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187話


 さてさて。ちょーっとめんどくさい事になってきたなー。


 目の前には嬉々として鞘に手を添えているルウザさん。

 横には完全に観戦モードの英雄達&四天王。

 そして、何故か拳銃を持って立ち尽くしている私。




 いや、うん。なんかね、ルウザさんがいきなりさ。


「ところで、オウカはどれくらい強いのだ?」


 とか聞いてきて。

 んで、悪ノリしたレンジュさんが。


「オウカちゃんはアタシに二回も勝ってるよっ!!」


 とかいらん事言い出して。

 それを聞いたルウザさん、目を輝かせながら。


「ほう! それは良い! では是非、立ち会おうではないか! さあ、さあ!!」


 とか言ってきて。

 ついでに周りが賛同しだして、今に至る。



 つーかふざけんな。レンジュさんと互角に戦える人と試合とか馬鹿なんじゃないかな。

 普通にやったら勝負にもならないんだけど。


 と言うわけで。今回はハンデ戦である。



「もー……いいですか? ルウザさんからは攻撃しない、そこから動かない、私が一発当てたら終わり。この条件ですからね?」

「心得ている。さあ、始めようではないか!」

「ほんとに分かってんのかなー……んじゃ、いきますよー」


 とりあえず拳銃を向け、発砲。狙いは眉間と胴体。

 これなら受けにくいはず、と思いきや。


 魔弾は、ルウザさんに当たる直前に消え去った。


 ……は?


「うむ。良い狙いだ。だが、遅すぎるな」

「え、なんですか今の」

「む? ただ斬っただけだか?」


 えーと。つまり、目に見えない速度で斬り落としたってこと?

 化け物か。あ、いや、化け物(英雄と同じ)だっけか。


 んー。なら次。

 デバイス起動。銃身に沿わせ、四発同時に発砲。

 眉間、腹に加えて両肩を狙って撃つ。けど。


「ほう。良い筋だな。確かに先程よりは対応が難しい攻撃だ」


 また、当たる寸前に消え去った。

 だめかー。まーそだよねー。


 んーにゅ。なら、仕方ない。やるかー。


「リングー。やるよー」

「――Sakura-Drive Ready.」


「Ignition!」



 吹き荒れる薄紅色の魔力光。

 切り替わる。日常から、非日常へ。



 さあ、始めようか。


「精一杯踊りますので、しっかり見ていてくださいね?」



 突貫。大きく踏み込み、足刀蹴り。横向きに突き出した脚を、受け流される。

 そのまま、近接。回り、肘打ち。予想通り止められ、逆手で射撃。

 至近距離から撃ったにも関わらず、鞘で防がれた。

 勢いを殺さず、加速。膝を叩き込み、受け流された力を利用して縦に回転。

 銃底での打ち上げ。顎を狙った一撃は、首を逸らして躱された。


 そのままバク転、再度距離を離す。



 やはり、当たらない。

 ハンデがあるとは言え、まともにやれば戦いにすらならない。

 であれば。



「リング。リミッター解除」

「――Sakura-Drive:Limiter release. Ready.」


「Exist!」



 散りばめられた桜が燃え上がる。

 紅蓮の満ち溢れた世界。燃える、私の命。



「カノンさん。アヴァロン、多重展開お願いします」

「……え? オウカさん? まさかとは思いますが……」

「全力で行きます! リング!!」


「――Sakra_Dr(サクラドライブ)ive Limit conv(全魔力)verge(収束)nce.」




 紅の魔力光が銃口に収束されるのを眺め、笑う。


 高まる鼓動。燃え盛る心。

 段々と膨れ上がる紅蓮。

 さあ、限界を超えたその先に行こうか。


 渾身の一撃だ。止められるもんなら止めてみろ!




「いや、ちょっ……『堅城(アヴァロン)』多重展開!!」




 カノンさんが半透明の障壁で訓練場を包み込む。

 では、遠慮なく行こうか。




「行くぞ雷王。これが私の極致だ!」


「――Code(コード): Infe()rno() wh()owl()in()g... Ready Over.」


穿(うが)てぇっ!!」




 紅蓮の極光。その奔流に飲み込まれる寸前。


 彼は、笑った。




「実に心地良し! 天晴(あっぱ)れ也!!」




 ――剣閃。




 私の体より大きな紅の魔力弾は、一刀の元に縦に両断された。



「よもや、俺が刀を抜くことになろうとは思わなんだ! いやはや、見事だ!!」



 こいつ、避けるでも躱すでもなく、斬りやがった。

 マジか。



「…………リング。状況終了。サクラドライブ解除」

「――了解。お疲れ様でした」



 紅蓮が散り行く中、魔力枯渇症状で体がふらついた。

 脱力感。そして、意識が朦朧とする。



 うへぇ。冗談じゃない。やっばいなー、この人。

 いや、分かっちゃいたけどさ。これ程とは思わなかったわ。


「あれを斬りますか……シャレになりませんね。さすが四天王」

「なんのなんの! いや、すまぬ。人間の小娘と、少々侮っていた! 流石は英雄、レンジュに勝利したのも(うなづ)けるな!」


 頷かないでー。あんなんと一緒にしないでー。

 てか真面目に、この人と戦うことにならなくて良かったなー。

 レンジュさん、改めて化け物だなー、うん。


「オウカさん! いきなり全力を出すのは辞めてください!」

「へぁ? あー……すみません。てか誰かー。あと、頼みまーす」


 次第に暗くなっていく視界。地面にへたり込み、やがて私は意識を失った。


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