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185話


 二人を連れて王城に向かうと、案の定門兵さんに止められた。


「おう、オウカちゃん。そっちの二人はどちらさんだ?」


 いつもの笑顔に見えるけど、目だけは鋭い。

 さすが騎士団員。しっかりしてるなー。


「俺は雷王のルウザ。こっちは業火のフレイア。城内に入れていただきたいのだが、如何(いかが)か」

「……はあっ!? いやいや、魔王軍四天王を通す訳無いだろうが!」


 ですよねー。


「ふむ……どうしたものか。推し通る訳にも行かぬしなぁ」

「んーと。とりあえず、レンジュさん呼びます?」

「おお、そうしてくれると嬉しいが……どうやってだ?」

「こうやってです」


 両手を口元に当て。


「レーンジュさーん! 私が来ましたよー!」

「いらっしゃいっ!!」


 ほら、一瞬だった。


「あれ、ルウザじゃんっ!! なんでオウカちゃんと一緒なのかなっ!?」

「久方ぶりだな。今日は再試合の申し込みに来たのだが……とりあえず、離れてやれ。オウカが苦しそうだぞ」


 うん。地味に苦しいかな。ハグは良いけど力強すぎ。


「おっとっ!! 愛が大きすぎちゃったかなっ!?」

「そゆの良いから早く離してください。風穴空けますよ?」

「今日もツンデレで良き良きっ!!」


 ええい、頬ずりするんじゃない。ぷにっとしてて気持ちいいけど、暑苦しいわ。


「んでっ!! 試合の申し込みなら歓迎だよっ!! フレイアちゃんもかなっ!?」

「いえいえ!? 私は皆さんとお話したいだけですよ!?」

「そっかっ!! いまツカサっちとエイカちゃんしか居ないけど大丈夫かなっ!!」

「あ、はい。大丈夫です」


 あれ、珍しいな。他の人たち居ないのか。


「みんな出かけてるんですか?」

「アレイはカノンちゃんとカエデちゃん連れてお買い物だねっ!!」

「何それ羨ましい」


 私と代われ。割と真面目に。

 何でいつもアレイさんばかり良い思いしてんだ。

 くそう……いいもん。私にはネーヴェがいるし。

 少し経ったら一緒に暮らせるし。


「ハヤトはお勉強中だし、キョウスケは仕事中だよっ!!」

「お勉強ですか?」

「一応学生だからねっ!!」

「え、そうなんですか?」

「ツカサっちとエイカちゃんも魔法学校に在籍してるよっ!!」

「へー。そうなんですね。私と同じなんだ」


 そっか。三人とも学校に通ってるんだ。

 なんか成績優秀っぽいなー。


「ちなみにみんなサボってばっかりだねっ!!」

「ダメじゃないですか」


 まさかの素行不良だった。何してんだ、勇者一行。


「ええぇ……勿体ない」

「成績自体は最上位だから問題ないかもっ!! 教えてる人より学力あるからねっ!!」

「うわ、凄いですねそれ」

「あっちの世界だとみんな教育受けてたからねっ!!」

「……てことはレンジュさんも?」

「英雄はみんなそうだねっ!!」


 マジか。じゃあレンジュさんもそうなのか。

 何かを教えてるとこ、想像できないけど。


「一応言っておくけどもっ!! 英雄の中で一番学力高いのアタシだからねっ!!」

「え。カノンさんじゃないんですか?」

「聞いた感じ私の方が上だねっ!!」


 ヘンサチハチジューだったからねっ、と胸を張られたけど、何を言ってるのかよく分からない。

 とりあえず、押し付けられるほっぺたを指先でむにむにしてみた。

 む。柔らかいなー。うりうり。


「……仲睦まじいのは良いのだが、中に入れてもらえまいか」

「おっけーっ!! 着いてきてねっ!!」

「心得た。よろしく頼む」

「あ、えっと、おじゃましまーす」

「同じく、おじゃましまーす!」


 レンジュさんを先頭に、わらわらと城内に入って行った。




 でまあ。修練場に来てみた次第だけど。


「ふはははは!! 良い! 良いぞ! それでこそ挑む意味があろうというもの!」

「にゃははははっ!! 相変わらず強いねっ!!」


 声と剣戟の音。時々火花。

 姿すら見えず、それらが飛び交うその傍らで。


「あ、このお茶美味しいですねー」

「…エイカがいれてくれた」

「良いお嫁さんになりそうですねー」

「やだ、フレイアさんったら!」


 ほのぼのとお茶を飲む三人。


 なんか温度差すごいなー。


「えーと。とりあえず、茶菓子でも出しましょうか?」

「…お願いします。オウカさんのお菓子は美味い」

「んじゃ今日はジャムクッキーにしましょか」

「わ。私アレ好きなんですよ」

「ほえー。オウカさんはお菓子作れる人なんですねー」

「お菓子作りと料理は趣味ですね」


 アイテムボックスから取り出し、皿に盛り付けると、みんなして目がキラキラしだした。

 うむ。ここまで反応良いと嬉しいなー。


「イチゴジャムとブルーベリージャムです。お菓子屋さんの新商品ですね」

「…奇跡の組み合わせ」

「ほんと、美味しいです!」

「おぉー。オウカさん、すごいですねー」

「おかわりたくさんあるんで、じゃんじゃん食べてくださいねー」



「ならばこの技はどうだ!」

「甘い甘いっ!! コダマリュウ・ゴクサイシキっ!! グレンヒショウっ!!」

「なんとぉ!?」

「にゃはははっ!! 今のを避けるのはさすがだねっ!!」



「…どっちも美味いね。紅茶と良く合ってる」

「てか、エイカさん紅茶いれるの上手いですね」

「ツカサ君の為に練習しました!」

「本当に良いお嫁さんになりそうですねぇー」



 二人の果たし合い(じゃれあい)を見ながら、平和なティータイムは続いた。


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