失踪
2013年11月18日(月)
さあ、自転車旅を始めて、二日目です。
この日は、早速目標が一つあります。
それは、亡くなった祖父のお墓参りに行くことです。
実をいうと、親兄弟のいざこざがあり、祖父のお墓参りには、しばらく行けていなかったんです。
まあ、そうした事情も、色々と納得できないことの一つで、失踪しようと思った理由の一つでもありますかね……。
そんなわけで、群馬を目指します!
とはいえ……
おぼろげな記憶しかない。
車でしか来たことがない。
その際、自分は運転していない。
という、かなり難易度の高い感じになっていますが、どうにか行けると信じて行きます!
見覚えのある長い橋を通って……歩道がないため、すぐ横を車が通り過ぎていくという、かなり危ない感じです。
しかも、勢いで入ってしまったので、引き返すこともできません。
そこでふと右を見たら……そっちに歩道あるやん!
というか、両側に歩道つけてくれよ!
そんなわけで、利根川だかを渡る長い橋を危険と隣合わせで通過しました。
すぐ横を何台もの車が通り過ぎていく経験、自分は二度としたくないと思いました。
そんな危険区間を通過した後、昨日動かなくなったギアチェンジをまた操作してみました。
すると、理由はわからないものの、普通にギアチェンジができるようになりました。
まあ、直ったならそれでいいという、ポジティブシンキングでいきます。
それから、見覚えのある道を進み……ちょっと微妙かもしれないと思う道に入り……迷いました。
そんな時、休憩所みたいな場所を見つけ、疲れもあったので休むことにしました。
そうして休んでいると、犬を連れたおばさんが来ました。
「ギターやるのかい?」
自分がギターを持っていることに気付いたのでしょう。
そんな風に、おばさんは気さくに話しかけてきてくれましてね。
「良かったら聴かせてよ」
そんな言葉をかけてくれました。
正直なところ、これまでギターは、ただただかさばるだけで、普通に邪魔でした。
ただ、どうしても持っていきたいと思って、持ってきたものです。
だからこそ、このおばさんの言葉は、嬉しかったです。
そんなわけで、自分はギターを演奏しました。
プロではないので、下手な演奏です。
でも、おばさんは真剣に聞いてくれました。
なお、この時、カポタストという、ギターのキーを変える道具を持ってくるのを忘れたことに気付き、どこかで買おうと決めました。
それから、おばさんとおしゃべりをしましてね。
その後は、おばさんがボールを投げて犬と遊んでいるのを見ていました。
ちなみに、自分が走っていたのはサイクリングロードで、この場所が休憩所というのも、自分の認識通りだったようです。
そのため、自転車に乗った人がよく止まるだけでなく、散歩で来る人も多くいました。
そうした形で、ここにはおばさんやおじさんだけでなく、若者など、様々な方が来ました。
中には、自分に缶コーヒーをくれるおじさんもいて、そんな親切に胸が熱くなりました。
そして、本当は話さない方がいいと思いつつ、自分の事情を話しました。
誰にも何も言わず、失踪している状態だということ。
こんなことを言って、もしかしたら、怒られるかもしれない。
そんな不安があったものの、全然違う言葉をおばさんがくれました。
「人生、真面目だけじゃダメだからね。好きなことやる時はやらないと」
そんなおばさんの言葉を受けて、自分は何だか救われました。
そして、自分の中で、ある目的が生まれました。
「南の九州には行ったことがあるんですけど、北の方は、あまり行っていないんです。だから……このまま北海道まで行ってみたいです」
これは、単なる思い付きで言ったことです。
ただ、そんな無謀なことを言ったにもかかわらず、おばさんは笑顔で応援してくれました。
それだけでなく、偶然通りがかった若者からも「頑張ってください」と言われました。
うん……二日目ですが、何か自転車旅を始めて良かったと思います。
そうした思いを持ちつつ、祖父のお墓参りがしたいと、大まかな場所を伝えました。
すると、おばさんはその場所を知っているようで、どう行けばいいか教えてくれました。
そうして、自分はおばさんに別れを伝えると、その場を後にしました。
そして、祖父のお墓は、意外とすぐ近くにありました。
無事に到着すると、自分はお墓の前で手を合わせました。
手を合わせただけで、花も線香も用意していないものの、こうしてお墓参りができたこと自体が数年ぶりで、自分は泣きそうになりつつ、しばらくの間、手を合わせました。
それから、すぐ近くにある、祖父母が暮らしていた家を見にいきました。
親兄弟のいざこざがあってから、行くことがなくなった家です。
