148話
翌朝。しっかり熱も引いて体調は絶好調。
朝の支度を済ませて、早々に王城に向かった。
いつも通り顔パスで通してもらい、客室へ。
既に連絡が行っていたようで、カノンさんとカエデさんがお出迎えしてくれた。
わーい! 美女と美少女だー!
「おはよーございまーす!」
「おはようございます。体調は大丈夫ですか?」
「……あーまあ、おかげさまでばっちりです」
「それは何よりです。では早速ですが本題に」
「はいはい。フリドールですよね?」
王都から北。魔大陸ゲルニカを越え、さらに海を渡った先。
雪に閉ざされた街。氷の都フリドール。
独特な文化を持つ、革製品の聖地だと聞いている。
「でも何でまたフリドールから?」
「冒険者間の噂が元のようですね……あちら的には可能であれば、程度の話のようですが」
ふむふむ? でも表情的に、なんか悩んでるっぽいな。
「んー。でもわざわざ私に話したってことは、何かあるんですよね?」
「はい。あまり交易が盛んでは無いので、そのきっかけになればと」
「なるる。でも、めっちゃ遠いですよね?」
「そこなんですよね……オウカさん一人なら飛んでいけば良いのですが…」
王都からアスーラ行って、アスーラからゲルニカ行って、ゲルニカから更に船に乗らないと着かないもんね。
長旅すぎて食材を運ぶのは難しいと思う。
何かこう、空を飛べる馬車でも無いと現実的じゃないんじゃないかな。
……馬車か。
馬車、ねえ。
「あの、思ったんですけど。マコトさんならどうにか出来たりしませんか?」
「と言うと?」
「空飛ぶ馬車とか作れませんかね?」
あの人なら何でも作れるだろうし。
「不可能かと思います。正確には、作れるけど作ってくれませんね」
「あらま。ダメなんですか」
「この世界の文明基準を越える物は基本的に作らないので……自宅内は別らしいですけど」
「ぶんめーきじゅん? んー……よく分かんないですけど……だめかー」
んー。行けると思ったんだけど…
あ、そだ。
「じゃあ列車はどうです?」
「……列車? 先日の件ですか?」
「あの鉄の線引いてったらどこでも行けるんですよね?
それ、海の上とか海の中とか行けるなら速いかなーと」
よく分かんないけど。
でもイグニスさんなら何とかできるんじゃないだろーか。
「……なるほど。その発想は無かったですね」
「海の中、走れるのか、な」
「んー。まあ、聞いてみるのはありかと。うちのお店絡みですし」
「そうですね…お願いしても良いですか?」
「おっけーです。ちょっと行ってきますね」
善は急げ。早速行ってみるかー。
「あ、それじゃあ、送る、ね」
「いえ、大丈夫です。転移苦手なんで」
「そっか……気をつけて、ね」
「りょーかいです。ではでは」
さて。ひとっ飛びしますかー。
モフモフの街、ビストール。
何か久しぶりに来た気がする。
帰りに支店に寄っていくかなー。
まーとりあえず、イグニスさんとこ行くか。
「てな訳なんですけど。いけます?」
「水上は難しいが、水中ならば可能である」
「……言っといて何ですが、できるんですか」
「うむ。魔物避けの魔法陣と耐水魔法陣を刻むだけであるからな。大した手間でも無い」
やっぱりすげーなこの人。
さすが元四天王。
「んー。じゃあ一旦フリドールで話してくるんで、話が纏まったらお願いします」
「うむ。一応準備だけしておいてやろう」
「助かります。ではまた」
「気をつけて行くが良い」
「あいあいさー」
とりあえず、カノンさんに連絡しとくか。
あと、支店に行ってモフらせてもらおう。
通信機でカノンさんに事の次第を話したあと。
改めてオウカ食堂へ顔を出してみた。
のだけれど。
何か、私の肖像画が、増えていた。
て言うか、壁一面に私の絵がかざってある。
……帰るか。気づかれる前に。
「おや? オウカさん? オウカさんではないですか?」
「……人違いです」
「肖像画と全く同じ姿……やはり、オウカさんですね!?
お会いできて光栄です!!」
「……はあ、どうも。ステイルさん、呼んでください」
「支店長ですね!! 少々お待ちくださいっ!!」
あっさりと捕まった。
さすが亜人。視力良いわ……
「オウカさん。お久しぶりです」
「どーもです。で、これなんですか?」
「はい? これ、とは?」
「いやこの絵ですよ。何で増えてんですか?」
前来た時は一枚だったよね、これ。
「ああ、これはお客様のご要望でして。折角なのでオウカさんの肖像画を増やして欲しいと」
「……いや。なんで?」
「先日の神聖なる儀式をお客様が見ておられたようで」
儀式って……もしかして、あの撫で行列の事か?
「その時の手つきが神がかっていたため、皆で讃えようと言うことになりました」
うん。全く意味が分からん。
なんだ、神がかった手つきって。
「……それ、外してもらう訳には」
「おそらく、お客様含め全員が悲しむかと」
「……ですよねー」
なんかもう、既に何屋なのか分からないレベルだけど…
まー、みんなが喜んでるなら、諦めるか。
「おっけーです……んで、お店の方はどうですか?」
「繁盛しています。人手が足りないので現在募集をかけています」
「あ、そーなんですか」
おー。そりゃ凄いなー。さすがステイルさん。
「一応、本店のフローラさんには通達していましたが……聞いていませんか?」
「あー。最近任せっぱなしなんで。でも流行ってて良かったです」
「これも全てオウカさんのおかげです」
「いや、ここの店員さんたちのおかげですよね?」
「元を正せばオウカさんが雇い入れてくれたおかげですので」
「……なんか違う気がする」
その後みんなが頑張ってくれたから繁盛してるんじゃないだろーか。
いやまー。たぶん、言っても聞いてくれないけど。
「それで、その……本日はお時間ありますか?」
「んえ? 急ぎではないですけど……どしました?」
「いえ…皆が期待しておりまして…」
目を向けられた先に。
壁に隠れるかのように、縦長いモフモフの連なりがあった。
……あーうん。こないだの奴ね。
「……はーい。一列に並んでねー」
全部で前回の倍近く居た。
多分お客さんも混じってたんだと思う。





