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126話


「あ。おかえりなさーい」

「おお、お疲れ様じゃったのう」


 二人でおまんじゅうを食べながら戻ってきたアレイさんを出迎えた。

 これ、ほんと美味しいなー。


「……おう。なんてーか…何してんだ、『夜桜幻想(トリガーハッピー)』」

「ん? おまんじゅう食べてます」

「じゃのう。アレイも食べるかの?」

「……いや、俺らが戦ってる時にお茶か?」

「えー。だって、やる事ありませんでしたし」


 ぶっちゃけ暇だったし。


「……。まんじゅう、俺にもくれ」

「どぞどぞ。この黒いのオススメですよ」


 頭をガシガシ掻きながら座るアレイさんにおまんじゅうを渡す。

 しゃーないじゃん。本当に暇だったんだから。

 英雄、ヤバいって。マジで。


「あー。とりあえずだな。逃げてきた魔物とグランドドラゴンは始末した。

 後はまあ、何も無いことを祈るのみだな」

「まーたそんな不吉なことを……」

「アレイ殿!! 先程は失礼致しましたっ!!」


 言葉の途中で割り込んできたのはリリィさん。

 うわあ。めっちゃ眼をキラキラさせてる。

 さっきと態度が凄く違うんだけど。

 いやまー、気持ちは分かるけどね。

 実際ちょっと格好良かったし。

 ……どちらかと言うと、私の場合は呆れが強かったけど。


 てかなんだあの人たち。色々おかしいでしょ。


「お、おう? いや、気にしないでくれ」

「先程の戦闘、素晴らしかったです!!」

「いや、また、デカブツは俺の専門だからな。ツカサとレンジュが露払いしてくれたから楽ができただけだ」

「そんなことはありません!!

 単騎でグランドドラゴンに挑む勇気!!

 そして倒してしまうという偉業を成し遂げた姿!!

 正に英雄でした!!」

「勘弁してくれ……俺は英雄なんて柄じゃない」


 また頭をガシガシ掻きながら、困ったように目を逸らす。

 ん? アレイさん、なんで目を逸らしたの?


 ……あー。なるほど。


「リリィさん、近い近い。見えちゃいます」

「は? 何の話ですか?」

「その服、胸元開いてるんですから、気をつけないと」

「……はっ!? し、失礼しましたっ!!」

「いや、まあ、なんかすまん」


 胸元を描き寄せ、頬を染めて距離をとる。

 それで良し。これ以上は、外にいる怖いお姉さんが黙ってないだろうし。

 だからほら、そんな恨めしそうな顔しないでください、カノンさん。


「お兄様……久々にご活躍を見ることが出来ました。感激です」

「なんだ、訓練ならいつも見てるだろ?」

「訓練と実戦は違います。気迫、臨場感、雄々しさ……どれも素晴らしかったです。

 ああ、なぜ私は記録用魔道具を準備して居なかったのでしょう。一生の不覚です」

「あー……まあ、なんだ。変わらんな、お前は」

「お兄様への愛は不動です」


 ほんっとブレないな、この人。


「もはや何も言うまい……お。このまんじゅう美味いな」

「じゃろう? ユークリアの隠れた名産品じゃ」

「なるほど……さすが食通だな、陛下。いつも食べ歩きしてるだけの事はある」


 え。まさかこの方、食べ歩きが趣味なの?

 国王陛下なのに?


「……毎度、護衛には苦労してます」

「あー。お疲れ様です」

「放っておくと日がな一日帰ってきませんからね」

「それ、執務とか大丈夫なんですか?」

「終わらせて行くからタチ悪いんですよ……」


 それはなんというか……ご愁傷さまです。 

 苦労してそうだな、この人。

 今度手土産持っていこ。




 その後は何事も無く進行し、無事目的地のビストールにたどり着けた。

 いやー。速かったなー。中々新鮮な出来事だった。

 英雄の戦闘も含めて。


 あ、列車用に簡単に摘めるお菓子とか作るのもありかもしれない。

 おまんじゅう、美味しかったし。


「陛下、ビストールの長がお待ちです」

「なんじゃ、もう仕事かの……それじゃあな、オウカ、アレイ」

「はい。お話、楽しかったです」


 色んな話が聞けて楽しかった。

 また機会があれば聞いてみたいなー。


「俺は帰りも一緒だろうが……」

「オウカ、また顔を出しておくれ」

「あはは……その時はお土産持っていきますね」

「おお、楽しみしておるよー」


 手をひらひら振りながら、陛下は護衛の人と一緒に去っていった。

 親しみやすいのは良いんだけど……やっぱ緊張はするなー。


「アレイさんはギルドですか?」

「ああ、久しぶりに顔を出してくる」

「なるほど。私はちょっと支店みてきます」


 そろそろお店も出来上がってるだろうし。

 楽しみだなー。不安も大きいけど。


「ああ、じゃあまたな。色々気をつけろよ?」

「アレイさんこそ。トラブル起こさないようにしてくださいね」

「俺の場合、向こうからやって来るからなあ…」


 ガシガシと頭を掻きながら苦笑。

 アレイさんの場合、自分からトラブルに巻き込まれに行ってる気がするんだけど。


「んじゃまた」

「おう、またな」


 いえーいとハイタッチして、オウカ食堂の支店に向かった。


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