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Past Letter  作者: 東師越
第2章 Always "Sadness" in their hearts
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第19話 セタカルド諸島

2ー1 愛する人を護るために

 一行は船を泊め、無人島、ティニフィア島に上陸した。


 この島はセタカルド諸島で最も大陸に近い場所にある無人島(有人島を含むと4番目)で、崖のような岩山が中心にそびえ立ち、平地は草木が生い茂っている。


 ところどころに人里があったような半壊した廃屋や港、荒廃した道や田畑などもある。


「俺!! ふっかあああつ!!」


 ベイルはラルフェウが素潜りで捕らえた僅かな魚や貝を躍り食いし、(気持ち的な意味を込めて)体力を回復させた。


「黙れチビ」


「なぁ~ラルフェウぅ~何このロリコンウザいぃ~」


「俺はロリコンじゃねぇ!!」


「しかし、言い逃れできませんよ?」


 一行はゾーネの無邪気さや首から上の童顔を加味して、そんなゾーネを好いたクラジューをロリコン認定していた。


「どしたの~?」


「……いや、何でもねぇ」


「ラルフェウ、飯は」


「申し訳ありません!! 今から釣り……は道具が無いから、素潜りで!!」


「オレが行くっすよ、凍らせたら余裕っすから」


 レオキスは服を脱ぎ、船に掛けて海へ飛び込んでいった。


 セタカルド諸島は温暖な地域のため、諸島領海には無数の魚類が存在している。


 海に潜ると、澄み切った青い世界に多種多様の魚を初めとする生き物達が悠々と泳ぐ景色が広がっている。


「どこか有人島で食料と釣り道具一式を揃えなくて……」


 ラルフェウは話を途中で途切り、遠くから感じた気配を察知して表情を引き締めた。


「……ベイル様」


「分かってるよ、今回は俺パスな、腹減ってるし」


「分かりました」


「ど~かしたの~?」


 クラジューもまた気配を感じ取ったが、ゾーネはどうやら気付いていないようだ。


「ああちょっとな、お前は俺が守る」


「……うん……なにから~?」




   ※ ※ ※ ※ ※




 同じ頃、アリシアはまだ部屋のベッドで布団をかけて座り、リドリーが側に着いていた。


「……ねえリドリーちゃん」


「どうしたの?」


「……ゾーネちゃんの服、巨人化しても破れないけど、何でかな…」


「そんなこと知ってどうすんの」


「……迷惑だった?」


 可愛い顔で迫られた瞬間、リドリーの中から答えないという選択肢は消えた。


「巨人族の世界、〝巨界ガイア〟では人だけじゃなくて他の生き物も伸び縮みするから、それから作られた布や糸で服とか作ってる、自然族もそれぞれの一族の個性に対応した服を作ってる、多分他の種族も」


「……ありがとう、よく知ってるね……」


「知り合いが博識だったからな……ていうか、こんなの知ったってアリシアに得は無いんじゃないの?」


「……得の無い事しか知っちゃいけないの?」


「何で突然そんな質問するんだよ」


「なんか、2人だけなのに静かなのって、変な感じがして……なんでもいいから、リドリーちゃんと話がしたかった」


「っ……そ、そう……ならなんでも答えるけど……」


 アリシアにとっては何気ない一言でも、その言葉は無自覚にリドリーの心臓を攻撃していた。


 リドリーは嬉しさと恥ずかしさで赤面し、咄嗟にアリシアから目を背けて俯く。


「……どうしてリドリーちゃんは私の事が好きなの?」


 その質問にはすぐ答えられず、言葉を選ぶために少し時間を置いてから微笑んでこう言った。


「あたしはただ、アリシアを守りたいだけ」


「リドリーちゃんにとって守るっていうのは……縛るって事なの? 私は、それは嫌かな……」


「そうか……縛ってたのか……」


 予想外だったアリシアの返答にリドリーはへこみ、またしても俯いた。


「ううん、リドリーちゃんは悪くないの、けど……皆と一緒にいたいけど……リドリーちゃんはそれを嫌がってるみたいな気がして」


「そりゃそうだろ」


「どうして?」


「あたしは、アリシアを自分のものだけにしたいから」


「ものって……」


「ああいや……ものっていうか……アリシアが他の誰かと楽しそうにしてるのが……なんか嫌……っていうか……その……」


 言葉の裏が読み取れないアリシアに、リドリーは慎重に言葉を選ばなければならない。


「あ、もしかして、それが嫉妬ってのなのかな」


「どうかな、どっちかというと独占欲かもね……」


「……そっか……」


「……アリシアは、あたしの事……どう思ってるのかな……」


「──友達……かな……」


「友達?」


「……リドリーちゃんだけなの、私の事見てくれてる人──


 ──ベイルは何が見えてるのかよく分かんなくて、キューちゃんは色々してくれてるけど他人行儀で、レオキスさんはベイル以外は皆を平等に見てる感じで、クラジューさんは私に興味無さそうで、ゾーネちゃんもクラジューさん以外にはまだ心が開けてない感じで──


