表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

足りない方が(お題:興奮した僕)

 僕の部屋の電話がなった。初めての一人暮らし。入社して地方の営業所に配属が決まり、故郷を離れた。

 高校生から付き合っていた彼女を故郷に残したまま。

 引っ越し準備で電気よりもガスよりも、まずは電話回線の契約をした。


 それから半年。


「どう? 慣れた?」


 彼女の話し始めは、いつもその言葉で始まる。


「まあまあかな」


 僕の言葉も同じ。

 それからは他愛もない話。誰に聞かれてもはばかることない話題。

 それらが尽きると始まる。


「しよ?」

「なに?」


 ふふ。彼女の漏らした吐息が受話器から漏れる。その熱さまで伝わるようだ。

 吐息と嬌声。

 僕らの密かな時間。

 僕は受話器を片手に、空いた方の手で熱いものを握りしめる。

 相手の顔は見えない。ただ想像するだけで。彼女の切なげに喘ぐ声を聞きながら。


 携帯電話がない頃。撮った写真は現像に出さなければ見られない頃。


 不便だったけど、足りないものを妄想力で補完していた。




 いま、スマホの画面をオフにしてベッドの脇に置く。待受画面はいろいろ遍歴を重ねたあげく、今は青一色。あの不便だった頃の興奮した僕を思い出し冷めた棒を奮い立たせる。


「ねえ」


 妻が一声啼いた。声をきき、やっぱり僕は興奮した。




文字数:541字

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