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Past Letter  作者: 東師越
第2章 Always "Sadness" in their hearts
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第23話 人間界最強

 「ヒュドールという言葉そのものは古代言語、アナタにも意味は分かるはず」


 「俺古代言語知らねぇし、そもそも文字読めねぇし……ヒュドールは……どっかで聞いたことあるような……」


 「有名だと思ってたのだけれど……」


 「……あ、分かった、自然族の王か……え?……お前が?」


 自然族の暮らす世界、〝自然郷〟には6つの大陸が存在し、その内5つに各一族が暮らし、橋や船などで繋がっている。


 交流が盛んな中、混乱や犯罪の横行による争いの火種を消すべく、また自然族の象徴となるべく、自然族を統率するため各一族の代表からその中心となる人物を決める伝統が数十万年続いている。


 その象徴、自然族の王を、人々はヒュドールと呼ぶ。


 ヒュドールは各国の政治などには一切関与せず、象徴として自然族の顔となり、絶対条件である絶大な力で戦争の抑止力となり、他種族との力量の均衡も保っている。


 「何か問題でも?」


 「ガキでもなれるんだな~と」


 「……選ばれたのだから仕方が無い」


 「……何に?」


 「〝カミノイノチ〟……アナタもおそらくご存じの〝王証シンズルート〟よ」


 「……マジかよ」


 ヒュドールになる条件は、自然族最強の力を誇ること、先代から認められること、生涯を〝自然郷〟のために尽くす覚悟があること、そして最重要条件が、〝王証シンズルート〟を体に宿せる器であること。


 〝ホシノキズナ〟と同様にそれぞれ名を持つ……自然族の〝王証(シンズルート)〟の名は〝カミノイノチ〟ということだ。


 「10歳に時に……あらゆるモノを得すぎた……呪力、〝王証シンズルート〟、〝死神魂デケム・メア〟……力を得すぎた……」


 「……マジだな」


 本来ならぱ、先代から正式な儀式を経て〝王証シンズルート〟を受け継ぐのだが、ビオラはどうやらいきさつがワケありなようだ……。


 「……少し話を聞いてほしい」


 「断る」


 「ならワタシはこの場で死ぬ、ワタシに……迷いを根付かせてほしい……」


 ビオラは右眼から静かに涙を流した。自身の体内に、ベイルが必要なモノを宿していることを利用し、自身を人質にとった。


 「はぁ……まあ、暇だし……死なれたら困るな、〝死神魂デケム・メア〟持ってるし」


 ベイルの言葉にホッとしたのか、無表情のままではあるが、緊張感は解かれ、肩が少し降り、ビオラは花畑に座り込んだ。


 ベイルもう一度ため息をついて、一応ビオラの話を聞くことにした。


 「……特別だって、言われたことある?」


 「ある」


 「そう……ワタシには特別という意味が分からない…目も手も足も…ワタシを冷たい目で見た人たちには同じだけあった……


 強すぎる力、抑えられない衝動、知りすぎる心、血で染まった肉体、どの感情を表す言葉にも当てはまらない痛み……遠くから聞こえる嘲笑、逃げても逃げても追いつかれる暗闇、ワタシそのものの虚無……アナタにも分かるはず、この気持ち」


