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Past Letter  作者: 東師越
第4章 My friend is My enemy
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第108話 あり得ない存在

 「ゾーネ!!!!!」


 クラジューは異変に気付き、急いで急降下するも飛行機はクラジューが上空から降下している間に墜落した。


 「っぐ……くそっ!!!!!」


 クラジューが爆発が起きた数秒後にゾーネの元に向かうと、ラウラは5メートル程巨人化してゾーネを庇い、ファリドは地面から図太い樹の根を数本地面から生やして壁を造りゾーネを護っていた。


 「……お前ら」


 クラジューがゾーネ達の側に降り立つと、ラウラとファリドは急激に力を駆使した事により気絶していた。


 「……5歳?6歳?……忘れたけど、その程度で混血の力は負荷が大きい……よくやった」


 自分の子供には微塵の興味も無いクラジューは子供の年齢すら覚えていない。


 一行、主にハロドックやゾーネからも冷たいとは言われてきたが、ゾーネを何よりも愛しているクラジューにとってこの双子は邪魔な存在なのだ。




   ※ ※ ※ ※ ※




 同じ頃、王宮から少し離れた北側に数十人の男達がパラシュートで降下してきた。


 「それは……異名ですか?」


 「ああ……それもジェノサイドの最高幹部だから実力は当然折り紙つき……闘値8億だ」


 「マ~ジか」


 大男、ヤドルモを先頭に男達はジリジリと一行の前に歩み寄る。


 「いよいよ本腰入れてきたなガービウ……これ一件落着したらコーゴーも動いてくる、ルブラーンには当然いられなくなる」


 「……やっぱ気ままな旅が俺には向いてんな~」


 向かってくる男達を右手の人差し指の側面を眉につけて遠くを見る仕草をするベイルがそう言うと、バニルが立ち上がりベイルの元に歩み寄った。


 「あの……」


 「なんだよ」


 「……わっ……私も……戦います……」


 バニルは瓦礫から誰のかも分からない剣を拾い、何年何十年と鍛錬してきたと思わせるほどに違和感なく自然体な構えをみせた。


 「……何のために」


 「じっとしていられません……この現状を目にして、私にも何か出来る事が無いか……そう考え、出た結論です」


 バニルの眼差しは鋭くなり、強者ならすぐに理解出来るほどに洗練された無駄なく初見でそう思わせるオーラを放つ……強い、と。


 当たり前だが死んだバニルとは全く違う、ベイルはその全く同じと思わせるような容姿と唯一愛した者と重ねて見てしまい、戸惑いを感じてしまう。


 「……目の当たりにしないと動かないのな」


 「当たり前です、私はスーパーヒーローじゃないので、自他共に認める偽善者なので……目の当たりにしないと助けたいと思いません」


 「……まあ何もしねぇよりはマシか……行きたまえ」


 「え?……いいんですか?」


 彼女が何者なのかを知るには、闘う姿を見れば分かると思ったベイルの判断だった。




   ※ ※ ※ ※ ※




 8メートル程の巨躯のヤドルモや続く男達男達はパラシュートを外し、ヤドルモは5メートル近い大剣を右手だけで構え、男達は様々な銃火器を持ち構えた。


 「奇襲は戦闘の基本、当然宣戦布告なんて馬鹿な真似はしねぇ……〝巨界(ガイア)〟での失態から学び、前時代的ながら火をふんだんに使うに結論付けた……しかし」


 ヤドルモ達は王宮跡に立つベイル達と10メートル程離れたところで足を止めた。


 「やはり最警戒はハロドック・グラエルか……他はまあ楽勝だろうが……ベイル・ペプガール……キング程弱体化していても、ハロドックと同じくらいの警戒は怠らないことだな」


 するとヤドルモは一歩前に立ち、大剣を地面に突き刺した。それを見た男達は銃の構えを解いた。


 「俺はジェノサイドの最高幹部!!〝暴竜〟ヤドルモ・ナダラだ!!俺達の要件はただ1つ!!〝ホシノキズナ〟継承者であるアリシア・クルエル女王の身柄を渡して貰おう!!さもなくばこの焦土をさらに血で染め、鉄槌を下すまでだ!!」


