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第163話、僕の爪では涙を拭えないから【転移空間】


 【SIDE:闘う者達】


 魂を回収した一行は、次元の狭間を抜けていた。

 転移門をくぐり、戦線から離脱しているのだが――。

 揺れる転移空間の中は緊張の空気が走っている。


 レイヴァン神は楽しみながらも、彼らを追っていた。

 神に抗う。

 それは――かつて神に食い物にされたイエスタデイ=ワンス=モアが、その自身の悲劇を嫌った故の理想。自らの駒達にも、創造主である神に逆らって欲しいと感じている、願い。


 その感情をレイヴァン神は肯定していた。

 できることならば、それを達成して欲しいと感じていた。

 だから――。


『せいぜい抗って見せることだ――せめて俺に一泡吹かせられるくらいじゃねえと、主神猫アレには太刀打ちできねえぞ?』


 レイヴァン神の視線の先には、亜空間を駆ける二人と一柱が映っている。


 ◇


 今は竹林の結界で冥界神と距離をとっているが、彼らが追い付かれるのは時間の問題だろう。

 あのナウナウが遊興よりも結界を維持する詠唱を優先しているのが、その証拠か。

 英雄アキレスは自己強化をかけ続けながらも問いかける。


「ていうかアルバートン、なんでおめえがここに!」

『え? いや、いつまでも帰ってこないと思ったら、あの天地を破壊するほどの衝撃ですよ? 誰だって気が付きますよ……』

「そりゃそうか――すまねえ、助かった」

『構いませんよ、この世界で転生する筈のクローディアさんの魂を持っていかれるのは、僕もそれは違うと思いますから。しかし――』


 告げて暗黒騎士クローディアの魂を抱えて守る魔王は、赤き瞳で異界の冥界神を睨んだのだろう。

 魔王の形相はいつもよりも鋭かった。

 ネコヤナギと似た系統の涼やかな美貌が、ギッときつく尖っていたのだ。


『冥界神レイヴァン=ルーン=クリストフですか。滅茶苦茶な相手ですね。まさか他人の世界で空と大地を割りかけるほどの力を放つなんて』

『うんうん~。ひどいよね~、僕の世界で暴れるなんて~。僕~、ぷんぷんだよ~?』


 責任逃れのチャンスと見たか。

 ナウナウがにへにへにへぇっと満面の笑みである。

 当然、現場にいたアキレスは知っているので――ぼそり。


「おいこら、パンダ様――なに他所の神に責任を押し付けてやがるんだ?」

『えぇ~? なんのこと~? 僕ぅ、世界一、かわいいパンダだから~、むずかしいことは分からないかも~?』

「ったく、ネコヤナギの嬢ちゃんがいつも苦労させられるわけだな……こりゃ」


 世界一かわいいから全てが許される、そう本気で思っているのだろう――パンダ、渾身のすっとぼけである。

 アルバートンが眉を顰め。


『あの、お二人でやりとりされましても、こちらはあまり現場の状況を把握できていなかったので――いったい、なんの話です?』

「……。いや、たしかに相手はとんでもねえ……それこそ大魔王ケトスみてえな、例外中の例外。外なる神の中でも主神クラスにあたるトップの神性みてぇだが。天と地を巻き込んで《破滅の衝撃》なんていう、意味不明な破壊力の技をぶっぱなしたのは……。ウチの世界の暴走パンダ様だからな?」

『はい? え? いや、そんな――いくらナウナウ様でも……』


 驚き――竹林結界を維持するナウナウを振り返る魔王アルバートン=アル=カイトス。

 その戸惑いの視線に応じたのは、ナウナウではなかった。


『犯人は俺じゃねえよ。魔王アルバートン=アル=カイトス、かつて人間だった者。そうか、おまえさんが魔王の名を使う命知らずの――くくくく、なかなか歪んだ経歴の持ち主じゃねえか』

