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あけましておめでとうございます
「そうだ、まだその通信機繋がってんのか? もし繋がってんなら一つ試してえことがあるんだけど」
俺はおもむろに通信機を奪い取ると、それをムクロに向けた。
「安楽音の野郎がかなりヤバい『毒草』なのはわかったけどよ。お前がお願いすればこいつもゆうこと聞いてくれるんじゃねえか? 試しに俺たちを解放してくれって頼んでみてくれよ」
「別に構いませんけど。たった今通信が切れましたよ」
茫洋とした目で通信機を見つめたムクロが言う。
俺は耳に通信機を当ててみるが、ムクロの言う通りあちらの音は全く聞こえなくなっていた。
無駄と分かっていつつも、軽く通信機を叩いて通信が復活しないか試みる。
すると隣から南方の蔑んだ声が飛んできた。
「君は本当に馬鹿なのか? やるならこちらの計画が相手に伝わらないようこっそり試すべきだっただろう」
「うるせえ。つうか分かったことだってあるだろ。安楽音の野郎はムクロの毒を恐れてるってことがよ」
「だったら尚更勿体ないことをしたな。今彼女に話させていればこの状況は一発で解決していたわけだ」
「あ? それ言うならお前こそもっと早くこの提案を――」
「頼むから喧嘩はしないでくれ」
俺と南方が再び喧嘩しかけたため、ため息とともに神月が『祈願』してくる。
口が開くなり、仕方なく俺は言葉を飲み込む。
南方も「またか」と腹立たしそうに呟くだけで、それ以上文句を言えずに天井を見上げた。
そんな俺らに対し心底面倒そうにため息をついた神月は、
「別に津山君を擁護する気はないが、万一ムクロの『毒』が安楽音に効かなかった場合は、最悪なんて言葉じゃ言い表せない事態になっていた。だから俺としてはこれで良かったと思っている」
「その甘い考えのせいで、今も外では人が殺されていると思うんだが。まあここでいつまでも言い争いをしている方が時間の無駄か。それでリーダー。次はどうするつもりだ」
「そうだな……」
南方の毒により眉間の皺が増えるも、神月は数十秒の思考の末、俺たちに指示を下した。




