第62話 壊滅へのカウントダウン
一行は正門前で、2人組程度にバラバラに散らばり、別々の道を使って王宮へと向かっていった。
残った兵士や住民は一切おらず強い気配が単体でポツンポツンと散らばっているのが、一行にはよく分かった。
※ ※ ※ ※ ※
「……は?」
キリウスが気配を察知して左側を振り向くと、目の前に右手の平が飛び込んできた。
キリウスは顔面を掴まれ、民家を10戸ほど突き抜けて吹き飛ばされた。
「ん?どした?」
後ろを走っていたキリウスが突然吹き飛ばされ、ベイルは気になってキリウスの方を覗いた。
「ったいなあ……なんやねん……」
「れへへへへええぇぇぇああ~殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅううううう!……」
キリウスはすぐに立ち上がり、近くの民家の屋根の上に跳び上がった。
「……気持ち悪……なんやこいつ……」
既に殺戮依存症の発作が起こっているリアは不気味な笑みで不気味な笑い声を小さく発し、よだれを垂らしながらキリウスを凝視していた。
「後は任せたキリウスー」
ベイルの棒読みで手を振り、キリウスを置き去りに王宮に走っていった。
「……なんでやねん……」
※ ※ ※ ※ ※
ルブラーン入り口から王宮までの中腹付近で、ドグラと共にセタカルド諸島のルービ島で行動していたウルが待ち構えていた。
剣を抜いたウルに出くわしたビオラとハロドックは、ウルの立つ四つ角の手前で立ち止まった。
「……ワタシが相手する」
「お、おう……よろしくー」
ハロドックは四つ角の、正門から見て東側の道を使って王宮に向かっていった。
「……お前は……ビオラ・キエル……」
「───」
ウルは剣を構え、憤怒の表情でビオラを睨み付けた。
「……何しに来やがった……」
「……贖罪……皆への……アナタへの」
※ ※ ※ ※ ※
クラジューとゾーネはいち早く王宮前まで辿り着いた。
王宮前の広場には、ドグラが仁王立ちで待ち構えていた。
「いや~驚いたぜ、いきなりあの数をかましてくれるなおい」
「だ~れ~?」
「いやいやゾーネちゃん、ついこの間なんだから覚えといてよ…がっかり……」
「う~ん……しらな~い♪」
ゾーネは原因不明の暴走をしていたために、ドグラの事ははっきりとは覚えていなかった。
いわゆる、泥酔した翌日みたく暴走前の記憶の欠如も少しあったためだ。
するとクラジューがドグラの前に出てきた。
「……何だよ」
「俺とタイマン張れ……てめぇを倒せば、現状のてめぇより強ぇって訳だろ?」
「失せろロリパラダイス」
「誰がロリパラダイスだよ!!」
「倒せば強ぇって、何を当たり前な事をそれっぽくほざいてんだ?アホなのかロリパラダイス」
「うるせぇな!!!!」
「かわい~なまえ~♪」
ドグラがこう言っているという事は、ドグラはゾーネをロリと認識しているという事だ。
「いやよく考えろゾーネ、あんな単語のどこにかわいい要素があるんだよ、何だよロリパラダイスって、パラダイスって何がどうなってるんだよ」
クラジューが独り言を言ってる間に、広場まで辿り着いた一行は、クラジューを横目にしれーっと王宮内に入っていった。
「───」
特に口を手で押さえながら爆笑するのを押さえ、クスクスと笑いながらこちらを見てきたハロドックは後で殴ろうと誓った。
「やっぱしそのかわいこちゃん……お前の連れだったのか」
「見て分かんなかったのかよ」
分かってはいたが、どこか認めたくない自分がいた事にドグラは今気が付いた。
「……タイマン張るんだろ?なら〝闘戦〟だな、俺が勝ったらその子を娶る、もう毎晩毎晩調教して俺無しじゃ生きていけなくして子供めちゃくちゃ産ませる」
「ゾーネは関係ねぇだろ妄想の中でやってろ、いや妄想でもすんな」
「へぇ、自分の女人質に取られて弱気になんのか?そんななよっちい奴と吞気に旅なんて不憫だなー……あーあー!!不憫だなー!!」
