もう謝るしかない(お題:残念な小説の書き方)
書きかけの小説があるのに、新しいネタが浮かんでしまってそっちを書き始める。そうしていると違うネタが浮かんで、書きかけの小説を放り出したまま、また違う小説を書き始める。
一つも完結させられないまま、書きかけの小説ばかりが増えていく。
言い訳しか浮かばない。
これは小説なのか実体験なのか。
「なんだっていいじゃないの。書きかけを他人様に見せなければいいんでしょ! 完結したものだけを晒せばいいじゃない」
部長に怒られた。
「完結したものがないんですう」
僕は自嘲的に笑う。
「だったら、い・ま・完結さ・せ・な・さ・いよ!」
部長が僕の制服のネクタイを引っ張って吊し上げる。
喉がしまって「苦しいです。やめてください」とも言えない。
このままあの世に行ってしまえば楽になるかな。
そう思っていたのに、部長はトドメを刺さなかった。
「センセイが逃げ出しちゃったんだから、あんたがなんとかしなさいよ」
部長が無茶ぶりする。
「僕の仕事は小説家ではありません」
そう、僕の仕事は編集者。作家に逃げられた編集者。文芸部出身の文章模写だけがやたらに上手い編集者。作家の家に散乱する原稿をかき集め、小説の欠片を拾い集めて仕立て上げろと部長が命令する。
そんなこと、できるわけないだろう。
「大丈夫! あんたはコピペの神だから」
編集部に二人きり。
嘘っぱちの原稿を仕立て上げれば特別報酬を出すという。
展開に困ったら、SFかエロで落とす。
それも残念な小説の書き方。書き方が残念でも読んで面白ければそれでいいのだ。
面白くなければごめんなさい。
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