表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Past Letter  作者: 東師越
第1章 〝死神〟と呼ばれる男
18/711

第17話 愛の心とハニーローストピーナッツ

「あ、お帰りなさいっす……また増えてる……」


 レオキスは出来たてのハニーローストピーナッツを持って甲板に出ていた。


「レオキスお前この人数の胃袋掴んでどうすんだよ、ジェンダーレスハーレム」


「勝手にあらぬ疑いをかけないでくださいっす……出来てるっすよ追加のハニーローストピーナッツ」


「美ん味」


「てめぇ俺のじゃねぇのかよ!!」


「違いますぅ~自分のために注文したまでですぅ~自分の食べたいものを他人に注文させるとか怠惰ですぅ~」


 ベイルはクラジューに向かって、全力のゲス顔を披露しながらハニーローストピーナッツを食べる様子を見せつけ始めた。


「俺の注文するっつったじゃねぇかよ!!」


「知りません~他人に任せてちゃんと出てくると思ったら大間違いですぅ~口約束なぞ幾らでも事実ねじ曲げれますぅ~」


「うぜぇ……」


 そう言ったクラジューはなんだかんだベイルからハニーローストピーナッツを横取りして食べていた。


「うちにもちょ~だ~い♪」


「なら取りゃいいだろ」


「あ~んして~♪」


「はあ!? 自分で食えるだろ!」


「……してくれないの?」


 ゾーネは泣きそうな顔でクラジューに上目遣いをする。


「……分かったよ……」


 クラジューは目を背けながらゾーネの口の中にハニーローストピーナッツを運んだ。


「あ~む♪」


「ちょっ!? おいゾーネ! 指まで食うなって!!」


「おいひ~!! もっとちょ~だ~い♪」


 クラジューはゾーネの口から指を引き出した。クラジューの指とゾーネの口の唾が少し糸を引いていた。


(何見せられてるんだろう私……)


(ハニーローストピーナッツってそんな艶めかしい食べ物じゃないんすけど……クラジューさん甘党なのでしょうか……)


(あ~んしときゃなんでもいんじゃね?)


(ベイル様、直接脳内に話しかけないでください、くすぐったいので)


(あ、くすぐったいとかあるんだ)




