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Past Letter  作者: 東師越
第2章 Always "Sadness" in their hearts
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第33話 積み重なる屍

 同じ頃、アンビティオ号内のダイニングでは、アリシア達は食事をとっていた。

 レオキスは島で食料を買い占め、ビオラに急かされ早急に食事を作った。


 「……おいしい」


 「見事な食いっぷりっすね~ビオラサン……」


 ビオラはその小さな体のどこに入っていくんだと言わんばかりの量をペロリと平らげた。


 「特にこれ、1番美味しかった」


 「あざっす!魚と貝尽くしの茶碗蒸しっす!」


 「レオキスさん何でも作れるね……あ、これならリドリーちゃん食べてくれるかも、持って行くね」


 「あ、はいっす」


 アリシアは茶碗蒸しを自分とリドリーの分と二つ持って、リドリーが寝ている自分の部屋に持っていった。


 「───」


 するとビオラの食べる手が止まり、スプーンを置いて、深刻な眼差しを島の中心部に向けた。


 「……どうしたんすか?」


 「……人が……死んでいく……」




   ※ ※ ※ ※ ※




 同じ頃、ドグラはトイレの個室で部下から連絡が入り応答した。


 「何だよ!!!」


 「……何で怒ってるんですか?」


 「もうちょいだったのに萎えちまうだろうが!!!」


 「……何してたんですか」


 「腹いせにお前にぶっかけてやろうか?ウル」


 「帰ります」


 「待ってごめんごめんなさいすいません!まあ後で手とか口で手伝わせるけど」


 「やめてください……それより緊急連絡です、行為は中断してください」


 「はぁ……さっさと話せ」


 ドグラはウルの言う通りにズボンを履き、トイレから出て会場の方へと廊下で歩き出した。


 「今、王女が乗船しているであろう船を発見しました、しかしかなり強力な者がいるため、至急大部隊を編成すべきだと判断します」


 「だろうな、ルナ長官どのが無様に逃がされたくらいの大物だ、発信器は付けたよな?」


 「はい……なっ!!!?」


 「どした」


 「今ランス隊長からキャッチが入りました!リア隊長が暴走寸前、いえ、もう暴走します!止められないとの事です!」


 「んだよそりゃ……」




   ※ ※ ※ ※ ※




 数週間前、キスイウ島支部、支部長室にて、ドグラが赴任する初日のこと。

 ルブラーンを発つ前に、ドグラはランスからリアについての話を聞いていた。


 「病気?」


 「ああ、聞いた事あるはずだ…現在巨大監獄ベルフェゴール最下層に収監されている史上最凶の殺人狂、ルドロ・イーボロも同じ症状だ、数十億人に1人の割合で発症するらしい」


 「……へ~」


 「この症状は一度発症すれば完治はしない……抑制は薬で可能だが、精神状態に大きく依存するモノだから、薬で抑えても僅かな環境の変化や音などでも現れてしまう」


 「厄介だなおい」


 「発症すれば、脳からのあるホルモン分泌量が飛躍的に上昇し、身体機能は最大20倍にもなると言われている」


 「怖ぇ~」


 「そのリアの保護管轄を任されてはいるが、本当に理不尽に発症する、お前も気をつけろ」


 「ほいほい」


 「急性殺戮中毒……簡単に言えば、〝殺戮依存症〟だ」




   ※ ※ ※ ※ ※




 現在に至る、ドグラは走り出して控え室に帰っていった。

 ドグラは少しニヤけて返答する。


 「……そうか」


 「……支部長?」


 「大いに結構、コロシアムも今大混乱だ、加えて殺戮依存症だろ?カオスじゃねぇかおい、どんだけ面白ぇんだよ……」


 「支部長?……支部ちょ!!……切られた……何を考えてるんだあの人は……」




   ※ ※ ※ ※ ※




 「リア!!抑えろリア!!」


 「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすころすころすころすころすころすころすころすコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…はははははははははははははは!!!!あああああああっ!!!!」


 リアは剣を抜き、コロシアムを出て街に戻ってきていた観客を恐ろしい速度で老若男女問わず無差別に斬りつけていった。


 「だああああっ!!!!うあっうひひひひひ!!!!びゃははははは!!!!コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!」


 (ダメだ……速すぎる……それに一太刀の風圧で家一軒が真っ二つに斬れている……なんて研ぎ澄まされた振りなんだ……いや、関心している場合じゃない……何としても止めなくては!!!)