『――な……っ!?』


 声は二人の間近で聞こえていた。

 正体は当然、異界の冥界神。

 レイヴァン=ルーン=クリストフは飄々とした声と、斜に構えた姿で顕現し。


『魂を返して貰おう。悪いが、お前たちは全員、元は死者。彷徨える魂だ、それはつまり――こちらの世界で消えるはずだった魂。所有権はこちらにある。そっちの感情も分からなくねえが……もうそれ以上、彼女の魂を苦しめてやるな。眠らせてやるのが、優しさってもんだ。そうは思わねえか?』

「はん! 神の物差しで勝手に決めるんじゃねえよ!」


 英雄は神を相手にしても物怖じせずに、足先からカマイタチを発生させ牽制。

 風の刃はレイヴァン神にとってはそよ風程度のものなのだろう、平然と受け入れフフンと微笑されるのみ。


『人の身としては及第点だが、少々温いな。その程度じゃあ俺様は満足できねえぞ――なあ、おい』

「うるせえ、バーカ! 神を基準に考えるんじゃねえっての!」


 転移空間を駆けながら距離をとり攻撃を繰り返す人の英雄。

 アキレスの横。

 異聞禁書ネコヤナギの力を借りた魔王の声が朗々と響く。


『世界を見守る地母神よ――脆弱なる我らに女神の慈悲を』


 魔王が手にするその書はおそらく、四星獣の書。

 月を彷彿とさせる銀髪に、雪の結晶のような淡い魔力の光を浮かせた魔王が――範囲強化の魔術を発動させていたのだ。

 強化の波動を受ける英雄は動く。

 格上の神に向かい吠えていたのだ。


「あんたら神っていうのは、いつだってそうだ。勝手に先を見て、勝手に決めて、勝手に自分の好き勝手に動きやがる。ウチのモフモフどももそうだが、自分勝手が過ぎるんだよ! オレたちの運命を、人生を、物語を勝手に決めつけるんじゃねえ!」

『そうだ、そうだ~! 僕たちの世界からでていけ~!』

「いや、半分ぐらいはお前さんたちにも言ってるんだがな……?」


 ナウナウの揶揄に構わず、アキレスはそのまま魔王の支援を受けた最大級の蹴撃を放つ。

 発生したのはやはり風の刃。

 だが今回はそれだけではない――。


『僕はね~世界一かわいいナウナウだよ~』


 短いそれは名乗り上げの詠唱だった。

 鼻先をふがふが、表情をエヘヘヘ~。ウキウキ顔のナウナウが、カマイタチ攻撃に乗せて魔力を投射。細かい魔術文字が刻まれた笹の葉を流し込んでいたのだ。

 笹を吸ったカマイタチが指数関数的に膨らむ。

 肥大と言ってもいいほどに、カマイタチが増幅されていた。転移亜空間全体を薙ぎ倒す程の嵐の刃に変換されていたのである。


『いけ~、やっちゃえ~、切り裂き抉れ~♪』


 魔王と英雄とパンダ。

 三体の連携にレイヴァン神は瞳を細め――。


『なるほどな――魔王の職にある者の支援を受け、更に神が力を貸した連携攻撃。悪くねえ攻撃だ。それにしても、おいパンダ野郎。おまえさん、他人への強化魔術なんて扱えたんだな』

『当然~だよね~、だって僕~、人々の心をこの可愛さで動かすパンダだよ~? 本来なら~、こういう~、支援が~、僕の~、得意技なんだよ~♪ あぁ、みんなで戦うのって楽しいなぁ~♪』


 きぃぃぃぃぃぃんと、冥界神の瞳が輝く。


『他者の魔術を増強させる権能――。それに気分によって能力を大幅に向上、あるいは低下させる《きまぐれ》の特性持ちか。この鬼畜パンダ、見かけと性格によらずマジで支援魔術に長けていやがるのか。はははは――外道なくせに、くっそ、似合わねえな、おい』