「アリシアあああああ!!!!」


 するとリドリーが恐ろしいスピードでアリシアの元に飛び込む。しかしその間に交わしたキスは優しかった。


「ごめんねアリシア、あたしが弱くて守れなくて……アリシアぁ…」


「リドリーちゃん、もう泣かないでよ、大丈夫だから……」


 アリシアは押し倒されながら、リドリーを慰めるために背中をさすっていた。


「こいつは今までどこにいたんだよ……」


「気配を追っていましたが、森中をグルグル回ってたのでおそらく迷っていたかと……アリシアさんの事で頭いっぱいだったせいか、音も気配も感じ取れなかったのでは……」


「え、あいつそういうキャラなの?」


「うちもあ~んしてあげる~♪」


「いやいいって自分で食えるし!」


 ゾーネはいつの間にかベイルからハニーローストピーナッツを手に取っていた。


「おかえしだよ~♪」


「お返しっつーか、あれはやったというよりやらされたというか」


「うちのあ~ん……いやなの?」


 ゾーネは泣きそうな顔で以下略。


「い、い……嫌じゃねぇ……けど」


「はい、あ~ん♪」


 クラジューはしぶしぶながらまんざらでもない顔で、ゾーネの右手の指でつまむハニーローストピーナッツを食べる。


「おいし~?」


「ああ……ゾーネが食わせてくれたからな」


「……え……」


「……あれ? 俺今恐ろしく恥ずい事言わなかったか?」


「……ありがと」


 ゾーネは顔を真っ赤にし、両手で顔を隠した。


「どうした?」


「な、なんでもない……」


「な~さっさと発車しろよキューちゃ~ん」


「しかしベイル様、この船飛ばないですから回り道しなくては」


「面倒くせぇなぁ、俺が上げる」


 そう言うとベイルは船を飛び降り、船の真下に潜り込んで右腕で船を持ち上げる。


「よっ」


 そしてベイルはそのまま跳び上がり、10メートルほどある崖の上に登って船を地面に置くと、ベイルはすぐさま船に飛び乗った。


「さっさと行け」


「はい!」


 アンビティオ号は再びセタカルド諸島に向けて走り出した。




   ※ ※ ※ ※ ※




 それから数時間後。


 場所はセタカルド諸島、キスイウ島にある兵団支部内支部長室にて。


「ドグラ支部長、報告です」


「何?」


 ドグラは椅子に座り、1人の兵士と会話をしていた。


「コロホの街の民衆の目撃情報により王女を乗せていると思わしき陸を走る怪しい船の調査に向かったビレス隊と、先ほどから連絡が途絶えました」


「あっそう、それはまた強い協力者なんだねー……ルナ長官は何か知ってる感じだけど、まあ教えてはもらえないかな……セタカルドの補強は正解だったな、提案した俺の勘が冴え渡りまくってるな~」


「そのようですね」


 ドグラは椅子に座りながら、くるくる回って会話を交わす。


「にしても王も狂ってんな~、俺の遺伝子使って人間共の遺伝子に龍人の情報を加えて強制強化なんてよ、やっぱりコーゴーと違ってジェノサイドはクルエルに優しいな」


「……ドグラ支部長、もう1つ報告が」


「何だ?」


「ルナ・グラエル長官が近日中にセタカルド諸島を訪ねると連絡を受けました」


 その言葉を聞いた瞬間に目の色を変え、椅子を止めて兵士に目を向けた。


「何だ、祭りの警備か?」


「支部の見回りだそうです、数年に一度あるようで」


「あっそう……そりゃ丁重にお迎えしないとな~、20歳くらいにしか見えない面なのに、もう100年近く人間界の長官やってんだ、ご立派だ~ね~」


「……その祭りの警備ですが、どうされますか?」


「あの序列外の2人がやればいいでしょ、近いし」


「しかし王女の件もありますし、例年以上に固めた方がよろしいかと」


「じゃあその日休暇取るわ」


「休暇?」


「うん、祭りを普通に楽しみに行く、その場にいたら上も何も言わねぇだろ」


「そうでしょうか……」


「とにかく取っといてよ」


「……はい」




   ※ ※ ※ ※ ※




 夜も更けた頃、アンビティオ号内。


 クラジューは寝るために空いている部屋に向かったのだが──


「……何でいるんだよ……」


「いっしょのふとんでねたいから~♪」


 ゾーネがクラジューの寝室に来ていた。


「そこは別々でよくないか……」


「なんで~?」


「いや……どう見てもシングルベッドだし」


「くっつけるからいいじゃん♪」


「……ゾーネ、子供がどうやって生まれるか知ってるか?」


「おっきいももからでしょ~?」


 ゾーネは本気でそう思っている、純粋な疑問の表情をクラジューに向けたのだから。


「あ、うん、そうだな……まあいいか」


 とりあえず一度クラジューとゾーネはシングルベッドに並んで入る。


 しかしクラジューは結局ゾーネに背を向け、ゾーネはクラジューの方に向いて寝そべるという形になってしまった。


(ヤベぇ!! 思ったより狭い!! ていうか何でくっついてんだよ柔らかい!!)