ここには、今も恐らく従妹が住んでいると思います。
自分と従妹は、お互いに何でも話せて、単なる親戚以上の関係だったと自分は思っています。
ただ、ここしばらくは親兄弟のいざこざがあるせいで、まったく会っていませんし、連絡も取れていません。
そんな従妹が、今どうしているかといった思いを持ちつつ、自分はその場を離れました。
そのまま、さっきまでいたサイクリングロードの休憩所に戻りました。
ただ、おばさんは帰ってしまったようで、そこにいませんでした。
祖父のお墓参りができたことを感謝したかったので、少し残念に思いつつ、自分は次の目的地を目指そうと、サイクリングロードを進みました。
すると、途中でおばさんを見つけました。
そして、祖父のお墓参りができたことを伝えたうえで、お礼を言いました。
そうしたことがあった後、自分はサイクリングロードを進みつつ、北を目指すことにしました。
ただ、このタイミングで、兄にメールをしました。
まあ、しばらく家に帰らないし、連絡も取れなくなるけど、心配しないでといった内容です。
何だかんだで、いつも味方になってくれる兄に、また迷惑をかけてしまうのは申し訳ないなと思いつつ、そうしたメールを送りました。
元々、こんなメールをするつもりは、一切なかったです。
ただ、おばさんなどに話を聞いてもらい、少し心境の変化があったんだと思います。
それから少しして、既に仕事が始まる時間を過ぎていたため、会社の人からメールや不在着信がありました。
ただ、全部無視して、スマホの電源をオフにしました。
それから、サイクリングロードを走り続けて、群馬の森に到着しました。
ここは以前、マラソン大会に参加した際、来たことがある場所です。
そこで軽く休憩した後、また移動を再開しました。
ただ、この辺りから、自転車に設置した空気入れがズボンの裾に引っかかるのが気になり始めました。
まあ、後で何とかしましょう。
あと、せっかくのサイクリングロードなので、音楽を聴きながら走ります。
ということで、持ってきていたiPodにイヤホンを繋ぐと、音楽を聴きながら走り続けました。
そのままサイクリングロードを進み、途中で橋を渡った後、車道に入りました。
そこで、某キャリアショップ――スマホの契約や解約ができる店を発見しました。
実は、これまでずっと探していたので、丁度良かったです。
というのも、誰とも連絡できないよう、スマホを解約しようと思っていたからです。
ということで、勢いのまま、解約しました。
いよいよ、本格的に失踪する感じですね。
そして、また移動を再開しました。
その際も、イヤホンで音楽を聴いていました。
そんな時、ズボンの裾に空気入れが引っかかるのは、やっぱり気になるなと足元に目をやっていたら……ドーン、ガシャン!
……普通に事故りました。
完
いや、まだ終わりません。
とりあえず、左折しようと入ってきた車に突っ込んじゃった感じです。
音楽を聴きながらだったのと、足元を気にしていたせいで、対処が遅れてしまった形です。
そもそも荷物が重いせいで、ブレーキが利きづらいですからね。
そんなわけで、衝突してしまった結果、相手の車のサイドミラーが割れ、ドアもへこませてしまいました。
こっちは右腕なんかを思い切りぶつけましたが、まあ、何とかなりそうな感じです。
……あ、今の自分は、ほとんど身分がないも同然だから、警察のご厄介は困りますね。
自転車VS自動車なので、自転車のこちらが勝てる可能性が高いですが、そんなとこで張り合う気もないし、自分の不注意だったと自覚もあります。
ということで、こちらが修理代を払い、示談のような形にしてもらいました。
ただ、そうした形で解決するまで、相手の人が保険会社の人と連絡しようとしたものの、結局連絡がつかずといった形で、とても時間がかかってしまいました。
あと、こうした事故があった時は、警察に連絡するのが義務なので、皆さんはちゃんと警察に連絡してくださいね。
ただ、時間があった分、ここで相手の方と色々話をしましてね。
自転車旅をしていることを伝えると、この方からも応援してもらえました。
また、自分は新潟を目指していたのですが、それだと山越えになるだけでなく、休憩できる場所も少なくて危険とのことでした。
そのうえで、一旦国道50号に出た後、宇都宮などを目指した方がいいといったアドバイスをもらえました。
まあ、事故は災難だし、気を付けないといけないですが、これも素敵な出会いの一つでした。
そんなわけで、言われた通りに国道50号を目指します。
まあ、言われた道を真っ直ぐ行けば……三叉路があって、真っ直ぐ行けないですね。
どっちに行けばいいかわかりませんが……左に行きます!
