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11、たまにはドライヤー掃除しよう(火花や焦げ臭は埃づまりの可能性大)

「フフ~ンフ~ン、フフ~ンフ~ン♪」


 ベリッ……ビリッ


 バリッ、ビリッ……


「魔王様、先程から何をなさっているのですか?」


「民宿の日めくりカレンダーを破り取ってますが何か?」


 ベリッと五枚目のカレンダーを破り取り、本日のノルマは達成である。

うむ、あとは適当にカロンの魔法特訓とスリ注意喚起のバイトをこなして今日を終えよう。


 では皆のもの解散っ! また次回を乞うご期待! 

次も絶対、見てくれよなっ☆


「いやまだ一日が始まってすらいないでしょう。一体何がしたいんですか」


「ほら、演出でよくあるじゃん。良い感じのBGMと共にカレンダーにバツ印が増えてったり、日めくりカレンダーが一枚ずつ流れていって日にちの経過を示唆するアレ。あーいうのがやりたかった」


「説明されても理解出来かねます」


 ぬぅ……これが言葉による表現の限界か。

いつか映像でお届けできる技術の進歩を願っとこう。

俺はそっとカレンダーをカウンターの脇に戻してグルオに向き直った。

朝から突っ込みお疲れさん。


「して、ジーコローリエを干し始めてから五日が経過した訳だが、進捗はどうなっているのだ?」


「(なぜ説明口調?)残念ながらローリエの乾燥はもう少し時間が必要と思われます」


「デースヨネー」


 ごめん知ってた。

民宿二階のアチコチにザル(×10)をぶら下げて干してるからな。

毎日嫌でも目に入るし、何より匂いがきっついもん。

スメハラとか本当勘弁。


「はぁ……いい加減鼻が馬鹿になりそうだ」


 窓を開けてるのに凄いこもってるジーコローリエ臭。

鼻を押さえて唸っていると朝食の後片付けをしていたカロンが戻ってきた。


「確かにこの匂い、マオーさんじゃなくても辛いですよねぇ。ジーコローリエは香りが強すぎてお料理にも向かないようですし……」


「マジか。じゃあ何の役に立つんだ、これ」


 消臭剤か薬かな?

ワンチャン毒の可能性もあるが、怖い事は考えないようにしよう。

魔王は考えるのを止めた。


「それはさておき、今日のパトロールは午後からか……」


 ハンカチちり紙、財布を持ったか確認しつつ、見慣れた民宿の一階をグルリと見渡す。

時間帯のせいか俺達三人以外に人はいない。

職人(エーヒアス)の朝は早い。

今頃はもう青空鍛冶屋の仕事をしている頃だろう。

オッサンは客室のベッドメイキング中といった所か。


 掃除道具の点検をし終えたグルオが今日の予定を確認し始める。


「魔王様。私は本日、講習会が二回、出張清掃が三件入っております。何かありましたら部下の方に伝言をお願いします」


「あ、うん。それは分かったけど、ご厚意で宿を安く貸し続けてくれてる民宿の主人を部下扱いする精神は分からない」


 オッサンよ、いい加減目を覚ませ。

たぶんこの上司(ボス)は給料くれないぞ。


「心配いりませんよ先生。マオーさんには私とコエダが付いてますもん」


 いやカロン、それが一番の不安要素なんだろうよ。

ため息を吐くグルオに見送られながら、俺達はいつもの広場へと向かう。

フッ、この俺も随分とこの町に馴染んでしまったものよ。





……で。

広場に着いて早々、カロンはチビッ子達に「やーい、お前のお師匠ダサ兜~」などとからかわれていた。

あんなに年の離れた子供にバカにされるなんて、なんと憐れな娘だろうか。


「さてカロンよ。今一度確認するぞ。そもそも初級風魔法(ウインド)とはどんな魔法か?」


「はい! ヒュッて一陣の風を出してビシュシュパーっと対象物を切り裂く、狭い範囲攻撃魔法です!」


「よろしい」


 擬音のクセが強いのはさておき、イメージは大体合っているようだ。

それを踏まえて……


「ではお前の持てる全ての力(レベル7)を見せてみよ!」


「はい! 吹きすさべ、吹きすさべ……ウインド!」


 ヒュォォーー……


「「いや何でだよ!!」」


 カロンの杖の先端から十秒程そよ風が吹き続けるミステリー。

っていうかこれ、グルオが洗濯物を乾かす時に使う温風魔法(やつ)に似てない?


「おかしいな 教えてるのは 俺なのに」


「一句読まないで下さいー! むしろ何でこうなるのか私が聞きたい位ですよぅ!」


 ムキになって何度も魔法を発動させるも、彼女の杖からはそよ風が吹き続けるだけである。

……閃いた!