 というようにクラジューは脳内で分かりやすくテンパっているが、それ以上にゾーネは頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。


「ね……ねぇ……クラジューくん……」


「おっおう!! な、なな何だ……?」


「……なんかね……からだがね……あついの……」


「え……お……え……」


 ゾーネはクラジューの服の背中側を右手でつまみ、足をもじもじさせて汗もかき、息も少しずつ荒げだした。


 (ちょっえ、何だこれ、体熱いって、え? 誘って……いやいや、いやでもマジで……ゾーネにその気なら……ちゃんと受け答えねぇと……ゾーネが傷つ……)


 クラジューは意を決し、ゾーネの方を振り向いて、ゾーネの両肩を掴む。


 そこでクラジューが見たのは、咳き込み体中が汗でびっしょりで辛そうに呼吸を荒げるゾーネの姿だった。


「……え……おい、ゾーネ! おい!!」


 ゾーネは咳も激しく、クラジューが右手でゾーネの額に触れるとひどい高熱を出していることが明らかになる。


「どうなってんだ……とにかく、水か」


 クラジューはいてもたってもいられなくなって急いで台所に向かうと、そこには明日の料理の仕込みをしているレオキスがいた。


「わっ、なんすか?」


「おい! 鍋寄こせ!!」


「え? は、はいっす」


 クラジューは小さな鍋に水を張り、タオルを持って部屋に戻ってから、濡らしたタオルで額や顔、首元の汗を優しく拭った。


「大丈夫かゾーネ、痛いとこはねぇか?」


「う……ん……おな、か……カホッカホッ!」


「腹だな……ちょっと見るぞ!」


 クラジューはなりふり構うことなく、ゾーネの服をめくり見た。


(目立った外傷はねぇ……けど尋常じゃねぇ熱……腹の痛み……咳も変な感じだ……まさか……)


「おいゾーネ、足は痛ぇか?」


「……う……ん……」


「……間違いねぇ……ザルブかぜだ……」


「い……たい……よぉ……カホッカホッ! うぅ……」


「大丈夫だゾーネ!絶対治すから!」


 ゾーネはさらに苦しがり、クラジューはゾーネの右手を握り締める。


 そんな中レオキスが2人の部屋のドアをノックし、スープの入った器とスプーンを持って入ってきた。


「大丈夫っすか?」


「……何だ」


「やっぱりザルブかぜっすか?」


「何だよやっぱりって……」


「右足引きずってたじゃないっすか、しかもしんどそうだったっすし……オレもザルブかぜはなったことあるっすから、このスープは必要な栄養は全部入ってるっす」


「……1から作ったのか?」


「さっき作ってたスープを作り変えたんす、明日の朝飯また作り直しっすけど、ゾーネサン治す方が大事っすから」


「……とんだお人好しだな……」


「母さん直伝なんで美味いっすよ、少し落ち着いたら食べさせてあげるっす、あ、首元と足はちゃんと冷やした方が良いっすよ」


「……悪ぃな」


 クラジューはレオキスからスープを受け取り、俯いて小さな声で感謝をした。


「いえいえっす、必要なものがあったら言ってくださいっす、氷なら半永久的に造りだせるっすし」


 ゾーネの無事を心から願って笑うレオキスは、部屋を出て静かにドアを閉めた。


「ああいうのもいるんだな」


 それからクラジューは、一時も手を休めることなくゾーネを看病する。




   ※ ※ ※ ※ ※




 数時間後、夜は明け朝日が顔を出す。


 ゾーネはクラジューの看病とレオキスの協力で熱も咳も痛みも引き、今はぐっすりと眠っている。


「……よかった……ゾーネ……」


 クラジューは安心し、ゾーネの手を握りながら椅子に座って眠りについた。




   ※ ※ ※ ※ ※




 昼過ぎになり、ゾーネは目を覚ました。


「ん……ん~~……」


 握られた右手を見ると、そこにはぐっすりと眠るクラジューの姿があった。


 体が楽になったのはクラジューが付きっきりで看病してくれたからだと思い出し、頬を紅潮させて微笑んだ。


「……そっか……ありがと、クラジューくん」


 よだれが垂れだらしなく見えるクラジューの顔だったが、ゾーネにはさらに光り輝いて見える。


 感謝の気持ちを込めたゾーネは、危機から救ってくれた英雄の寝ている頬にそっとキスをした。

 思いのほかデカい船なので、15人分くらいの個室はあります。


 とはいえシングルベッドと収納、1人用の椅子と机があるくらいだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