第60話 ルブラーン攻防戦
「はーい誰か結界的なの使える人ー」
「貴様ら!!何者だ!!」
船の近くに配属している全ての兵達は船の方にあらゆる銃口を向け、遠くの兵達は船の方へと向かっていった。
それと同時に、ハロドックは銃弾を防ぐために呼びかけた。
「答えろ!!」
兵の一人が一行に向かって問い詰めていると、ベイルは船から飛び降り、その兵を激しく睨み付けながら、表情は笑っていた。
「皆大好きテロリストでーす」
「一陣!!撃てえぇ!!!」
ベイルが言葉を言い終わると同時に、船から最も近い兵達の包囲陣がありとあらゆる銃弾や砲弾を船に、ベイルに向かって放った。
「おー怖っ」
凄まじい轟音や空気を弾くような銃声が無数に響き渡り、大雨のような無数の弾丸が船に降り注ぎ、無慈悲な集中砲火を浴びた。
「……やったか……」
煙幕が晴れると、船は全くの無傷、船の周りにはビオラによる〝エーギルの結界〟によって護られていた。
辺りの地面はかなり深く抉られ、今にも土砂崩れが起きそうなくらい不安定に窺える足場となった。
そして砲弾の跡が地面の大量に所狭しとつきながら、それでもアンビティオ号には一切の傷はついていない。
「……ビオラちゃん、際どいな」
ビオラは常に〝エーギルの結界〟を服のように身に纏っているため、ビオラは大事な所以外は完全無防備だった。
「死にたいの?」
「すんませーん死ねませーん」
ちなみにベイルはその結界の中に入っていないため、何とかかわすだけで精いっぱいだった。
「はぁ……はぁ……ふぅ……俺も入れろよ」
「……な……何だと……」
あれほどの数の鉄の雨をくらいながら全て凌いだ一行の姿を見て、兵達は動揺を隠せなかった。
「っぐ……怯むな!!!二陣!!撃てえぇ!!!」
その合図で、先ほど弾丸の雨を降らせた包囲陣の一つ後ろの包囲陣が全く同じ火力で銃弾や砲弾を船に炸裂させた。
「……す……すげぇっす……全部防いだ……」
「このチビホンマにすごいねんな……」
しかしまたしてもビオラの〝エーギルの結界〟は、弾一つ船に触れさせやしなかった。
「……何億発撃とうが、破れないわ」
「いやだから俺も入れろって……」
すると船が無傷である様子を見て声を出していた兵は、焦るどころかニヤリと笑い、右腕を手の平を下に向けて横に開いた。
その合図を見た兵士達は、銃火器の一切を手放し、剣や刀を抜いた。
「効かないと分かったなら、近接戦と行こうじゃないか……進めええぇ!!!!」
「おおおおおおおお!!!!!」
鼓舞され武器を持つ手を空に掲げた兵士達は、地面が揺れるほどに雄叫びを上げ、最も近い包囲陣の兵士達は船に向かって来た。
「今っす!!」
船に数メートルの所まで兵士達が向かってくるとレオキスは共鳴し、兵士達の足と足場を凍らせ身動きを取れなくした。
「ナイスプレーコックさん」
中にはすぐに抜け出す者もチラホラといたが、止まった時点で既に手遅れだ。
ハロドックは呪力を上手いこと使い、レオキスが拘束した兵士達の喉やうなじなど、とにかく首元をナイフでかき切っていった。
ベイルも応戦し、ジリジリと兵士の数を減らしていく。
「ぐはあっ!!」
「おうふっ……」
「がっ!……あ……」
(何だこいつら、1人1人の闘値が軒並み50万超えてやがる……人間じゃねぇし……これがウン十万人いんのか……なるほどな……戦争だな)
ハロドックがそんなことを考えていると、上空にだんだんと黒い雲が広がっていっていた。
「ぐっ……次!!第二」
「ぎゃあああ!!!」
「……な……んだと……」
第二陣へ攻撃の指令を出す直前に、第二から第八くらいまで、クラジューが雷を次々と落とした。
くらった約半数近くが死に残り約半数は動けず、ほんの一部は何とか立ち上がっている状態だった。
「おっほう!強ぇなお前!」
「うるせぇ変態」
「さすがクラジューくん~♪」
「たりめぇだ、お前は俺が守る」
自分とゾーネとの対応の温度差に腹が立ったのもあるが、そんなことよりゾーネが自分を一切見ずにクラジューばかり見てる事に苛立ち、ハロドックの攻撃はややアグレッシブになった。
「うらぁ!!!」
「何だあいつ……」
「クラジューさん……たった数週間前まであんなに弱かったのに……もう闘値は110万ですか……速いですね」
ラルフェウは失った体力を、魔力の供給により回復させ、立ち上がった。
「お前が言うと皮肉にしか聞こえねぇな」
「いえ、さすがベイル様が認めた方だと敬意を払っています」
ラルフェウは今いる向かい側、ルブラーンの外側の山肌に向かい、兵士達を一蹴しに向かった。
「……え……」