 死の神ともいえる男の赤い瞳に、計算式のような謎の文字が広がる。

 それは大魔王ケトスも扱っていた魔術体系の一種、魔術式と呼ばれる外の世界の魔術法則だとこの場にいる全員が把握したが――。

 単純に今のそれは様子見。

 レイヴァン神はカマイタチとナウナウに鑑定の魔術を発動させたのだろう。


 だが――。

 鑑定していたレイヴァン神が後ろに流した髪を逆なでさせ、叫ぶ。


『って!? 食肉化付与属性だと――!?』


 キィィィィィィ――っと、魔力による摩擦が発生する。

 レイヴァン神が慌てて追撃を止めた衝撃だった。男神はなにやらカマイタチに込められた魔術に警戒を抱いた様子で、バッと長い腕を前に伸ばし詠唱を開始していた。


 逃走速度を上げるアキレスが言う。


「食肉化付与? き、聞きなれねえふざけた属性名だがなんだそりゃ?」

『おそらくあなたも知っている筈ですよ、アキレスさん。直撃させた相手を問答無用で食肉に変えてしまう、山羊悪魔パノケノスさんも使う一撃必殺の属性ですね』

「羊の旦那の、親友の山羊様のヤベエ魔術か」


 眷属の力を扱うナウナウの能力、といったところだろう。


『即死耐性があっても貫通するのと、かなりレアな属性な事もあり対策も難しいのですが……』


 魔王アルバートン=アル=カイトスの瞳は無言でその続きを語っていた。

 おそらくはそれでも防がれるだろう、と。

 しかし時間稼ぎにはなる。


『我が命じる。死者の翼よ――吠えやがりな』


 さすがに四星獣の力を付与されたカマイタチを受ける気はないのか、レイヴァン神は、肌の表面に複雑な魔術文様を浮かべて詠唱を開始。

 口角を釣り上げてみせたのだ。

 詠唱によって発生した波紋。闇の雫から更に生まれた闇の羽吹雪が、カマイタチを包み込んでいた。


『権能開放:《悪食たる(グラトニア・)蝗の王(アバドーン)》――全ては死肉の中へ。ふふふふ、ふはははははは!』


 羽吹雪の裏から顔を出させたイナゴの群れに、その刃を食わせ――吸収。

 逆に魔力を喰らいつくしているのだ。

 見事に攻撃に対処してみせたレイヴァン神だが、動きは止まっている。


 けれどだ。

 ナウナウの瞳は、不機嫌そうに見開かれていた。


『おかしいな。今のは本気で肉にしようとしたのに。どうして防がれたんだろ』

『はははは! こっちの世界にもそういうふざけた属性の攻撃を無数に使ってくるアホみたいに強い猫がいやがるからな。そういうふざけてるくせに最強につええアホ属性への対策は必須なんだよ』

