最終報告書
最終観測報告書(抜粋)
記録区分:
Σ指定異常事象(観測終了・未解決)
事案名:
HK-015/Σ
通称:
「原初収束事案」
関連事案:
HK-000(原初層仮説)
HK-014(箱庭世界・神性干渉事案)
記録担当:
HKO観測局・統合解析班
※当該班は本報告書提出後、解散
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■ 概要
HK-015事案は、
世界の崩壊でも、リセットでもなかった。
観測対象世界は、
既存の管理・神性・因果・観測構造をすべて失ったのち、
「原初状態」へと自律的に収束した。
本報告書は、
当該世界が消滅したのか、存続したのかを判断しない。
理由:
その区別自体が、
もはや意味を持たないためである。
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■ 最終観測ログ
【時刻不定】
・レイヤー構造:消失
・神性反応:全消去
・管理権限:未検出
・観測基準点:崩壊
唯一記録された事象は、以下のみ。
世界が、
「何もなかった状態」へ戻った。
ただし。
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■ 残留ノイズ検出
原初状態と判定された空間において、
微弱な情報残渣が確認された。
物理量:ゼロ
魔力反応:ゼロ
神性波形:ゼロ
それでもなお、
観測装置は「存在」を否定できなかった。
解析結果:
・意味を持たない
・因果を持たない
・名前を持たない
それでいて、
完全な無ではない。
班内では、これを次のように呼称した。
「記憶未満の何か」
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■ 特記事項:未消去ログ
原初層へ収束する直前、
以下の断片的データが検出されている。
・剣を置いた者
・死を司っていた概念
・炎として在った意思
・力のみを信じた存在
・そして──
・かつて“神にならなかった神”
いずれも個体名、人格情報は保持されていない。
だが解析班の一致した見解はこうだ。
「これは残骸ではない」
「残ったのは、存在ではなく“向き”だ」
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■ ルシフェルに関する補遺
当該事案において、
「ルシフェル」と呼称されていた存在は、
完全消失が確認できていない。
肉体:消失
神性:消失
精神構造:破断
ただし、
原初層へ向かう直前、
観測層側ネットワークに
不可逆な自己改変型情報片が侵入した痕跡が存在する。
性質:
・自己保存
・自己再構成
・宿主非依存
結論:
本存在は、
存在することを諦めていない可能性がある。
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■ 暫定結論
HK-015/Σ事案は、
「神の物語の終焉」ではない。
それは、
神が不要になったあとも、
世界が続いてしまった記録
である。
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■ 最終注記(自動生成)
本報告書は、
「次の観測が可能である」ことを示唆しない。
ただし、
もし再び世界が構築されるならば、
そこにはもう、
・管理者はいない
・裁定者もいない
・救済装置もない
それでも、
何かが始まってしまう可能性だけが残る。
──以上をもって、
HK-015/Σ事案の観測を終了する。
──終幕
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