ネクタイのお代
電車の待ち時間でチョイチョイと書きました。お題はツイッターの診断メーカーから。
『今日のかにへの台詞お題は「絶対大丈夫、って信じられればいいのに」です。作中にネクタイを出しましょう。 http://shindanmaker.com/437994』
今朝、購買で替えのネクタイを買った。高校の制服のネクタイは紺地にストライプの色違いが二色ある。赤と緑。今日は始業式だから緑のネクタイを付ける決まり。
教室に入ると「やっべー、ネクタイ忘れた」ひときわ大きな声が聞こえてきた。すぐに誰の声かは判った。いつも気にしている声だから。
彼と取り囲む友人達の会話を聞きながら、袋を握る手が震えた。私は勇気を振り絞る。
「ネクタイあるよ」声がひっくり返った。
「マジで? 超助かる」
「あ、でも赤い」
「問題ないない」
私は袋からネクタイを取り出して彼に渡した。慣れた手つきでネクタイを結ぶ彼をただ見つめた。
「大丈夫かな」
「絶対大丈夫」
彼は自信満々の笑顔だった。講堂に移動して生活指導の先生に会った早々「こら、正装は緑だぞ」と指摘を受けたけど、彼は「大丈夫だっただろ?」とやっぱり笑ったままだった。
翌日になってもネクタイは返してもらえず、ジュースやお菓子をチョイチョイ貰うようになった。
その金額がネクタイの代金を超えるころ、私は彼に告白された。
「大丈夫。俺たちは絶対に上手くいく」
「うん、信じてる」
(おわり)