「ざけんなやってやるよ、てめぇが負けたら……死ね!!」
ドグラの幼稚で分かりやすい挑発に、クラジューは分かりやすく乗った。
クラジューとドグラは額が当たりそうな距離でメンチを切り合い、クラジューはドグラに向かって中指を立てた。
そしてクラジューはドグラから離れ、ゾーネの前に歩み寄った。
「ゾーネ、悪ぃな巻き込んで…すぐ終わらせる」
「……うん……がんばって……」
クラジューは両手でゾーネの両側頭部に触れ額を当て、両目を閉じてそう言い合った。
「遺言は言い終わったか~」
「……死を想定して戦いに臨む奴は、勝つイメージを持ててない無能だ……俺は違う……お前を殺して、ベイル・ペプガールも殺す」
「弱い犬ほどよく吠えるって言葉知らねぇのか?」
「俺には野望がある……てめぇで足踏みしてるようじゃ、辿り着ける訳ねぇだろ」
※ ※ ※ ※ ※
「で、階段上ればいいのか?」
「バカか、地下に決まってんだろ」
「決まってるんすか?」
王宮内のエントランスに立った一行はその場で足を止め、ハロドックは地下への道を探し始めた。
「ルブラーン王宮は13階建て、そこにアリシアを隠すんなら俺達を敵に回す意味を分かってねぇ……ケイナンはジェノサイドと繋がってる、理解出来ねぇ男じゃねぇよ」
「ジェノサイドってそんなにすごいのばかりなんすか?」
「当たり前だ、コーゴーより層は厚い」
「何の話だ」
ハロドックが入り口から見て西側にある扉をチラッと見ると、上の階に繋がる階段からリアと共に行動をしていたランスが降りてきた。
「……何故この件にジェノサイドの名が出てくる」
「……それはこいつに聞いて」
「え、ちょ」
ハロドックはレオキスをランスの前に押し出した。
「……何だお前は」
「あの、ハロドックサン?」
「はい発け~ん、レッツゴー」
ハロドックは王宮から入って西側の扉を蹴り破り、一行はその先にある下り階段を走って下っていった。
「ちぃ、待て!!」
「あの、オレがあんたを食い止めるっすから」
ランスは一行を追おうとするもレオキスは氷槍アイシクルを繰り出し、ランスの前に立ちはだかった。
「……お前が王女を狙う理由が分からないな、ジェノサイドの手の者か?」
「オレが作った飯を泣くほど喜んで美味いって言ってくれたんすから、また食ってもらわないとっすよ」
「……は?」
※ ※ ※ ※ ※
一行は階段を下って地下1階に辿り着いた。
そこは近未来的な床や壁、天井の高さが5メートルほどで縦横の長さが約10メートルの正方形の大きな部屋だった。
「……何ですかここは……異様な部屋ですね……」
「5000年前の人間界はこんな感じのがポンポンあった……クルエルはこんなもん隠してやがったのか……」
「階段は?」
「……うわ、端まで行かねぇとねぇぞ、多分全部の部屋そうだろうな」
「まあそういう事だ」
つまりこの地下へと下っていくには、階段を降りた場所の対の方にある階段の踊り場に向かい、同じく階段を下るを繰り返さなくてはならない。
もし侵入されても、全ての部屋を避けては通れない設計となっていた。
すると一行のいる場所の向かい側の階段からギュートラスが現れた。
「……中々のメンツがお揃いで…殺しがいがありそうだな~」
「……僕が食い止めます」
「おいラルフェウ、だいぶ差あるぞ」
「……僕がやらなくては……いけないんです……」
「行こうぜ」
一行は部屋の向こう側の階段を目指して走った。
「させるかよ」
「させます」
ギュートラスは一行の行く手を妨害しようとするも、ラルフェウがギュートラスの前に立ち、妨害を阻んだ。
「ちぇっ、まあいいか」
「……ミルベルは元気ですか?」
「知るかよ、俺はジェノサイドから身ぃ引いてんだ…けどまあ、お前よりは充実してんじゃねぇの?」
「……そうですか」
※ ※ ※ ※ ※