 「……まあな」


 「〝死神魂デケム・メア〟は違う誰かの心だって気付いた……その心はこう言ってた…〝助けて〟って……今にも朽ち果てそうなか細く壊れそうな声で」


 「知らねぇ」


 「……それが、ワタシの初めてのトモダチなの」


 「悲しいな」


 うつむき暗い雰囲気で話しているビオラは、顔を前に向け、静かな海を眺めだした。


 「もう800年ここにいる……海は綺麗だし、花は綺麗なまま……」


 「いいのかよ」


 「……何が?」


 「もったいねぇなぁ~、エーギルの結界まで張れてんのに」


 「どうして分かったの?」


 「俺が通れたからだよ」


 「……で?」


 「あんなもの張れるって事は……お前、会ったのか?〝アイツ〟に……」


 「……いえ……これは生まれつき使えるの……誰に会うの?」


 「……いや……生まれつきって……」




 「……ワタシは……器らしい……



 ───創造神アルカヴェルスの」




   ※ ※ ※ ※ ※




 同じ頃、アンビティオ号内。


 「ね~え~クラジューく~んおさんぽしよ~よ~♪」


 「いや……ここ無人島だぞ……またかよ……」


 「い~じゃ~ん♪」


 「俺は街で歩きたいんだよ……ゾ、ゾーネ……と……」


 クラジューはようやく言いたいことは言えるようになってきたが、照れすぎて小声になってしまっている。


 「みせつけたいの~?」


 「そっそういうんじゃなくてだな!……てか!話ならトイレ出てからでもいいだろ!!」


 ゾーネはトイレで座りながらドア越しにクラジューと会話していた。ゾーネはもちろん、用を足すためにトイレに入っている。


 「だって~クラジューくんとはなしてたいけどおしっこがまんできなくて~♪」


 「あのさ、考えてみろゾーネ、この光景端から見たらめちゃくちゃ気持ち悪いぞ」


 「だれもみてないよ~♪」


 「いや見てるから、アリシアが部屋から出てきてこっち見てるから、あ、今ゴミを見る目で見てるから、ゆっくり部屋に戻っていったから!!俺多分あいつの脳内でとんでもない勘違いが構築されてるから!!絶対そうだから!!違ぇからなあ!!!」


 「クラジューくん?」


 「……大丈夫だゾーネ、お前は悪くない、悪いのはあいつだ……はは…俺の不可解なレッテルが増えていく……」


 「だいじょ~ぶ~?」


 「大丈夫な訳ねぇだろ……いや分かる、一時も離れたくないのは分かる!大いに分かる!!だが!!……」


 「だが~?」


 「……そこに……お前がいるって想像……しちまうから……」


 クラジューの気持ち悪い発言は、小声に違いなかったが、ドア越しのゾーネの耳に入るには十分な音量だった。


 「……悪ぃゾーネ……なんかよく考えたら、今すげぇ気持ち悪ぃ事言ったよな……」


 瞬時に頭を冷やしたクラジューの謝罪の返事は、返ってこなかった。


 「……ゾーネ?ごめん、マジでごめん、すいませんでした!!!だから黙らないで!!!怖いから!!!」


 クラジューがトイレのドアの前で全身全霊の土下座をする必要はなかった。ゾーネは怒っているのではなく、クラジューの発言により、自分が如何に恥ずかしいことをクラジューにさせたのか自覚したのだ。


