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後日談 狛田 琴音編  救いの手

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



〇狛田 琴音 救いの手



「ここは・・・・」


起き上がると木造の天井に少し暗い蛍光灯が見えた・・・!?


「誰かぁぁ!?」


起き上がって周囲を見渡すと6畳くらいの小さな部屋の中に敷かれた布団の上だった


「!?私」


自分の体を触ってみる・・・自分の股間も確認する・・・違和感は無かった・・


「え?私の服じゃない・・・」


ふと気づくと自分が着ていた服では無く薄緑色のワンピースだった


それに足の裏のキズや足首にテーピングがしてあり誰かが治療してくれたみたいだ、それより此処は?


部屋の中を見渡すと小さなタンスと小さなテーブルそして化粧台・・その横には一枚の写真が・・・


私は足が痛むので這って化粧台の方へ行き手を伸ばして写真を手にする


「これは・・・・」


その写真の中央には夏に撮ったのか半袖短パンでカメラ目線でピースする笑顔の男の子とその右横で少し腰を曲げて男の子の顔に自分の顔を寄せながら同じく笑顔の少しふくよかな温和そうな女性


それと・・・・


「これって・・・写真のサイズからして男の子の左にも誰かいた感じよね・・・」


その写真は明らかに縦長な感じがし、違和感を感じる、写真立てともサイズ感が合ってない・・・意図的に左を切り取った?


「あ、起きてたんだね」


写真を見ていた顔を上げ声の方を向くと・・・剣兄・・・・・では無く・・・


「貴方は・・・今朝駅でぶつかった」


そう彼は今朝駅で私の不注意のせいでぶつかってしまった剣兄に何処か面影の似てる地元の男の人だった


「覚えていてくたんだね」


そう、はにかんだ笑顔が剣兄に良く似ていて少し心臓がドキドキしてしまった


「その・・・大変だったね・・・危ない所だった」


そうだ私は相馬君に襲われていて・・・


「あ、あの!貴方が助けてくれたんですか!?」


私はグイっと前のめりに男の人へ近寄ると少し戸惑って照れるように頭の後ろを掻きながら黙って頷いた


「そ、その・・・危ない所を助けてい頂き・・本当に有難うございました!!」


布団の上で頭を下げてお礼をする


「いやぁたまたまだよ・・外の畑に野菜を取りにいったら・・草むらの奥から君の足が見えて・・それで見に行ったら・・・その・・」


言いにくそうにしてる・・・私に気を使ってくれてるのだろう・・・


「それで相馬・・・私を襲っていた男の人は・・・・」


「うん、僕が木の棒で頭を殴ったから気を失っちゃって・・・地元の交番に電話して気絶したまま連行してもらったよ」


「一応僕がその時見た事と彼を気絶させたのが僕だという事は警察に説明はしたけど・・・あそうだ君が起きたら此処に電話する様に頼まれていたんだ」


男の人は私にメモを手渡してくれた・・・が


「ん?どうしたの?」


困ってる様子の私を見かねて声を掛けてきた


「そ、その出来たら電話を貸していただけないかと・・・」


「ああ、お安い御用だよちょっとまってねぇ・・・丁度電話した所で履歴に残っているよ」


男の人は履歴の画面から交番へリダイアルしてくれた


「もしもし・・・はい・・先ほど山道脇で・・・はい・・私は東京在住のK大1年、狛田 琴音と言います・・はい18歳です・・」


警察から本人確認のあと事情を聴かれ・・・・


『状況は分かりました、此方で収監してる相馬氏は婦女暴行の現行犯で逮捕してます、あとその旅館に宿泊中の同級生についても今から警官を送り任意同行で事実確認をさせて頂きます』


「はい、宜しくお願いします」


『それと、今回の件ですが狛田さんは被害届を出されますか?』


被害届・・・私には家族と呼べる人は居ない・・誰に迷惑をかける訳でもない・・だったら・・・


「はい被害届を出します」


『了解しました、では今収監してる相馬容疑者と旅館に宿泊中の同級生の方々にも狛田さんから暴行及び強制ワイセツの件で被害届が出ており刑事事件だという事をお伝えします、では』


