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125話


 陛下の昔話を聞いていると、発車の時刻となった。

 イグニスさんの合図で列車がゆっくりと走り出す。

 うわ、すっご。揺れがほとんどないんだけど。

 最高級の馬車より跳ねないんじゃないか、これ。

 わ。加速してる。速い速い。


「おお、ついに走り出したかの」

「みたいだな。さて、問題なく到着出来ればいいんだが」

「アレイさん、不吉なこと言うのやめてください」


 そういうのって大体、現実になるから。


「だから貴様、陛下の前で不穏な事を言うな」

「すまんね。根が臆病なもんでな」

「ふん……これが本当に救国の英雄なのか?」

「いいや、英雄なんて柄じゃない。俺はただの一般人だ」


 肩をすくめて苦笑いする英雄。

 誰が一般人だ。このドラゴンスレイヤーめ。




『アレイさん。聞こえますか?』


 そんな中。不意に通信機からエイカさんの声が届いた。

 ……うん? なんか、スイッチ(戦闘モード)入ってる喋り方なような。


「エイカ? どうした?」

『前方距離一万メートル。敵影。地上に四千、上空に千。こちらに向かっています』

「……ほーら。アレイさん、責任取ってくださいね」


 変なこと言うから、お客さん来ちゃったじゃん。

 てか、五千て。なんだその数。


「魔物が五千……? しかも、種類が異なる奴らが……?」

「……アレイさん?」



 久しぶりに見た、険しい顔。

 空気が、ピリっと張り詰める。



「エイカ。カエデと共に上空は任せた。ツカサ、ハヤト、レンジュ。俺たちは下だ。カノン、列車の防衛。キョウスケはこっちの客室に来い。陛下を守れ」

『了解。伝達します』

「頼んだ。あと多分、後ろにデカいのがいる。そいつらは群れじゃない、逃げてきてるだけだ」

『確認します……いました。グランドドラゴン、一機です』



 グランドドラゴン。地龍とも呼ばれる、馬鹿でかい亀の様な龍。

 その甲羅は魔法銀より硬く、吐くブレスはレッドドラゴンにも劣らないという。

 たまーに絵本とかに出てくるやつだ。

 けど。この大陸には居なかったはず。



「何故龍種が!? あれはゲルニカにしかいないはずでは!?」

「知るか。誰かが連れてきたんだろ……アンタはここで陛下を守っててくれ。俺たちが迎撃する」

「……大丈夫なのか?」

「おいおい。勇者サマに騎士団長サマが居るんだぞ?

 この程度の事は何度も経験済みだしな」



「それより……」


 ニヤリと笑う、英雄。



「さぁて。どうしたい、『夜桜幻想(トリガーハッピー)

 ここには守る者が居て、君には戦う力がある。

 しかし、戦う義務は一切無いと来た。

 君は、残るか、戦うか。どちらにする?」


「……それ、聞く意味あります?」


「いいや、ただの確認だ」





 右手を横に伸ばす英雄(アレイさん)


 背部の拳銃を抜き放つ私。





「来い、『神造鉄杭(アガートラーム)』」


 巻き上がる蒼色の魔力光。

 彼の右腕に顕現する、魔王を貫いた力。




「――Sakura-Drive Ready.」


「Ignition」


 立ち上る薄紅色の魔力光。

 偽りだけれど、誰かを守れる力。




「行くぞ。まずは雑魚どもを蹴散らす」

「はい。デカブツは任せました」




 蒼と薄紅を混じらせ、二人で客室を飛び出した。






 ……のは、良いんだけど。




「あははははっ!! こんな数はいつ以来かなっ!!」

「…さあ。でも、やることをやるだけだし」


 襲い来る多種多様の魔物を次々と撃破していく、

 最強(レンジュさん)最強(ツカサさん)




「二人とも元気やなー」


 二人が討ち漏らした敵を迅速に始末していく剣士(ハヤトさん)




「ヒット。三機撃墜……」

「これぞ我が魔力の極致!! 顕現せよ闇の下僕!!

 ダークネスッ!! アポカリプスッ!!」


 着実に空の敵を撃ち落としていく狙撃手(エイカさん)に、

 大量の()()()を撃ち出す魔法使い(カエデさん)




 そして、極めつけは。



「俺たちの道を阻むなら……ただ、撃ち貫くのみ!!」



 不規則な軌道で空を飛んで全ての攻撃を避け。


 一撃でグランドドラゴン(でっかい亀さん)の甲羅をかち割るアレイさん(自称一般人)




 ぶっちゃけ、やる事がない。




「ねーリング。とりあえず、一発、ぶちかましとく?」

「――非推奨行動:味方を巻き込む可能性があります」

「だーよねー。列車に戻ろっかー」

「――推奨行動」



 とりあえず。陛下のとこ行こう。




「ああ……お兄様……素敵です…!!」

「おやおや。楽しそうですねえ」

「凄い……! アレが、英雄……!!」



 完全に恋する乙女なカノンさん。

 肩をすくめて苦笑いするキョウスケさん。

 先程と打って変わって、キラキラした瞳で前方を見つめるリリィさん。


「おお、おかえり。早かったのう」


 そして、いたずらな顔で笑う、国王陛下。

 なんだかちょっと気恥しい。


「どもです。やる事ないんで帰ってきました」

「んじゃ、ジジイの相手をしておくれ」

「あ、さっきの話の続き聞きたいです」


 せっかくの機会だし、色々お話を聞いてみたい。


「何処まで話したかのう……そうじゃ、エッセルでスフィンクスと知恵比べした話までじゃったか?」

「え、それ聞いてないです。なんですかそれ」

「おう、そうじゃったか。あれはのう、ワシが単独でエッセルに向かうために砂漠を越えている時じゃった」

「ふむふむ……」


 おまんじゅうとお茶を頂きながら。

 しばらくの間、陛下の昔話を聞かせてもらった。

 この方も、かなり波乱万丈な人生送ってるよなー。




 あ。ついにグランドドラゴン、動かなくなった。

 英雄のみなさん、お疲れ様です。


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