 ゾーネは瞳孔を開き、顔をボンッと真っ赤にして、口元が震えるほど強く閉じ、声にならない声を上げ、変な身振り手振りを個室で1人していた。


 「ちょ、ちょっとまってね……」


 そう言うと数秒後、ゾーネは流してドアを開けた。まだ少し顔を赤らめている。


 「お、おまたせ~……」


 「……な、長くねぇか?……その……小……なんだろ?……」


 クラジューは自分の軽はずみな発言がこの気まずい空気を作ったことに気付かないまま、その空気に飲まれていった。


 「お……おはなししてたら……とまったのきづかなかったの……」


 「な、なるほど……っ!!!?」




   ※ ※ ※ ※ ※




 「……何だ……こ……これは……」


 「リドリーちゃん、どうしたの?……」


 クラジューと同じタイミングでアリシアの部屋にいるリドリーは恐ろしく強い気配を感じ取った。




   ※ ※ ※ ※ ※




 「……クラジューくん……こわいよ……」


 「安心しろ、俺が守ってやる」


 クラジューは半泣きのゾーネの顔を自身の胸に当て抱きしめた。

 全体に向けられた敵意は、どこまで逃げても追いつかれ、全てを絶望に飲み込む大津波のような感覚を、3人は覚えた。


 「……アリシア、逃げるよ」


 「え、どこに?」


 「いいから!!!」


 するとリドリーはアリシアを抱き抱えて船を飛び降り、島の頂上へ走っていった。そしてクラジューもまたゾーネと共に船を出たが、2人は同時に、砂浜に足を止めた。


 「……あ……ああ……」


 近付いて直に見てようやく、アリシアもその巨大な敵意を感じた。


 ───ルナが、一行の前に現れた。


 「はぁ……はぁ……はぁ……」


 「……く……クラジュー……くん……」


 「……んだ……なんだよ……これ……」


 目を見開き、全身から汗を吹き出して呼吸が乱れ、意識を保つことすらも危ういくらいに、それほどのプレッシャーがただ在るだけで絶え間なく溢れ出していた。


 「そいつが、王女だな」


 すると4人の前に傷だらけで意識の無い姿のレオキスが捨てられるように投げられた。


 「……レオキス……さん……」


 リドリーはアリシアを降ろして振り向いた。そこには船から飛び降り4人の方へとゆっくり歩くルナの連れてきた2人の兵士の姿があった。


 「アリシア逃げろ」


 「……でも……」


 「そっちに行きゃあの魔人がいる……しゃくだが、アリシアのためだ」


 「リドリーちゃん、けど」


 「行け!!!!」


 「っ……ごめんね……」


 アリシアはラルフェウのいる方へと全力で走っていった。リドリーとクラジューは武器を取り出しルナに向かって構えた。


 ルナはアリシアが単独で、頂上の方へと走って逃げていくのを追わずに見逃した。


 「ルナ様、よろしいのですか?」


 「この島はセタカルド諸島で最も近い島と島の間が離れている、逃げ場は無い、それにこの近海は鮫の群れがいる、船無くして脱出は王女には不可能だ」


 「では……」


 「ああ……これより、王女以外のこの島にいる者を抹殺する」


 「なっ!?……しかしルナ長官!それをコーゴーが許すとは思えません!」


 「ここは無人島だ、いた方が不自然なんだ……なんなら、全員隠匿罪でその場で殺したといえば王は便宜を図るはずだ」


 「しかし……それでは人間界が本当にジェノサイドに乗っ取られます……お気を確かに」


 「ルブラーンに連れて帰った後に殺せばいい、〝ホシノキズナ〟の力が覚醒した後では遅い……コーゴーの方針はクルエルの血族の断絶だ」


 ルナは人間界の方針を放棄し、コーゴーの方針を優先させた。ルナにとって人間界とは、そこまで重要なモノではないと確証づける言葉だ。


 「……分かりました」


 「……おいおい、王様の犬がそんな事していいのかよ」


 クラジューはどうしようもない、抗えないルナを前に、ただ皮肉を言うだけでも、声が震えて仕方がなかった。


 「……その気配、霊力か……お前も王女の隠匿罪だ、〝妖の里〟への報告も無しだ」


 「俺はあの王女さんが死のうとどうでもいい……それでも殺すか?」


 「ああ」


 「……ゾーネ……お前も一応、力は込めとけ」


 「……う……ん……」


 とはいえ、ゾーネはもう体に力は入らなかった。あらゆる感情が高ぶりすぎるあまり、涙が止めどなく流れている事が分からなかった。


 「っ……うおおお!!!!」


 リドリーはエグゼル化に入り、ルナに正面から向かっていった。何か行動を起こさなければ、ただただ押し潰されるだけだと思い、真っ直ぐに突っ込んだ。


 リドリーは全く動かないルナの背後に回り右から左に首に向かって斧を振り抜いた。

 しかしリドリーの攻撃は空を切り、ルナはリドリーの背後に立っていた。


 「なっ……」


 「貧弱」


 ルナは背後から左手でリドリーの頭を掴み、一瞬で右拳のみ数十発をリドリーの背後から加えた。


 「かはっ……」


 リドリーは大量の血を吐き、ルナは頭を離してリドリーはうつぶせに倒れ、クラジューの方へと蹴り飛ばした。クラジューはリドリーは跳ね返し、レオキスの近くにリドリーは仰向けに倒れた。


 「次は、お前だ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] レオキスくん、いつも可哀想…… [気になる点] 謎が謎のまま脅威となって襲ってくるので、その対立構造とか、それぞれの界の立地や立ち位置が分からず、敵ということしか分からない。 今襲ってきて…
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