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朝型人生(お題:早い消費者金融)

 始業開始とともに電話がなる。

 外線受け付けが同じフロアにあるので電話の呼び出し音も筒抜けだ。


「外線です」


 うんざり気味の声で電話を回される。

 俺もうんざりだ。


『おはようございます。早井でございます』


 消費者金融だと名乗らないのは一応外聞を気遣っているのかもしれない。


「はい」

『早速ですが返済の目途は……』


 前振りもなくこれだ。

 借りて返さない俺が悪いんだけど。

 ていうか、順調に返せるくらいに財布が潤っているなら、消費者金融に借金したりしない。


 テレビCMや電車の車内広告では


『わたしたちはあなたがたの味方です』


 なんて親切面しておいて、いざ返せなくなるとこれだもんな。

 昔はなんだっけ? CMに犬も出てたんだよな。今は携帯電話のCMで白い犬が出ていたけど、先駆けは消費者金融だったんだぜ。


 スロットが好きだ。

 小遣いでやりくりしていた。

 それでは足りなくなって銀行ローンで借りて、最初は借りた分をきっちり返せていたんだけど、負けが込んで帳尻合わなくなってきて、消費者金融。要はサラ金。

 たぶん、もう80万くらいある。元金がいくらで利子がいくらかもよくわからない。


 一応、妻と子もいるんだが。まあ折り合いも悪い。

 俺が悪いのかよ。




 早くに催促がかかる早井消費者金融とのやり取りを終えるとまた外線がきた。

 今度はなんだよ。


「奥様です」


 受け付けの冷たい声。


『早井さんからお話は伺いました。今日一括で返済してきますから。それから書類に全て記入して印鑑も押しました。あとは貴方のサインだけです』


 借用書は消えて、代わりに緑の紙が召喚されたらしい。

 これでまたスロットで遊べるや。

 ひゃっほーーい。




文字数:743字

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