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セイコウ報酬(お題:安いピアニスト)
ボーカル(女)はいる、ドラム(女)もいる、ベース(男)もいる、ギター(男)が入院した。
調子に乗ってバイクに乗って滑って転んだ。
文化祭まであと一週間。一体どうするつもり?
高校の音楽室で三人で頭を抱えた。
ギター無くてもなんとかなる、なんて思えない。
ギター(男)は四人の中で一番上手かったので、メロディーラインのハッキリした曲を選んでいた。
「今から募集かける?」
練習時間も考えるとかなり厳しい。
でも無理と口に出したら終わってしまう。
あー、うー、うなり声をあげているだけで日が暮れた。
「おまえら、いつまでやってんだ? そろそろ鍵をかけるぞ」
さえないメガネの音楽教師が音楽室に顔を出した。
毎日毎日この時間になると現れる。
三人は顔を見合わせた。
「せんせい!!」
ボーカル(女)が掴みかかる。
「なっ、なんだよっ」
文化祭は無事に成功した。
そのバンドはそれが最初で最後の演奏になった。
その代わり、勇ましいボーカルと繊細なピアノのユニットが誕生した。
「お安いもんだわ」
臨時のヘルプメンバー、さえない音楽教師に捧げた報酬はボーカル(女)の初恋だった。
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