『へえ~、変な世界だね~』


 ジト目で冥界の神は言う。


『おいおい……パンダが最強クラスとかいう、お前さんたちの盤上遊戯世界には言われたくねえんだが――まあいい』


 レイヴァン神は姿勢を直し、腰に手を当てその身を輝かせる。

 神の威厳を放っているが――その威光とは裏腹。

 チンピラがチンピラ相手に食い下がるような形相で、ああん? と、モフモフパンダを睨んでいた。


『おいこら鬼畜パンダ、てめえ本気で俺を食おうとしてやがるな?』

『宇宙みたいな数がいる~、君の翼の中の駒を~、ぜーんぶ、ぜーんぶ食べたら。僕、もっと強くなれるからね~♪ こんな機会、のがすわけないよね~?』


 のんびりとして、ほのぼのとした空気は気が抜ける。

 けれど、パンダは笑っていない。

 嗤っているのだ。


 ナウナウは、えへへ~と微笑みパンと手を叩く。


『二人とも~先に行っててね~。僕は~、このひとと~、ちょっと真面目な話がしたいんだ~』

『ナウナウ様? いったい――なにを』

『アルバートン。ごめんね~、ちょっと痛いだろうけど――ドーンとするから、それに乗って~、甲羅の隙間のダンジョンに帰還してね~』


 アルバートンとアキレスの顔が、ビシっと固まる。

 何をしようとしているのか察したのだ。


「ちょっとまて! そりゃあオレたちは不老不死の特性を持っているが。てめえの破滅の衝撃の直撃を受けたら、めちゃくちゃ――」

『大丈夫だよ~、ちょっと死ぬほど痛いだけだよ~。ちゃんとそのの魂を守ってあげてね~。じゃあ、いくよ~』

「行くよぉ~。じゃねえよ! おい待て、この糞パンダ! それはマジでやべえだろう!」


 ドーンと、パンダは肉球に込めた魔力を振りおろし。

 魔王と英雄は、遠く彼方へ吹き飛ばされていた。


 ◇


 逃走劇は終わった。

 強さに貪欲な獣、ナウナウは転移空間を封鎖し、敵対者を睨んでいる。

 やはりこのパンダの存在が厄介だと、魔兄レイヴァンは感じていた。


『おまえ、本当に容赦ねえな……』

『最善の手だと思うけどな~』

『そりゃああいつらなら生きてるだろうが、本当に、マジで死ぬほど痛い思いをしてるはずだぞ、アレ……』


 ガシガシガシと男神は首筋をぶっきらぼうに掻きながら告げ。

 ふぅ……と煙草の息を漏らす。


『で? 世界から隔絶されたこの転移空間で、二人っきりにして。何を企んでやがるんだ?』

『決まってるよね~? 外来種は~、ちゃんと駆除しないとだし~』

『駆除ってあのなあ、俺に本気で勝てると思ってるのか?』


 翼の裏の蝗の数だけ、同じ強さの駒を生み出せる。

 その意味が分からないほど、このパンダは愚かではない。

 ならば、なにか策があるのだろう。


 ここが他には何もない空間だからだろう。

 パンダは空気を切り替えていた。


『僕は~、強いよ~?』


 その言葉に嘘はないように見えた。

 冥界神は相手を見て、考えたのだろう。

 これの強さは異常だと。


 魔兄レイヴァンは思考を加速させる。


 おそらくコレは――。

 この四星獣は――外の神との戦いに慣れている。既に何度も、盤上世界に入り込んできた外来種を一匹で討伐していると考えるべきだ。

 やりようによっては、なんでも願いを叶えられる世界。

 そんな便利な世界を狙って、あるいは偶然に紛れ込んできた外なる神がいたとしたら――神は当然、自分の願いを叶えるために世界を利用しようとするだろう。


 この盤上遊戯は願いの魔力の塊。

 強力な魔道具の世界と認識し発見したとしたら……躊躇なく侵攻してくる神は多く存在する。


 なにしろ、本来なら蘇生できない存在ですら蘇生できる、文字通り夢のような世界なのだ。目をつける外来種がいたとしても不思議ではない。

 その外来種に対抗するために、動いていた神。

 それがナウナウなのだろうとレイヴァン神は感じていたのだ。

 そしてその神々を喰らっていたとしたら。


 思考を読んだかのように、巨獣熊猫が咢を開く。


『僕はね~、友達のイエスタデイがね~。かつて楽園の神を~、信じたことで~、いっぱいいっぱい泣いたって知ってるんだ~』

『だから、全て排除してきたのか――?』

『うん、そうだよ~。イエスタデイはね~、あの時ね、たぶん、すっごいすっごい泣いたんだよ~? 涙が枯れるほどに、泣いたんじゃないかな~。だからきっと、外の神が来ても~、嫌いなままだとは思うんだ~。でもね』


 ナウナウが顔を横に倒して、戻して、倒して――。

 まるで遊びの中にいる顔で繰り返し。

 続ける。


『イエスタデイは~、根が優しいから~、きっとまた~、楽園の神を信じちゃうよね~? この世界に入り込んできた~、腹黒い楽園の神たちの言葉に~、いちいち耳を傾けちゃうよね~?』


