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138話


 二週間後。

 お子様ランチ改め、オウカの欲張り弁当だけど。

 マジでレギュラーメニュー化されていた。

 尚、当初の予定通り旗は店員の手作りで、全二十種あるのだとか。

 ちょっとお高めな値段にも関わらず、飛ぶような勢いで売れたらしい。


 さすがフローラちゃん。ほんとに店長やってくれないかな。

 絶対私より素質あると思う。




 てな訳で。

 お土産にオウカ特製プリン(生クリーム添え)を持参して王城に出頭した次第です、はい。


 いや、今回も私が悪いわけじゃないと思うんですよ。

 フローラちゃんが頑張りすぎちゃった感じなので。

 だから、その、えっと。ごめんなさい、カノンさん。


「……いえ。私もオウカさん一人が悪いとは思っていませんよ。

 ただですね……本当に、仕事の量が、増えるんです」

「ほんっとごめんなさい。こちら、献上品のプリンです」

「ありがたく頂きます……はあ。しかし、人手不足が否めない感はありますね」

「んー。なんとかならないもんですかね?」

「中々難しいものですね。最低限、読み書きや計算が出来ないと務まりませんし……礼儀作法は後々覚えてもらえば良いのですが……」


 あー。王都でも読み書き出来ない人って結構居るもんね。

 計算もできるってなると、もっと人数が少なくな……る?


「……。あの、ですね。それって年齢制限とか、あります?」

「いえ、特には無いですよ。基本的に事務仕事ですし、仕事さえ務まればそれで」

「……。うーん。ちょっと、何とかなるかも知れません」

「え。本当ですか?」

「んー。ちょっと心当たりがあるので、時間貰っても良いですか?」

「よろしくお願いします。割と切実に」




 まあ、困った時のフローラちゃん頼みだ。


「いやいや……いきなり何ていう話を持ってくるんですか」


 頭を抱えられた。


「それに、よりにもよって英雄様の下で王城務めなんて」

「いやー……ごめんね?」

「うーん……まあ、一人、心当たりがあります」

「さっすが店長。頼りになるなー」

「店長代理です!」


 ほんと、いつも頼らせてもらってます、はい。




「てな訳で、連れてきました。シルファちゃんです」


 十歳くらいの青髪の女の子、シルファちゃん。

 フローラちゃんの一推しである。


「この子は……オウカ食堂で見かけた気がするのですが」

「カウンター係をやってましたね。読み書き、計算、接客と色々できる店長一推しな子です」


 年齢的には年少組なんだけど、実質フローラちゃんの補佐をしていた一人らしい。

 すごく真面目で頼りにしていたんだとか。

 ……いや、まあ。

 シルファちゃんいなくなっても、フローラちゃんなら何とかしてくれるはず。うん。


「とりあえず、お試しと言うことで」

「なるほど……あなたはそれで良いんですか?」

「はい! 英雄様と一緒にお仕事出来るなんて嬉しいです!」


 目をキラキラさせている。

 そだよね。これが普通の反応だよね。


「ふむ……八十二×四十三は?」

「え? 三千五百二十六ですか?」

「……。軽く引くレベルで優秀ですね」

「私なんかより優秀ですからね、この子」


 私も学校に通ってたから簡単な読み書きは出来るけど。

 こう、計算とか苦手なんだよね。

 なんか眠くなってくるし。


「採用です。いつから働けますか?」

「もうシフトから外れて貰ってるんで、今日からでもおっけーですよ」

「では給金や勤務時間などの話をしましょうか。まずこちらの……」



 という訳で。

 シルファちゃんは見事、王城務めとなった。

 なんかね、教えたら教えた分だけ吸収してって、一週間でカノンさんの担当していた仕事の三割を覚えたらしい。

 ……すっげえな、シルファちゃん。




「………んで。今に至ります」



 王城、カエデさんのお部屋にて。

 カエデさん、レンジュさん、私という、何気に珍しいメンバーでお茶会をしている。

 シルファちゃんに会うために王城に来た帰りにカエデさんから誘われて、二つ返事で来てみた次第である。


「カノンさ、ん。良かったです、ね」

「ずっと人手が足りないって言ってたからねっ!!」

「あ、そだ。レンジュさん、シルファちゃんに余計なことしたらしばらく口聞きませんからね?」

「安定の信頼の無さだねっ!?」

「レンジュさんならやると確信してますからね」


 うん。あとでシルファちゃんにも気をつけるように言っておこう。

 あと保護者(アレイさん)にも伝えなきゃね。


「アタシもさすがに、あの年齢の子は範囲外かなっ!!」

「ほう。年齢制限とかあったんですね。驚きです」

「……あったんです、ね。びっくりで、す」

「そこで結託されると非常に切ないんだけどっ!?」

「だって……ねえ、カエデさん」

「そうだよ、ね……オウカちゃん」


 顔を合わせて頷き合う。

 だってほら。レンジュさんだし。

 初対面時に私に何してきましたかね、あなた。

 あれ多分、一生忘れませんからね?


「……最近、私にも色々、してくるようになった、し」

「ほう。そこんとこ、具体的に詳しく」

「この間、お風呂に入ってる時、に」

「ストップその話は色々不味いから勘弁して貰えないかなごめんなさいっ!!」


 物凄い勢いで土下座された。

 ……ほんと、何したんだろ、この人。


「てゆか一応弁明するけどアレは事故だからねっ!?」

「でもレンジュさんな、ら。やるかなって」

「やらないよっ!? 見境ない訳じゃないからねっ!?」


 何があったかすっげぇ気になるけど、聞いちゃダメなんだろーなー。

 まー、あとでこっそりカエデさんに聞いてみるか。


「あ……まあとりあえず、私は帰りますね」

「……うん。私も、用事を思い出したか、ら」

「あれあれっ!? どうしたのかないきなりっ!?」


「……おい。ちょっと、詳しく話を聞こうか」


 ぐいっと襟首を掴みあげるアレイさん(保護者)


「うわっ!? アレイ、いつからそこにっ!?」

「お前が土下座する前からだな……さて、ちょっと俺の部屋に行こうか」

「うわっ!? ちょっ!? 襟首掴まれるとどうしようもないって言うか助けてオウカちゃんっ!!」



 少しは反省してください。

 世界中の乙女たちのためにも。


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