「これで風呂上がりに髪を乾かせば時短になるのではないか? やったな、カロン」


「いや何もやれてないです。攻撃力ゼロとか情けなさの極みじゃないですかぁ……」


「今更だろう」


 初期レベル2が何を仰るのやら、片腹痛いわ。

しかし何か引っ掛かる。

このドライヤー魔法(たった今命名)、どこかで…………あ。


「カロンよ。もしやその魔法、威力さえ上がれば中級風魔法(ストーム)になるのではないか?」


「はぇ? すとぉむ?」


 説明しよう!

ストームとはゴォーっと回転を加えた強風を吹き付けつけてズバーンと敵を吹っ飛ばす中級魔法である。


 カロンの魔法は風力のNASAみが目立つものの、風の流れとしてはウインドよりもストームの方が近いようだ。

何で魔法使い初心者がセミプロ魔法使ってんだ。


「つまり私は中級魔法を使う天性の才があったという事ですね!?」


「才能がある人はレベル7でウインドに手こずったりしないんだよなぁ」


 調子に乗らないよう釘を刺しつつ、MP(マジカルポイント)が尽きるまで特訓を続けさせる。

こりゃウインドは一旦保留にして、当面の目標はストームもどきの威力向上と持続時間延長で決まりだな。


「さぁ頑張れカロン。目指すはあのチビッ子達を自宅まで吹き飛ばす風力だ」


「ひぇぇ、流石に無理ですよ~」


 現状戦闘では何の役にも立たない魔法だが、経験値は裏切らない。

って父上が言ってた。(※第一話参照)

鍛えていればいつかこのストームもどきも役に立つ日が来よう。……たぶん。


「吹き飛ばせ、吹き飛ばせ……ストーム!」


 ヒュォォ……


「ストームというのもおこがましいこの威力には草も生えない」


「マオーさんうるさいですーっ」


 横やりや休憩を挟みつつ特訓を続ける事約二時間。

いい加減カロンの集中力が切れだす頃、正午を報せる広場の鐘がゴーンと鳴り響いた。

やったぁお昼だぁ。


「よし、では昼飯を食ったらパトロール(バイト)に向かうぞ」


「は、はいぃ~……」


 カロンは杖を腰に差すと、ヘロヘロとした足取りで俺の後に付いてくる。

今日は何を食べようか──

なんて呑気に思案していると、通りの向こうを歩くエーヒアスの姿が見えた。


 え?

一瞬だったけど今のエーヒアスだよな?

なんか若い男と歩いてなかった?

水色のポニーテール娘なんてそう多くはいないし、見間違いとは思い難い。

日中はいつも鍛冶工房(キャンプ地)でガンガン仕事してる筈なのに……

ハッ!


 もしや仕事をサボって逢い引きか?

保護者の目を盗んでヤンチャの道に走っちゃうの?

盗んだ馬車で走り出しちゃうの?

行き先も分からないの?

魔王様は真面目さが売りだから許さないよ?


「どうしたんですか、マオーさん」


「……カロンよ、悪いがここはコエダを連れて先に行け!(食堂に)なぁに心配するな。あとで必ず追い付く!(お腹減ってるし)」


「急な死亡フラグ!? あ、ちょ、マオーさん!?」


 剣の柄に跨がっていたコエダをカロンに託し、俺はヒョイヒョイと人混みをかき分けてエーヒアスの後を追った。


 だ っ て 気 に な る ん だ も ん 。

大人びているとはいえ、エーヒアスはまだ十八才。

何かあったらデイグ氏に申し訳が立たぬ。


 ガヤガヤと賑わう通りを突っ切り、チラチラと見える水色の髪をつける。

やはり男と同伴のようだ。

エーヒアスの背に被ってよく見えないが、暗い髪色の男が時折振り返っては彼女に話しかけているのが確認出来た。

歩みの速度を合わせられない男か……これは減点である(0点からの減点方式)



 尾行開始から数分後。

辿り着いたのはごく一般的な家屋が建ち並ぶ住宅街の一角だった。

道端では主婦が立ち話したり、子供が地面に落書きしたりと平和な光景が印象的だ。


「ふむ。一体こんな場所に何の用が?」


 ちょっと嫌な予感がする。

まさかご自宅デートではあるまいな。

ふいに二人が高い塀の家を右折してしまった。

やべ、見失う!


 慌てて駆け寄り、塀から顔を出して覗こうとした途端、突然大きな声が耳を(つんざ)いた。

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