16、聞こえる耳
ウチの子自慢をまた書く。
ウチにはあす君という超音感の良い子がいる。多分、私よりもずっと音感が良い。
あす君は何でもハモる。
一度曲を聞けばだいたい覚えるので、次に聞くときにはもうハモりを入れられる。
雀ちゃんが学校で習ってきた合唱曲を歌っていると、次の回からはもうあす君がハモりを入れている。でも、オリジナルハモりなので、合唱曲とは微妙に違うらしい。
そこで、学校から楽譜をもらってきて、私が伴奏してあげると、音楽室のように子どもたちが集まってきて、歌い始める。
とても楽しい、家族の時間である。
あす君にどうやってハモりをつけるのか聞いてみると
「僕は倍音が聞こえるから、そのとおりに歌う」
と言う。
倍音が聞こえる耳。
これは普通、訓練しないと聞こえてこない。いや、本当は聞こえているのだけど、それを意識するのは難しいし、意識して聞こえたところで、その通りに声を出すのもとても難しい。
私たち音楽家は、技術として訓練してできるようになるけれど、あす君はそれが自然とできる、なんとも羨ましいヤツだった。
ああ、うらやましい。
うらやましい。
母の心の声は、あす君には聞こえるだろうか。




