表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いきなり音楽教室  作者: marron
3-18歳(私)編
100/200

25、しっかり歌いなさい



卒業式のすぐ後に、卒業演奏会というのがある。

卒業生のうち、成績が優秀だった人だけが出ることのできる、栄誉ある演奏会だ。



高校3年の2月の卒業試験で、何を歌っただろうか。


試験から一週間後、Y先生が

「マロン、大変~」

と、やってきた。

「卒業演奏会に出られる!?」

レッスン室で、私だけが腰を抜かしそうになった。

友だちは誰も驚かなかった。

卒業演奏会に出られる声楽科の生徒は4人。私はその4人目になった。


いつもは和気あいあいと仲良しこよしでやっている仲間だから忘れていたけれど、この高校は普通の高校じゃない。実力が全ての学校だ。

そんな中で、成績の悪い私のために昼休み返上で勉強を見てくれた友だちがたくさんいた。

いつの間にか私は、人の世話になりながら、その人を蹴落としていた。

嬉しさと申し訳なさが入り混じる、複雑な気持ちになった。

だけど、誰もそのことを言わなかった。ただ

「よく頑張ったね」

と、言ってくれた。


ビリっかすで入学して、声楽科というにはお粗末な歌を歌い、ピアノも弾けず、みじめな思いをずっとしていたけれど、それでもやってこられたのは、優しい友だちがいたから。

その友だちは皆、私の頑張りを見ていて認めてくれていた。


「出られない人に失礼にならないように、しっかり歌いなさい」

Y先生の言葉は重かった。

感謝と決意を胸に抱いて、これが私の、演奏家としてのスタートだった。



お読みいただきありがとうございます。

私編はこれにて終了です。

次話からはまた、ピアノ教室の話をしていきたいと思います。

よろしかったらお読みただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