……はい、迷いました。
そんなこんなでうろうろとしていたら、また国道17号に出ました。
そこで、丁度見つけたレンタルビデオ店に入り、店員さんに道を聞くことにしました。
とはいえ、店員さんの説明があまり上手でなく……はい、何となくわかりましたといった感じで、再出発することになりました。
そんなわけで、国道17号をまた進みます。
あ、歩道がない……ということで、迂回することもしばしばありつつ、とにかく進みます。
そんなわけで、国道17号が切れている場所に到着しました……って、おかしくね!?
ということで、色々な人に道を聞きながら、来た道を戻りました。
ちなみに、途中で道の警備をしていた人に道を聞きつつ、北海道を目指しているといった話をしたところ、「頑張ってください!」と応援してもらい、ついでに謎の握手をしたんですけど、それもまた良かったです。
とりあえず、教えてもらった案内板を見落とさないようにしっかり見つつ、進みます。
ドーン!
そうしたら、とんでもない段差に突っ込み、見事にひっくり返りました。
というか、疲れが半端なくて、集中力が切れていたせいですかね。
整備中だったのか、とにかく段差があったんですよね。
振り返ってみると、少し手前にカラーコーンが置いてあり、いかにも危ないよ~と示していたんですけど、普通に突っ込んじゃいました。
自分は、男の大事なとこをぶつけて、「ウギャー!」となりつつ、自転車もひっくり返っていまして、かなり心配です。
とりあえず、ブレーキを確認……問題ないです。
ギアチェンジも確認……問題ないです。
よし、大丈夫そうです。
と思ったら、ハンドルが内側にぐにゃっと曲がっていることに気付きました。
……全然、大丈夫じゃなかったです。
というか、ブレーキやギアチェンジの確認をする前に、何故気付かなかったのか謎です。
しかし、気合でハンドルをグイグイとやったら、直りました。
ということで、また出発です。
それにしても、二日目にして危険が一杯ですね。
そんなこんなで道を戻り続け……あ、さっき来たレンタルビデオ店がありました。
店員さんに道を聞いた後、自分は逆へ行ってしまったようですね。
いえいえ、店員さんの説明が下手だったため、どっちに行けばいいかわからず、逆へ行ってしまったなんてことはないです。
店員さんは、何も悪くありませんよ。
これで10キロ以上ロスしましたけど、本当に店員さんは、何も悪くありませんよ。
そんな店員さんへのフォローを心の中で入れつつ進んでいくと、目指していた国道50号に入りました。
というか、北海道を目指す最短ルートを考えた時、今日行った道は、ただただ遠回りというか、寄り道みたいなものです。
でも、そんな寄り道をしたおかげで、色々と素敵な出会いがあったので、ヨシとします。
そして、とりあえず桐生という場所を目指し……また歩道がない道があり、ルートを外れました。
自転車は、歩道でなく、車道を走らないといけない。
そんなルールがありますが、国道をはじめとした大きな道は、とても自転車が車道を走れるような作りになっていません。
それこそ、高速道路を自転車で走るようなものです。
そんなわけで、大通りを選択した結果、歩道があるかないかというのは、自分の身を守るうえで重要なことです。
そのため、どうにか自転車で走れそうな道を使って迂回しつつ、迷わないように、戻れる時はすぐ大通りに戻るということを繰り返しながら進みました。
とはいえ、なるべく大通りを選択していたものの、国道50号からは大分外れてしまいました。
そのため、また迷いつつ進んでいると、ローカルな駅を見つけて、そこにいたタクシーの運転手さんに国道50号へ戻る道を聞きました。
そのおかげで、すぐに戻れました。
そうして、このままどこまでも行ってやると思っていたら、ネットカフェを見つけました。
……はい、今日は疲れが半端ないので、このまま進むのはやめて、休むことにします。
こうした判断、大事ですからね。
まあ、その前に買い物もしました。
書いていなかったものの、これまで飲み物や軽食を買うため、コンビニなどには頻繁に寄っていて、途中で歯ブラシや爪切りといった、必要な物も買っていました。
ただ、ここでほしかったのは、ニッパーです。
実は、あらかじめ購入していたものの、これまで使えていなかったものがあるんです。
それは、サイクルコンピュータです。
これは、速度や走行距離を表示してくれるもので、ネット通販で購入しました。
ただ、センサーのようなものを自転車につけるのが若干難しく、ニッパーのようなものも必要ということで、これまで使えないでいました。
それを改めてつけようと思い、ニッパーを買った後、店の駐輪場で、どうにかサイクルコンピュータをつけることができました。
なので、これからは走行距離なんかも書く予定です。
そんな感じで、今日は行ったり来たりと無駄に走り、結局どれだけ走ったか全然わからないものの、とにかく走り続けました。
ただ、こうした寄り道も、自分にとって大切な思い出になる予感がしています。
そんな一日でした。