 かつて楽園に在った神。

 楽園が滅ぶ因となった、楽園を憎悪する神。

 レイヴァン神が言う。


『確かに、我が父や滅びた楽園の糞共かみがみは――どうしようもねえ、クズどもだ。あの魔猫に行った外道も――けして許されることではない。死んで、せいせいしたさ。俺様を殺した奴らが、俺様の管理する死者の国に落ちてきたときは、そりゃあ嗤ったさ。ああ、たくさん嗤ったよ。なれど、聞け、嫉妬の魔性よ――それとあの哀れなる魂とは話が、べ……』

『嫌だよ~。聞かないよ~』


 ナウナウは赤い瞳を尖らせ、糸目を作った満面の笑みの下。

 煌々とした赤い輝きを、クマのように鋭い牙の奥から吐き洩らし。

 吐息に乗せて――告げる。


『四星獣はね~、みんなつよいけど~。僕だけはね~、もっともっと、一番、ちゃんと強くなくちゃいけないんだよ~? だって~、みんな~僕と違って~、イイ子だからね~。イイ子だから、きっとまた騙されちゃうよね~?』


 だからね。

 と、獣なりにこの世界を思う四星獣は言う。


『もう二度と、イエスタデイが泣かないように。もう二度と、イエスタデイが悲しまないように。僕の友達を傷つけようとする、全ての外来種を駆除するんだよ~。どれだけ外道だと思われても~、腹黒だと思われてもいいんだ~。僕はね』


 ゆったりとしたパンダの仮面の下。

 猛獣としてのパンダの咢が、その心情を包み隠さず吐露していた。


『僕に肉球を差し伸べてくれたあの子が大好きなんだ~。いっぱいいっぱい好きなんだ~。僕よりも大好きなんだ~。僕がね~、僕より好きなのはあの子だけだよ~。だから~、僅かにでも可能性があるのなら――僕は侵入者を許さない。全ての異神を食い殺すよ~』


 食い殺す。

 力を取り込み、自らのモノとする。

 それが異常な強さの正体。


 四星獣ムルジル=ガダンガダン大王が財によって、大魔王ケトスと一時でも渡り合える力を有していたように――このパンダもまた、外来種からの攻撃に備えていたのだろう。

 友が泣かずにいられるために。

 ずっと、ずっと――。


 瞳を閉じて、男神が言う。


『なるほどな。それがこの世界が今まで無事だった理由か。大魔王ケトスや聖父クリストフほどの神性は喰えなかったが、それ以外は――全部喰らって、その神性を取り込んだのか。想像以上のバケモノだな、おまえさん。その根性は、嫌いじゃねえぜ? 好きでもねえけどな』


 四星獣ナウナウ。

 飄々としたその獣が強くなった理由は単純だった。

 ただ友達を守りたかったから。


 それだけなのだ。


 おそらく、イエスタデイ=ワンス=モアと出会ったあの日を思い出しているのだろう。

 パンダは遠くを眺めていた。

 今を司る神が過去を眺めて、その獣毛をぶわりと揺らしている。


 自由を求め、死んだ熊猫。

 自由に生きる者達を嫉妬し続けたケモノが、唯一、自分よりも大切なものを見つけた瞬間。

 それがナウナウの心の中のぴかぴか。

 それが友との出逢いだったのだろう。


 宝物を守る獣の顔で、ナウナウは格闘の構え。


『僕は誰よりも強くならないといけないんだ~』


 友を守るという自由を手に入れるため力を宿すパンダ。

 友達想いの獣は――無限に力を奪える神を見つけて、ほのぼのと告げる。


『僕のために~、僕の友達のために~。君の魔力も権能も、全てをもらってあげるね~』


 赤い魔力が、パンダの獣毛を膨らませた。

 戦闘が、始まる。

 本気で神を喰らうために、ナウナウは全力を出すつもりなのだろう。


 どちらかがこの場で消える。

 そういう戦いだ。

 だから――だろう。


『もう、勝手に盛り上がらないで貰えるかしら?』


 凛と、鈴の音が鳴った。

 誰も入ってこられないはずの空間に、樹々の香りと音がこだまし始めた。


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