 ──私自身も、まだ完全に開けてるとは思えない……リドリーちゃんだけなの、話してて楽で、私の目を見てくれる人は」


「……アリシア……」


 リドリーは驚愕の表情を隠せずにいた。


「本で何回も読んだ……こういうのが……友達なのかなって……」


「……はぁ」


 アリシアの言葉がどれもこれもリドリーにとって予想外の言葉ばかりで、思わずため息が出てしまう。


「……ダメ……だったかな……」


「何もダメじゃないよ、最初は友達からっていうしね」


「……な、何が……」


「あたしは本気だから、必ずアリシアは私がいないと生きていけない体にしてあげる」


「不便な体だなぁ、ははは」


「──」


 リドリーは少し楽しげな空気になってきていた中でベイル達と同じく気配を感じ取り、顔を引き締めた。


「……リドリーちゃん?」


「静かに、向こうは敵意むき出しだ」


「分かった」


 リドリーは部屋を飛び出し甲板に出る。


 その直後、リドリーの上空に放物線を描く手榴弾が数個投げ込まれ、リドリーに直撃し全て爆発した。


 何故か甲板には、さっきまでいたベイル達の姿はなかった。




   ※ ※ ※ ※ ※




「隊長、全て命中しました」


 アンビティオ号の後方、かなり離れた海上。


 ケニーを筆頭とした兵士達100数人が乗船する軍艦から、1人の兵士が双眼鏡を覗いて確認した。


 軍艦とはいえ、人間界には進んだ科学力は無い(おそらく)ため帆船で、大砲もそれほど威力も飛距離も無いものだ。


「まあどうせこけおどしなんだけど……無傷か……いやそれより船も無傷というのが解せない……木製、だよな」


 ケニーは自身が投げ込んだ手榴弾が、アンビティオ号の甲板で確かに爆発したのを肉眼を細めて確認した。


「……ちっ、人数が多い上に、個々の力も高そうだな……」


 リドリーは腹部から、原理は不明だが、体内にしまっている片手斧を瞬時に取り出し、己に直撃する前に弾いていた。


「……王女は、匿って当然か…船に乗り込め、王女を発見し次第生け捕りにしろ、いいな」


「「「はっ!!!」」」


 ケニーの合図で100数人の兵士はアンビティオ号に向かって軍艦を進め、激突させてから侵入していく。


 しかし入る直前に船と兵士達の間にある海底の地面が隆起し、四角い壁が出来た。


「通すかクソ野郎共」


「直接地面に体が触れずともあの規模……奴の闘値からは考えられないが……追い打ちが無いという事は、これが限界か」


 兵士達は壁を回って陸に上がり、陸から船に向かっていったり、壁そのものを越えたりして船の侵入を図った。


 しかし先陣を切った兵士達は、謎の衝撃波によりあっさりと吹っ飛ばされる。


「どうも、遅くなりました」


 ラルフェウは〝瞬間移動ワープ〟を駆使して突然アンビティオ号の甲板のど真ん中に現れ、ただ魔力を飛ばしただけの攻撃で敵兵達をあっさり払いのけた。


「あたし1人で十分だ」


「それはどうでしょうか」


「それで、どの部屋かな」


 するとラルフェウとリドリーの背後にケニーが回り込んでいた。


「へぇ、人間にしては速い」


「ぎぃ……」


 リドリーは鋭く強烈な目つきでケニーを睨み、真正面から突っ込み、斧をケニーの頭上から振り下ろす。


 ケニーは剣を抜いて斧を受け止めた。


 鋭い音を鳴らし、僅かに火花が散るほどリドリーは力を込めて振り下ろしたが、ケニーは何くわぬ顔で受け止めていた。


「……受けただけで剣がなまくらに…ただの片手斧では無いな」


「うるせぇ」


 ケニーはリドリーの斧を弾いて、僅かに無防備となったリドリーのみぞおちに右蹴を入れる。


「かはっ……」


「突っ込むだけの獣がいきがるな」


 リドリーは吹っ飛ばされ、甲板の囲いに強く背中を打つも、すぐに立ち上がりケニーに向かっていく。


「バカだねホント」


 ケニーは余裕を持ってリドリーの攻撃を右側に避けてかわし、リドリーの背中を背骨に沿うように斬り下ろした。


「ぐあっ……」


「今の土壁からしてチの一族だな、この島や周辺の土はあまり栄養分が無い、治癒には相当の時間がかかる」




   ※ ※ ※ ※ ※




 一方ラルフェウは、100数人の兵士達を相手にやや押されていた。


(一撃が甘いと倒れない、人間とは思えない堅さと攻撃の重さ……舐めすぎたか……けど全員の闘値が軒並み万を越えているのはおかしい……)


 すると1人の兵士がラルフェウの頭を目がけて剣を振り下ろした。


 しかしその剣がラルフェウの頭に当たる直前に、その兵士は突如倒れた。


「〝全神経破壊ナーヴ・デストロイ〟」


 そしてラルフェウは全身から体内をうねる魔力を体外で矢の形状に形作り、放射し、兵士達がその矢に触れると即倒れていった。


(まさか、この程度の連中にこの技を使ってしまうとは……まあ楽に倒れてくれるから便利ではあるけれど)


(魔人族……こんな所で生き残りに出会えるとは)


 ケニーは後ろからラルフェウの首を右から左へ斬りにかかり、ラルフェウは振り向き左手で剣を握ろうとして軌道を外すも、親指以外の指が切断された。


「ちぃ」


「〝全神経破壊ナーヴ・デストロイ〟」


 ラルフェウは魔力の矢を数発放ち、ケニーを一旦遠ざける。


 ケニーは矢を全てかわし、島の陸に上がって少し間を取った瞬間にラルフェウの指は全て再生した。


「何っ!!?」


「やはり当たりませんか……命中率というか……僕自身の狙撃のセンスが微妙なのかな……」


(おかしい……魔人族の再生力は定評あるが、千切れた指の再生が数秒などあり得ない……再生に特化した様子も無い……何なんだこの男は!?)


「考え事ですか?」


「っ!?」


 ラルフェウはケニーの背後に一瞬で回り込み、思い切り蹴り飛ばして、軍艦から侵入してくる兵士達もろとも吹き飛ばした。


「ぐっ!!……」


「殺されに来たんですか? それとも、いたぶられるために来たんですか?」


「はっ、生意気抜かしてんじゃねぇぞクソ魔人」

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