しかしそこは、既にキリウスが山の自然ごと焼き尽くし、外側の兵士達は全て灰燼と化していた。
「なんや、今頃お目覚めか」
「……キリウスさんが……全てやったんですか……」
「あのガキに言われたからやっただけやけど……」
(にしてもこの広範囲を1人1人が決して弱くないこの兵力に対して……これほどまでに……それに、全く消耗していない……やはり、キリウスさんは……特等聖戦士にも匹敵するほど強いのでは……)
「何で急に黙んねん」
「あ、すみません……考え事を……」
「なんかよう分からんけど、さっさと終わらへんかなぁ……」
キリウスはまるでチャイムの鳴る10分前に教室に入る生徒のように、それくらい余裕を持って船の方へと戻っていった。
キリウスが右横を通り過ぎた後、ラルフェウは足に触れた黒こげになった兵士の死体を見て、少し気分が落ちた。
顔も判別できない程の兵士を、ラルフェウは何度も振り返りながら、船に戻っていった。
いくら知らない誰かとはいえ、あれほどまでに酷く殺す必要があったのか?と疑問に感じ、しばらくあの死体が頭から離れなかった。
※ ※ ※ ※ ※
危機を感じた兵士達は、ルブラーン内にいる兵士達を集めさせ、増援し、兵力を取り戻した。
「くっそ……うじゃうじゃ増えやがって……」
そう言ってハロドックは前線から突然撤退し、甲板に跳び乗った。
「何をするつもりなの」
「ん?秘密兵器の導入」
ハロドックは甲板で眠っているニコラスを蹴り起こした。
ニコラスは先ほどラルフェウの〝瞬間移動〟の最中に衝撃に備えておらず、普通に壁に後頭部をぶつけ普通に気絶していた。
「い、痛~ってぇな!!」
「よし……行って来い切り札」
「え……ちょ……ぬおおおおろろろろおおああああああ!!!!!?」
そしてハロドックは、右手でニコラスを持ち、真上に向かって思い切りぶん投げた。
「オオオ~レっち飛べねぇんだがわわわわ!!」
「よし、とりあえず見える敵は一網打尽な」
「おあああ!!……ん?……ふ~っふっふ~、そ~ういうことか~…な~ら任せろ!!」
ニコラスはアホみたいに翼をはためかせていた体勢を立て直し、落ちながら直立し、サングラスを外して、ルブラーンや山々全体を見た。
「〝ニコラスビーム〟!!!!!」
その瞬間、ニコラスの両目は赤く光り、その両目から高出力のビームを発した。
その威力は強烈で直撃した兵士達は全員即死し、さらにニコラスは絵を描くみたいにそのビームを出しながら器用に首を動かし、残っている兵士達のほとんどを掃討した。
「……な……」
そんな姿を見て、一行は全員ニコラスの方を見上げた。
ニコラスは翼を器用にクネクネ動かし、手でいう親指を立てたグッドサインを右翼でやり切った感じ満々の笑顔でやってみせた。
「……なんすか……あれ……」
「あれがニコラスの呪力、〝光線〟だ……体中のどこからでもビームを出せる、コントロールが激ムズらしいから今まであのうさぎんとこに預けてたが……完璧だな」
しかし調子に乗ったニコラスは空中で様々なポーズをとり、自分に酔いしれていたため甲板に後頭部を激突して落下し、普通に気絶した。
「……何なんだよこいつは……」
「いやハロドックサンがそれ言ったらもう誰も理解不能っす……」
しかしニコラスが一気に蹴散らしたおかげで、40万人による超巨大包囲陣からは脱出し、ようやくルブラーンへの道が開けた。
一行は正門前まで船を走らせた後、そこからは徒歩での移動となるため、一行は船を降りた。
船を動かすには魔力が必要なため、少しでも消費を抑えるための徒歩での移動である。
ちょうど良いタイミングでリドリーは自力で目を覚まし、ハロドックが蹴ってニコラスを起こし、全員が準備万端の上で、ルブラーン正門前に立った。
「待ってろよアリシア……こっから本番だ」
※ ※ ※ ※ ※
同じ頃、ケイナンは巨大な機械の動く様子を眺めていた。
アリシアはかなり強く抵抗したが、最終的にケイナンは奥の手を使いアリシアを無理やりカプセルの中に入れた。
アリシアがカプセル内に入ると人工呼吸器が取り付けられ、カプセル内は謎の黄緑色の液体で満たされた。
「王、ルナ長官からの報告です……配属された兵士達が、全滅しました」
「……早かったな……やはりハロドック・グラエルは強いな……奴らは?」
「既に配置についています」
「そうか……なら、俺も出よう」
「ご武運を」
ケイナンはゆっくり歩いて、その部屋を出ていった。
───この時、アリシアは夢を見ていた……ベイル達と出会う以前の、過去の夢を……。
次話はアリシアの過去編です。
よろしくお願いいたします。