一行は地下2階から6階までのトラップを全て発動させながらも何とか切り抜けていった。
「部屋の雰囲気なんかすげーのに罠は落とし穴とか古典的なんだな」
「てめぇニコラス!お前分かってて踏んでんだろスイッチ!」
「知~らねぇっつってんだろ!!そ~れにオレっちだけじゃねぇだろ!!」
「いや1番多いのお前だぞ」
「て~めぇベイル!数えてやがるな!!」
「だって面白ぇし、ぶふっ……」
「飛べよ!!何ペンギンの分際で人の俺らとタメのスピードで走ってんだよ!よちよち歩けよ!!」
「オ~レっちはそんな型にはまらない男なんだよ~」
「メスだろ」
「あ~そうとも、だから男っつってんだろ~?」
「ニコラスとりあえず1回死ね」
「何でだよ!!?」
「実は2番目に多いのリドリーという事実……ぶふっ」
「今何も目に入ってねぇだろリドリーちゃん、溺愛しすぎだろ」
※ ※ ※ ※ ※
一行が7階の部屋に入ると部屋の中心にシュベレットが立ちはだかっていた。
「ここまでですよ、ベイル・ペプガール」
「あっそう、いいの?」
リドリーは脇目も振らずシュベレットを横切った。
しかしシュベレットはリドリーの前に瞬時に移動しリドリーを蹴り飛ばした。
リドリーは天井に強くぶつかり、地面に落ちた。
「あぐっ……ちぃ……アリシア!!!!」
「タフな女性だ」
リドリーは地斧デゼルトを繰り出し、シュベレットを斬りにかかった。
しかしシュベレットはかわし続け、全くの無傷だった。
「……しまった、逃げられたか……ま、今回はどっちでもいいのですけど……彼女くらいは止めておきましょう」
「さっさと退きやがれデカブツ!!!」
※ ※ ※ ※ ※
一行はリドリーを置いて地下を下っていった。
そして地下8階から11階までのトラップを再び全て作動させながらも切り抜けていった。
「ニコラスてめぇいい加減にしろよ!!2番目のリドリーちゃんいなくてもオールクリアしてんじゃねぇよ!!」
「だ~からオレっちに聞くなよ!!知~らねぇよ!!」
「だっはっはっは!!!面白ぇなここ!!」
「「どこがだよ!!!!」」
ハロドックとニコラスは同時に同じ言葉をベイルに向かって叫んだ。
「ハモった、ニコラス喋んなよ、ジンクスゲームだ」
「や~るわけねぇだろ」
「なんだよジンクスゲームって……」
※ ※ ※ ※ ※
一行は地下12階に辿り着いた。
するとそこには異様かつ凄まじい、ルブラーン全体を飲み込んでしまいそうな程のオーラを放つルナが、既に立ちはだかっていた。
「……俺か」
「察しがいいな」
「たりめぇだろ」
「な~らオレっちも手を貸すぜ~」
「ニコラス、手ぇ出すな」
ハロドックとルナは真剣な眼差しで睨み合っていた。
「じゃ行くか」
「……お~う」
ベイルとニコラスはルナを横切り階段を下っていった。
ルナはその1人と1羽の事など気にせず、微動だにしなかった。
「いいのか?行っちまったぞ?」
「今さらケイナン・クルエルなどどうだっていい……それより、こちらの方が重要だ」
「長官とは思えない発言だなおい」
「今の俺は、長官でも特等聖戦士ではない…お前の子として、お前を倒す」
「……そうか」
※ ※ ※ ※ ※
例によって地下13、14階のトラップはニコラスによって全て作動させながらも、例によって何とか切り抜けていった。
「う~わ……オレっち才能あるな……要~らねぇ才能だ……」
「だっはっはっは!!!」
※ ※ ※ ※ ※
そして地下15階、巨大な機械の佇む部屋にベイルとニコラスは辿り着いた。
「……アリシア発見」
アリシアはカプセルの中に入って眠っていた。
「速かったな……速すぎるくらいだ……やはりベイル・ペプガールは、40万の兵の掃討など造作もないという訳か」
「……アリシア何してんの?」
「俺の力となってくれているのだ、邪魔はさせないぞ……ベイル・ペプガール」
「……俺も必要だから、アリシアは返してもらうぞ」