 すぐに攻撃姿勢に移せない事を示してから降伏宣言を促す大きく野太いヤドルモの声。


 当然目の前の一行達全員に聞こえており、攻撃姿勢は示してなくとも敵意はむき出しなオーラをひしひしと伝えるヤドルモ達。


 一行側に全面衝突で勝機が無い訳では無いが、普段世に出ず、ハロドックですらも情報が不足している最高幹部を相手に緊張状態は解けない。


 「て~っ槌って、別に罪は犯してねぇだろ~?」


 「アリシアはあたしが護る」


 「ま、そりゃ応じねぇよな……こんの荒くれ集団が……嫌いじゃねぇけど」


 特にヤドルモの言葉に答える事無く、緊張感を保ったままニコラスとリドリーは考えることはバラバラでも意思は一致している。


 ハロドックは苦笑いしながらおおよそチームワークの無い一行の意思を尊重し全員が無言の圧力をかける。


 1人1人が色や形が異なるものの強大で特徴的なオーラを放つためにヤドルモ以外の男達はやや気圧される。


 「……我々と戦うという事は、ジェノサイドを完全に敵に回す事になるが……いいのか?」


 「どうする?」


 ベイルはアリシアの元に向かい質問を発する。


 「……分かってるよ」


 「アリシアさん……」


 アリシアは丸腰でヤドルモのオーラにも屈する事無く見事な立ち姿を一歩前に出て見せる。


 そこにいたのは自身の知らないアリシアだったためにラルフェウは驚き開いた口が閉じない。


 「私はあなた方の味方になるつもりは元よりありません、まして人々を無差別に虐殺するような連中に味方するほど堕落していない……


 ……そして、たとえどのように脅そうとも、私が……私達が恐れる事など、絶対にあるものか!!!!!」


 力強く発した言葉の一言一言には揺るがない確かな信念が宿されており、その覚悟を受け止めたヤドルモは遠慮無く剣を抜き戦闘態勢に入るもの


 「うるさい女王だ」


 「アリシアさん……あんな感じでしたっけ……」


 「いや、ずっとあんな感じっすからあまり驚かないっす……」


 ラルフェウはその驚きをアリシアと同じく丸腰レオキスに話すが、眠っていたラルフェウと違い毎日のように見ていたため驚きは無いようだ。


 そしてそれは他の一行も同じく、リドリーはその姿を見て我が子の成長を喜ぶみたいにフッと微笑んでいる。


 「……では皆さん、あとはよろしく!」


 「お、おう……」


 アリシアは振り向き、笑って戦闘を一行に丸投げした。


 「バニル、お前があのデカいのとやれ」


 「っ……は、はい……」


 ベイルはバニルにそう言い、2人は先陣切って前に出た。


 「ベイル様が直接なさるんですか?」


 「おう……実はな、この前何気にアリシアの心読んだんだけどよ」


 「そんな本屋で立ち読みするノリで私の心読まないで」


 実際貿易が盛んになったルブラーンは娯楽も増え、書店では人々の立ち読みの横行に悩んでいる。


 「ベイルって強そうに見えるけど、実は本気をさらっと流したように見せるのがすごいだけなんじゃね?ちょっと触れただけで倒しちゃうのはすごいけど、実際よく分かんないし、ちょっと力使うだけで爆睡して爆食いして燃費悪いし、なんなら覚醒した私より弱いんじゃね?ザコ専なんじゃね?


