの人達と同列にされるのも気になるけど……え、そんなに知られてんの?」
「と言うか、ユークリア王国でオウカさんを知らない民はいないかと」
「……あの。何で?」
なんだろう。すっげぇ嫌な予感しかしない。
「おや、知りませんか? 次期女王としても名高いオウカさんの寸劇を見せる旅芸人達がいるんですよ?」
「待て。詳しく聞こうか」
「詳しくも何も……オウカさんに関する吟遊詩人達の唄を纏めた劇を行う旅芸人達がいまして。かなり人気が高いですね」
「……ねぇまさか。それってさ」
「もちろんフローラさん公認です。収入の一割程度が本店に回されるらしいですね」
まじでどうなってんだこの世界。
……いや、まぁ、分かんないでも無いけど。
冷静に、客観的に考えればね。
十一人目の英雄。数々の功績を上げ、多くの街に店舗を展開、孤児たちを雇い入れ、街の経済を回している、と。
どうも、そんな風に思われてるっぽいし。
そりゃ演劇にしたらお客さんも来るでしょうよ。
たださー。実物、これだよ?
ただの町娘だぞ、おい。
どんだけ話が飛躍してんだ。
つーか真面目に、フローラちゃん、何してくれてんだ。
その話が来た時点で止めてよ。頼むから。
「……なんか、ここに来る度に頭痛を感じてる気がするんだけど」
「正直なところを申し上げますが……恐らく、全てフローラさんの計画ではないかと」
「……どゆこと?」
「オウカさんを前面に出すことで各方面での売上が期待出来ますし。
その全てを把握していて、さらに推奨までされていますからね」
……ほう。つまり何か。戦争か?
本人への意思確認も無しにとんでもない事してくれてんなー、あの子。
マジで一回説教しなきゃなんないかな。
「ちなみに全体売上の何割かは各所の孤児院や施設、治療院に寄付されています。お陰で街の治安もかなり良くなっているようですよ」
「……まーじかー。そういやそんな話、聞いた気がするなー」
ここまで大事になってるとは思ってなかったけど、確かに前に王都本店に行った時、色んな所に寄付してるって言われた気がするわ。
でもこれ……かなり恥ずかしいんだけど。
「ステイルさん。仮に私関連の商売を全部やめた場合って、どうなります?」
「王国内の経済が滞ります」
「そんなに!?」
「ええ、まあ。はっきり言いますが、オウカさんは元々認知度が高かったのに加え、今では次期女王として認知されていますから。
先程も言いましたが、もはやユークリア王国でオウカさんを知らない者はいないと思います」
……あー。うーん。そっかぁ。
「この国、出ようかな……」
「暴動が起こるので辞めてください」
「はは……また大袈裟……でも、ないのか?」
「はい。大真面目です」
…………しばらく、家にひきこもろうかなぁ。
「他に確認事項はありますか?」
「いや……もういっかなー。ダメージ増えそうだし」
「分かりました。ではお手数ですが、いつもの儀式をお願いできますか?」
あー。もはや公式で儀式認定なのね。
「……わかりました。並んでください」
腕が上がらなくなるまで、街の人達を撫で回してきた。





