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「さて、行こうか」

　集まった計八人の勇士（？）を見渡し、神月はそう宣言する。

　誰一人として決意のこもった顔をしていないのが何とも奇妙ではあるが、それもまあ当然の話だ。神月を除けばこの任務に従事したところで基本プラスとなることは何もなく、ただただ命を危険にさらす任務に参加させられるだけなのだから。

　背後では、『毒』を恐れてか白い防護服のような物を着た奴らが見送りに来てくれている。俺は一度そちらを振り返ると、眉間に皺を寄せつつ中指を立ててやった。

　ヤバめの『毒草』共が管理されているという施設の入り口は、当然のように二重扉になっていた。施設の外にある二つのボタンを操作して、まず一枚目の扉が開く。中に入ってすぐ再び頑丈な鉄の扉が立ちふさがり、一枚目の扉が閉じ切るのと同時に二枚目の扉が開く。

　いよいよ内部に入れたかと思うも、二枚目の扉の先は無意味に長い白塗りの廊下が続いていた。白塗り廊下の隅には無数の監視カメラと機関銃（？）のようなものが仕掛けられている。

　この一本道に無数のカメラを仕掛けるなんて無駄にしか思えないが、取り敢えず外には絶対に出さないぞという強い意志だけは感じ取れた。

「……全く、どんだけヤバい奴らが隔離されてんだよ」

「安心してくれ、ここにムクロ級の『毒草』は少ししかいないさ」

　俺のぼやきに神月がさらりと応じる。

　一瞬流されて頷きそうになるも、特大の矛盾に気づき、慌てて神月を振り返った。

「おい待て、ムクロ級にやばい化物が『少し』はいんのかよ！　お前こいつよりやばい毒持ちはいないって言ってなかったか！」

「睦雄さんは相変わらずデリカシーのない人ですね。曲がりなりにも女の子相手に化物とは失礼だと思いませんか。謝罪したからと言って全てが許されるわけではないんですよ」

　隣からじーっと視線を投げかけてくるムクロを無視して、俺は神月に詰め寄る。

　神月は「それはそうなんだが」と言いながら、面倒そうに額をかいた。

「ムクロの『毒』が別格に強いのは間違いない。実際彼女が『祈願』をすれば、それに逆らわずに堪え切れる奴はいないんじゃないかとは思う。だがそれは、彼女と同等の『毒草』がいないことを意味してはいない」

「……それってまさか、毒耐性はないけど毒自体はめちゃくちゃ強い奴がいるとか、そういう意味か？」

「御名答。ムクロは『毒草』としてだけでなくマリアの毒に堪え切れる程『毒消し』としても超一級だ。その点この施設にいる奴らは基本『毒草』同士で接することもないためか『毒消し』としてはいまいちだったりする。だからムクロと『毒』対決でもすれば勝てる相手はいないはずだが――毒自体のヤバさ単体なら、ムクロ級の『毒草』が少なくとも三人はいるな」