 ……的な事ほざいてました」


 「そうなんですか?」


 「アリシアがんな事言う訳ねぇだろチビナス」


 「うん一部俺解釈あるけど、あらかたノンフィクション」


 「あははは……まあ……うん……」


 実際にベイルは全盛期の威力のまま技を繰り出すため燃費が悪いのも致し方ない。


 しかしアリシアが見たベイルとは実際その通りであり、強大な敵を倒したという実績も見せていない。


 「だから俺は堂々とアリシアの前で、俺の力を見せつける!!周りの奴らは全部俺がやる!!」


 「結局ザコ専じゃねぇか!!!」


 この10年で燃費の悪さは解消され、威力の調節や自身の力の底上げなども図り、今ではベイルの闘値は2000万近くまで上昇していた。


 これまで何もせずともどうにかなっていたが、ケイナンとの戦闘で己の弱点が露呈し真面目に改善に取り組んだのだ。


 「しかしハロドックさん、周りの方々もギュートラスなどの10年前の幹部クラスほど強いですから、ザコではないと思います」


 「だとしても!!ヤドルモやれよ!!バカすぎるだろ!!バニルちゃんもそう思うだろ!?」


 「私がやります!!」


 「何でやる気満々なんだよ!!」


 「アリシア見とけ、俺がいかにヤベぇ奴なのかな」


 「……多分印象変わらないと思うけど……うん……」


 するとヤドルモは大剣の切っ先を一行達に向け、それを合図に男達は再び銃を構えた。


 「ファイア」


 ヤドルモの一声で男達は一行に向かって銃を乱射し始めた。


 その銃はどれほど鍛え抜かれた体でも貫いてしまう、世界最固の人工物質キブニウムが含まれた弾丸だった。


 しかし全ての銃弾は本来の軌道を外れてベイルに引き寄せられ、ベイルの手前で弾は空中で止まり、何百発ものの弾がベイルを壁のように囲んでいた。


 「行きますっ!!」


 するとバニルは剣を両手に構え低姿勢で恐ろしいスピードで一直線にヤドルモに向かっていく。


 周りの男達は銃で対抗するも、全て銃口から出た瞬間に勢いは失せ、ベイルの元に引き寄せられていった。


 「はああっ!!!」


 バニルはヤドルモの右側を通り過ぎ、ヤドルモの腹部はクロスで斬られていた。


 しかしヤドルモには一切傷が入る事無く、量産型のその剣はこの衝撃でやや欠けた。


 「まあ、この程度だろうな」


 (っ……やっぱり剣、しかも量産型では私の型だとスピードとパワーが伴わない……切れ味も悪いし、しなやかさも無いし、握りにくい……やっぱり刀じゃないと……)


 「それで終わりか!!」


 ヤドルモは背後に振り向き、鈍さを微塵も感じさせないスピードで大剣をバニルの左側に大振った。


 即座に動けなかったバニルはかわす事が出来ず、剣を両手で持って受けに入った。


 「っぐ……うあっ!!……」


 しかし剣はあっさりと折れてバニルは力で押し負け、物凄いスピードで吹き飛ばされてシェルターに直撃した。


 「……やっぱ無理か」


 「前のバニルちゃんとは明らかに違うな……天真爛漫さとか、戦闘能力の高さとか……あとおっぱいのデカさと張り、半端ねぇ」


 もはやハロドックの下ネタには誰も突っ込む気は無い、そして誰もがこの状況下でも下ネタが言えるほどに心の余裕を持つハロドックのすごさもまた理解している、不本意ながら。


 「伊達じゃねぇのを見せる前に、俺の呪力を公表しておこう……俺の呪力は〝全能(オール)〟……例外2つと〝五聖〟3つの呪力を除く全ての呪力を使う事が出来る」


 「……なっ……」


 「嘘だろ……」


 嘘偽り無いからこそ、その言葉と真実味のある呪力を目の当たりにして怖じ気づくヤドルモ以外の男達。


 「いつ聞いてもヤバすぎるっすよそれ……」


 「と~う値低いのハンデにならねぇもんな~」


 そしてレオキスやニコラス、それ以外の一行も知っててなお圧倒される。


 「さらに!複数持ちの俺は……その例外2つの内の1つを保持する、そっちはまあお楽しみとして……この世に存在する呪力の99.99%使える」


 かつてクラジューが一行に加わって間もない頃にラルフェウに言った、ベイルが呪力複数持ちという言葉。


 これは〝全能(オール)〟があらゆる呪力を使えるためにそう受け取った勘違い、ではない。


 同じく複数持ちだと自覚しているクラジューだからこそ分かっていた、ベイルは本来〝あり得ない〟はずの……呪力複数持ちだ。


 「無~敵じゃねぇか……」




 呪力で判明していることは数少ない……個人に特異な能力を発現させ、その代償で人の成長及び老化が止まる。


 身長も髪も伸びないし老ける事は無い、体内の細胞に呪力のエネルギーが干渉しそうさせているという仮説がある。


 しかし呪力を持っていても生殖活動は可能で、体重の増減もある……ひとえに成長及び老化が止まると言えば矛盾だらけとなる。


 しかし立証され判明していることは、呪力はウイルス等の外的要因ではなく個々の生命エネルギーが根源だという事だ。


 当然個人が保持する生命エネルギーは一通りのためそこから生まれる呪力もまた1つだけなのだ。


 故にあり得ない、2パターンの生命エネルギーを1つの体に宿すしか方法が無い呪力複数持ちという現象は、仮説上あってはならないものだ。


 つまりベイルとクラジューは、呪力という括りだけなら既に生命体の域を超えた別次元の何らかという事となる。




 「まあもう1個は条件揃わねぇから使えねぇけどな」


 喋りながらベイルは指をならし、ベイルの前に集まった弾丸が全て男達の銃口に銃と同じ速度で入り、器用に破壊して武器類を使用不能にした。


 「くそっ!!!」


 すると後方から10数発のバズーカやミサイルが発射されるも、それらは全てベイルに直撃する直前にナスに姿を変え、ベイルの手の内に吸い込まれ手に取った。


 「普段呪力使ったらすぐ終わるけど、今回はわざわざ回りくどくしてみましたー」


 そしてベイルはブラックホールみたいにナスを飲み込み、右手の親指を下に立てた。


 すると男達の後方から突如1人に対して10本の、計数百本の槍が突然放たれ一斉に倒れた。


 「……すごい……」


 これには思わずアリシアもベイルの力を認めざるを得ない……力の大きさではなく、大きな力の完全支配をだ。


 「───俺の前に立った時点で、既に俺の支配下なんだよ」

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