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Past Letter  作者: 東師越
第3章 ホシノキズナ
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第97話 樹の上で

 ルブラーンに大きな衝撃をもたらしたハロドックとルナの激突、その激突の最後の衝撃が起きた方へとレオキスは気になり駆けていった。


 そこには顔に黒い布をかけられたルナの遺体と、その側で俯きあぐらをかいて座るハロドックの姿があった。


 「……いやいやいいって、別に気に病んでる訳じゃねぇから」


 ハロドックはその姿を見て察し、戻ろうとしたレオキスを呼び止めた。


 「……いいんすか?」


 「……お前の事は気になってた……ジェノサイドが血眼になって探してんだから」


 それでも善意で去ろうとするレオキスを食い止めたのは、ハロドックのレオキスの存在を知っていた情報だった。


 「……どうして分かるんすか?」


 「お前が素性を言えば言ってやるよ」


 「……今の無しっす」


 ハロドック自身も全てを知っている訳では無く、今優しくされる事が胸いっぱいのハロドックの心に少し堪えるため茶化してレオキスを完全に引き留める。


 「っははは……楽しいだろ?追われる身って」


 「いや、そんなこと無いっすよ……」


 「そうか?っははは!……あ~あ……いつになっても慣れねぇなぁ……死を受け入れた奴を殺すのは」


 「……それじゃまるで、虐殺は良いって言ってるみたいに聞こえるっすよ……」


 「……ま、そういうことだ……」


 「───」




   ※ ※ ※ ※ ※




 ハロドックとレオキスが対話する数十分前、地下最下層15階にて、ベイルとニコラスがケイナンの前に現れた。


 「……すげぇなこれ、クソでけぇ」


 最下層であるこの15階のみ天井は30メートル近くあり、面積も300メートルほど、14階との間にキブニウムが多分に含まれた装甲が30枚も貼られている。


 その30枚の内の18枚は後にハロドックとルナの激突により破られた。


 ベイルとニコラスの右側には部屋の半分を埋め尽くす程巨大な機械が稼働しており、その機械のケイナンの左側の側にあるカプセルには口に呼吸器が取り付けられているアリシアが眠っていた。


 「な~にしてんだ?」


 「お前らに話す意味は無い」


 「〝ホシノキズナ〟を自分に移すのか、へぇ~……」


 「……やはり無駄だったか」


 心を読むという力はその性能はかなり高いのだが、ベイルはほぼエネルギーを駆使することなくケイナンの心を読み取り、その企みを瞬時に知る。


 「何で俺を出し抜けるとか思ってんの?」


 「さすがベイル・ペプガール……何故今まで台頭してこなかったのかが不思議でたまらない」


 「な~ら壊せばい~んだな~、〝ニコラスビーム〟!!!」


 ニコラスは躊躇う事無く機械に向かって、ルブラーンで数万の強化された兵達を退けた両目からビームを放った。


 しかし機械は壊れるどころか傷一つ付かなかった。


 「ば……ば~かな……小~いさい島なら消滅させんのに……」


 「茶番は終わりだ」


 そう言ってケイナンは胸ポケットからボタンが1つだけの小さなリモコンを取り出しスイッチを押した。


 その瞬間アリシアが眠るカプセルとつながる機械が触れていない床が突然消えたかのようになくなり、2人と1羽はさらに地下奥深くへと落ちていった。


 「ど~うなってんだよおおおおお!!!!!」


 「おいニコラス」


 無駄だと分かっいても両翼をはためかせながら叫ぶニコラスに、落ち着きを見せるベイルは普通に話しかける。


 「な~んだよ!!!」


 「お前は残れ」


 するとベイルはニコラスの右翼を右手で掴み、機械に向かって思い切り投げ放った。


 「のわあああああああああああ~!!!!?」


 そしてニコラスが抵抗も出来ず機械に頭を激突した瞬間に床が再び現れ、ベイルとケイナンは完全に閉じ込められた。


 落ち始めて約10秒後に、2人はルブラーン程ある巨大な空間に降り立つ。


 降り立った地は人工でもなければ、土や砂、岩といったおおよそ地下空間にあるとされる感触は無い。


 「……なんじゃここ」


 「……7つの世界の中心であり、各世界を行き交う者達の架け橋となる守護神の加護を受けし場所、ウーヴォリンの神樹林……


 ……その中心にそびえ立つ約5000メートルの全ての世界を支える樹〝神樹ウーヴォリン〟……その樹と通じ、7つの世界にそびえ立ちエネルギーを循環させる樹、天樹……


 ……そしてここ人間界に在りし天樹の名は───ルブラーン」


 「何の話だ」


 かつてビオラが暴走により殺めた者に、天樹エーギルを名乗る者がいた。


 天樹とは、神樹ウーヴォリンが流す自然の恩恵を受け取り各世界に広げる役目があり、天樹は7つの世界にそれぞれ7本ずつそびえ立っている……はずだった。


 「そして約5000年前……神の意志に背き天樹ルブラーンを切り倒し、根を地に埋め当時のイメア王国を建国し、この地を首都ルブラーンとし王となり〝ホシノキズナ〟を初めて覚醒させた〝初代〟クルエル───エリス・クルエル」


 「長ぇな……」


 「俺はクルエルの意志を継ぐ───この世を、ジェノサイドのモノに」


 ケイナンの目的はアリシアの肉体に宿る〝ホシノキズナ〟をあの機械で人工的に抽出し、それを自らの肉体に宿らせジェノサイドの元に下るという魂胆だ。


 「……いや、お前の中で勝手に繋げんなよ俺は理解追いついてないぞー」


 アリシアでは覚醒は不可能だとみたケイナンが全世界にとっての最悪の切り札である〝ホシノキズナ〟を覚醒させ、その上でガービウ・セトロイをフィクサーに傀儡政権となる……