 「らううううああああばばばあああ!!!!」


 「リア!!!抑えろ!!!抑えるんだ!!!」


 リアにはもはや、他人の声など聞こえてはいない、返り血を浴びるごとに快楽で満たされた表情を浮かべ、殺し残しの無いように同じ範囲を何度も何度も斬り刻んだ。


 本能のままに叫び、よだれを垂れ流し、壁や地面にぶつかっても止まらない狂気に満ちるその姿は、まさに獣だった。


 「いいぇえへへへへ!!!!……ええ~?」


 そんな止まる気配は微塵もなかったリアだったが、不気味な笑みは崩さないまま、突然急停止した。


 数メートル足を前に擦り完全に止まってから顔を前に向け、目の前にいたのは、オーラを惜しげも無く放つラルフェウだった。


 「……止まった……誰だ……」


 「……見つかるリスクを負いたくなかったので、ここまで僕自身ナリを潜めていましたが……ここで動かない訳にはいかなさそうですね」


 「ええううううああああ!!!」


 (闘値は1500万前後……常にブレが生じている……安定感が無いということは……爆発的に数値が跳ね上がる可能性もある……島を壊さない程度に、されど気を引き締めて)


 「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスああああああ!!!!」




   ※ ※ ※ ※ ※




 同じ頃、コロシアムには、吹っ飛ばされ気絶しているクラジューを心配し、ゾーネが出てきていた。


 外の凄まじい混乱とは裏腹に、実況や観客達は気絶して動かず妙な空気感が漂っている。


 「クラジューくん……」


 (おいおいマジか、もどかしいまま来たから今あの娘の谷間に顔埋めたら俺は終わりだ……終わりてぇ……)


 会場に入ってきたドグラは、ゾーネを見てまだ若干高ぶっていた性欲をむき出しにしたような目でゾーネを見ていた。


 「だいじょ~ぶかな~……」


 「……なあ、名前なんてんだ?」


 ゾーネの事情と、外の混乱お構いなしにドグラはナンパをし出した。


 「……えっと~、あ、ポメラニアンだよ~♪」


 「偽名ってのは分かってんの、本名言えよ、あ、下の名前だけでいいから」


 「……ゾーネだよ~♪」


 「ゾーネか、いい名前だな、俺はドグラだ」


 「うん……で、なんできいたの~?」


 「お前がかわいいから」


 「……ありがと~」


 突然すぎる事に、ゾーネは表情が固まっていた。


 「……何でキョトンとしてんだよ」


 「……え~っと……いや~クラジューくんいがいからきいたことないからびっくりしちゃった~♪」


 「そうか……じゃ、俺と面白い遊びしようぜー」


 「おもしろいあそび~?」


 「おう、本来ならおっぱいか尻をガッとわしづかみたいが、段階を踏んでまずキス……も早いから、とりあえず肩のマッサージか」


 そう言ってドグラはゾーネの後ろから両手で両肩に触れるとクラジューが突然目を覚まし、天槌ラファールを取り出してドグラの元に恐ろしい速度で飛びかかり、ドグラを槌で殴り飛ばした。


 ドグラは吹き飛ばされ、10メートルほどの位置で耐えた。


 「おお強ぇ……あと、なんか全体的に曇ってきたな、雨降るかもな」


 「てめぇ何勝手にゾーネ誑かしてんだよ」


 「タイプだったからナンパしただけじゃねぇか、何か悪ぃのか?」


 「クラジューくん!だいじょ~ぶ!?」


 「ああ、ちとオーバーワークだったが……ゾーネのおかげで治ったぞ」


 「けど~うちなにもしてないよ~?」


 「お前が心配してくれるだけで万力出せるってもんだよ」


 「そなの~?」


 「……はは、そういうクセぇセリフ……」


 ドグラは服に隠していた双剣の左側を刃が小指側に来るように握り、右側は通常通りの持ち方でクラジューに迫った。


 「吐き気がすんぜ」


 「黙れ変態野郎」


 「へっ、おらぁっ!!」


 クラジューは絶え間ない攻撃を槌でいなしていた。


 「ちぃ……ゾーネ下がれ!」


 「う、うん……」


 ゾーネはクラジューとドグラから少し下がった。それと同時に、全身血まみれのラルフェウが入場口側の客席に吹き飛ばされて気絶した。


 「なっ!……タイミング悪ぃな……」


 「何だあいつ」


 全身フラフラながらも、プット血を吐き捨てて不気味な笑みを浮かべ、リアは会場に入ってきた。


 「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス……あははぁ~あ」


 するとリアは会場に3人に向かって真正面に勢いよく飛びかかっていった。


 「くっ……ん?」


 「……え……」


 リアはクラジューとドグラを通り過ぎ、右手の指を突き立て、ゾーネの腹部を正面から、右手ごと貫いた。


 「……けはっ……」


 「にひぃひっひ~い」


 「……ゾ……ゾーネ!!!!」


 「あちゃー……」


 リアはゾーネから右手を抜き取り、ゾーネは仰向けに倒れかけた。



 ───直後、倒れずに倒れかけた姿勢を保ったまま止まる。



 「……え……」


 するとゾーネは倒れる直前、上体が直角で腕が伸びきり足だけで支えているという奇妙な姿勢を数秒間キープした後、ロボットのような起き上がり方をした。


 「……ゾーネ?……」


 ゾーネの両目は、何の前触れも無いまま紫色に光っていた。




 「排除スル、全テハ楽園ノタメニ」

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