そう言うと通話は切れホーム画面に変わる・・私はスマホの電源を落そうとした時・・誤って検索エンジンを触ってしまった・・・


【#:不動剣一】【#:不動剣一の現在】【#:不動剣一目撃情報】【#:不動剣一の黒い噂】


検索履歴のほとんどが剣兄の事ばかりだった・・・


「田舎の警察は勤勉で地域と密着してるから都会と違って親切だよ、任せておけば悪い事にはならないさ」


私の戸惑い方を勘違いした男の子は安心してと胸を叩いた


「あ、あの助けて頂いたのに自己紹介もせず・・・私東京在住のK大1年、狛田 琴音と言います」


私は頭を下げ自己紹介をした


「あ、これは丁寧に・・僕は・・か・・岡本おかもと 将兵しょうへいと言います、僕も東京の高校に通ってましたが・・中退して・・こちらで土木関係の仕事をしてます」


そう言えはこっちに来てまだ日が浅いとか言ってたわね・・・


「えっと・・岡本さんは・」


「将兵で良いですよ、同歳なんで」


「じゃぁ・・将兵さんはこのお家にご家族で住まわれてるんですか?」


写真を見てしまったからか、自分の置かれた状況に安心して余裕が出てしまい何時もの悪い癖で勝手な想像と他人の境遇に対する無責任な興味が沸いて余計な事を聞いてしまった


「あっ・・いえすみません、助けて頂いた上に失礼な事を・・・忘れて下さい」


そう頭を下げ謝罪すると、将兵さんは少し悲しそうに微笑んでから小さく首を振る


「お気になさらず・・・この家には母と二人で生活してます・・・けど今母は体調を崩してしまって少し離れた町の病院に入院してます」


「そうだったんですね・・・あっ!それじゃこの服は!?」


私は自分が今着てる服を触り申し訳ない気持ちになるが、将兵さんは目の前で両手を振って「かまいません!」と気にしない様に言ってくれた


「その・・・着ていた服は・・破れてたり・・汚れていたので・・その・失礼かと思いましたが汚れていた服だけ今洗濯してます・・母はその写真の時は少し太っていたんですけど、最近は食が細くなったのと過労で・・痩せてしまってて」


どうやら着れそうな服があまり無いのかもしれない、確かに部屋の中に洋服を収納するタンスは1つしかなかった


「狛田さんは・・」


「私も琴音でいいです」


私がそう言うと将兵さんは頬を掻きながら照れていた


「では・・琴音さんは警察に被害届を出されるという事でしたから一度病院で見て貰って診断書を用意してもらうべきでしょう流石に今日は遅いので明日の朝一でも僕が連れて行きますよ」


「何から何までご迷惑おかけして申し訳ございません・・・でも・・将兵さんお仕事は?」


「あ・・・明日は・・その母の見舞いの日で、お仕事はお休み頂いてます・・・琴音さんが診察してる間に母の見舞いを済ませますので、気になさらず」


【ピロロロ】


そんな中で将兵さんのスマホに着信が入る、電話に出た将兵さんは何度か相槌をすると私にスマホを差し出す


「先ほどの警察の方です、琴音さん代わって欲しいとの事です」


スマホを受け取り恐る恐る電話口に出ると


「狛田 琴音さんですか?こちら〇〇署の小関巡査です、先ほど電話口にてご連絡頂いた通り、今現在、同級生の方々は、ご宿泊先の旅館にて男性3名女性3名を所管の警察署に任意同行してもらい事情聴取を行ってます」


「男性3名について、先に現行犯で逮捕した相馬容疑者からの供述の件も合わせ、狛田様より傷害、婦女暴行について被害届が出てる旨を説明した所、各々が自供した内容に食い違いがありまして今事実確認をしている最中です」


「女性3名の方は、今回の事について全く知らない関係無いという事を主張しておられてます、狛田様のほうで何か証拠になるような物証や証言は御座いますでしょうか?」


「確証は無いのですが、私らは女性4名で大学から出された課題をこなす為、この街にある企業で企業弁護士の体験をさせてもらってそれをレポートで提出する予定だったんですが、私以外の女性3名は男性メンバーの相馬君から去年提出したレポートを見せてもらう代わりに・・・その・・ら・・乱交」


私が言いにくそうにしていると電話先で分かりましたので大丈夫ですと制止してくれた


「では、彼女らのスマホを確認させてもらいその様なやり取りが、男性たちと有ったのか確認させて頂きます、ご協力ありがとうございました、明日にでも一度交番に来て被害届のご提出をお願いします、それでは」


切れたスマホを将兵さんに返却する・・・


「今の所は大丈夫そうですね・・・僕今から車で旅館まで行って琴音さんの荷物を受け取ってきます」


そう言うと立ち上がりハンガーに掛かっていたパーカーを羽織る


「まって!!」


気付けば私は将兵さんのズボンの裾を掴んでいた、身体はさっきの恐怖でガタガタと震え額から嫌な汗が噴き出る


「琴音さん大丈夫です、貴方を襲った連中は今は警察の監視下に居ますですので安心して此処で休んで下さい・・」


その言葉に手を離して静かに布団に横になる私をみて微笑むと入口のドアを施錠する音の後、部屋の窓から軽自動車のエンジンが掛かる音とヘッドライトの明かりが差し込み、やがて遠くなって行った


私は不安な気持ちを静める為、目を閉じ眠る事にした

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金森の遺族かねぇ
か? 今までに居たの誰だっけ
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