 ……そして〝ホシノキズナ〟と人間界という強力なカードを得たガービウ・セトロイはジェノサイドの拠点を人間界に移し、目的を果たす……。


 500年前、人間界の発展と進化を望んだ王族の王子はガービウ・セトロイの行く先を夢見、ジェノサイドの手によって人間達の自由と平穏は奪われることとなるだろう。


 「お前は何をしにここに来た?それこそ不可解だ」


 「……ちょっと用があるんだよ」


 「あいつにか?」


 「いやいや違う違う、〝ホシノキズナ〟だよ」


 ベイルもまた己の野望のために〝ホシノキズナ〟が必要不可欠であり、それを宿すアリシアを取り戻しに来たのだ。


 これによりベイルが勝利を収めたなら人間界の平穏は脅かされずに済むが、そんなことはどうでもいいベイルは己の野望のために戦う。


 そしてアリシアが〝ホシノキズナ〟を覚醒させたならば、野望への道が切り開かれるだけでなく、ハロドックの全面協力を得られるのだ。


 覚醒という利害の一致もあり、なおかつ全ての世界中に顔が知れており、また戦力としてもベイルが得られるモノはこの男1人でかなり多い。


 またケイナンもベイル・ペプガールと継承者のアリシアを殺せばコーゴーからも信頼が得られる。


 さすれば人間界はジェノサイドの蔓延る地ではなく、貿易により中和が保たれて人々の平穏は護られる。


 つまりこのケイナン・クルエルという男の一挙手一投足に、全世界を揺るがしかねない命運が込められているのだ。


 「戦えんのか王様さん」


 「それはこちらのセリフだ、お前の力で俺にかなうのか?」


 天樹ルブラーンの幹の中心で10メートルの間を置きながら、ベイルは両拳を握りしめ、ケイナンは特注の剣を抜いて構える。


 億を超えるケイナンの闘値と万にも満たないベイルの闘値と数値上では優劣ははっきりと付いているが、その絶望的な差を埋められるだけの自信をベイルは持っていた。


 「……お前は何を懸けられる」


 ベイルは強さや大きさは小さく弱々しくも、何よりも禍々しく色濃いオーラを放ちながらケイナンに殺気に満ちた眼差しを向ける。


 「懸けるまでも無い、すぐに終わる」


 「中身のねぇ奴だな……俺はアリシアを救い出す、お前を倒してな……そのために俺は命を懸ける」


 「そんなことで懸けられるお前の命の安価さは笑えるな、セールでもやってるのか?」


 「はは……俺は弱ぇからよ……命以外に懸けられるモンがねぇ訳さ……だがそれでいい……


 ───弱かろうが愚かだろうが、括れる腹と懸けられる命を持ってりゃ、誰にも負けねぇんだよ」


 オーラは渦巻くようにベイルを纏い、ハナから既に限界を超える力を持って、言うとおり命を懸けて臨むベイル。


 その姿を見たケイナンはいつの間にか全身に鳥肌が立ち、小刻みに震えているのを確認した。


 (……そうか……体は本能的に分かるのか……こいつとは闘うな、と……確かにあのオーラの異質だけならガービウ・セトロイにも匹敵する禍々しさ……)


 「〝爆炎波動(インフェルノ・インパクト)〟」


 するとベイルはエネルギーを集約した右手の平をケイナンに向け、自身の前方の広大な空間を埋め尽くす程に強大な火炎を放つ。


 棒立ちながらも腰を入れたベイルはその攻撃の威力に吹き飛ばされる事無く、後方に10数メートル足を擦っただけに留まった。


 ルブラーン程に大きな都市でも一発で焼け野原と化せそうな程の火力と破壊力を持った攻撃をモロに受けたケイナンは、両腕を体の前でクロスして直撃を防いだ。


 それでもある程度のダメージはくらっているが、ケイナンにとっては大したダメージでは無い。


 「……っ!?……」


 ケイナンが目を開くとベイルは姿を消しており、ベイルは既にケイナンの背後を跳びかかって殴りにかかる。


 ケイナンは咄嗟に体を反応させ剣でベイルの右拳を受け止め、そのまま大きく振り払ってベイルを壁に激突させる。


 そして動きの止まったベイルの胸を一閃、迷い無く心臓を突き刺す。


 だがベイルの体からは血も出ず傷も表れず、ケイナンは肉を刺した 手応えが全く無かった。


 つまり剣を透過させた体のベイルは一瞬動きが鈍ったケイナンの腹部を10数発ジャブのように四肢で殴り込み、回し蹴りで直線に吹き飛ばす。


 ケイナンは異様な気配を察知し剣を地面に刺して食い止まるが、左腕や右ふくらはぎは全く目に見えない透明さで張り詰められた糸によって切れていた。


 そのスキを逃さずケイナンのみぞおちを右拳で殴り上げ、突如ベイルを周りに表れた先の鋭利な武器の数々が表れ、先端がケイナンの方を向いたままベイルが右手を上げると一斉に発射された。


 「っ!?……」


 100近い数の武器が自身に向かって放たれたケイナンは、落下しながらも剣で全ての武器を弾き飛ばしベイルの前に着地する。


 「……恐ろしい力だな……」


 「───俺の呪力は〝全能(オール)〟……残る〝五聖〟4つと例外2つを除く───全ての呪力を使う事が出来る」


 「……やはり……俺と同じ〝五聖〟の呪力か……」

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