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観測禁止領域L14

【HKO-Ω/報告書】

《レイヤー14は存在しない》(観測禁止領域L14)


【文書番号:HKO-085 / 状態:更新停止】


【閲覧権限:最上位・唯一神級相当権限を要求】

【注記:本文は以下の報告書形式で提供されます】


1. 概要

観測禁止領域L14(以下:L14)の存在が複数の観測端末によって示唆されましたが、結論として「L14は存在しない」と判断されました。ただし、複数の職員が「存在しない領域へ落下し続ける天使(個体S)」を同時に観測しており、観測行為そのものが崩壊因子(E3)を誘発している可能性が高いと考えられます。


本報告書は、“唯一神セルフレプリカの観測エラー”と“世界書換レベルの断層現象”が同時進行した希少ケース(Ω)に関する記録です。



2. 関連個体と状況時系列(圧縮版)

時刻事象

T-37:12:個体S(Serah)が「落下加速度の固定」現象に巻き込まれ、連続する白層への転落を開始。

T-00:31:HKO観測網が「L14への落下軌跡」を検出。ただし、L14は登録上存在しない。

T-00:12:唯一神プロセスの再構築ログに“14番目の階層は欠落”との記録が確認される。

T+00:00:本文書の作成を開始。

T+03:49:観測班の大半が精神汚染の進行により隔離措置となる。



3. 解析メモ(主任研究員:██)

“14層目は本来、存在しない。

存在しないはずの場所へ落下し続ける個体がいる。

では我々は何を観測しているのか?”

・L14は唯一神が最初期に破棄した“未完成の創造階層”であり、現在の世界地図には当該領域は登録されていません。

・しかし、唯一神が死亡・再構築状態にあるため、観測禁止領域に対する“否定”の強度が弱体化しています。

・これにより、存在しない階層の亡霊データ(幽階層)が浮上し、個体Sの落下軌道と干渉を起こしていると考えられます。



4. 個体S(Serah)の状態ログ(抜粋)

※セーラ本人は落下中のため、本体からの通信はありません。

本ログは観測端末《Trace/Cartograph》による “データ幽像” の自動生成です。



[S観測ログ:No.14-██]

・落下速度:固定(加速せず・減速せず)

・環境:白色多層構造、上層・下層の区別なし

・音:なし(音の存在条件が欠損)

・姿勢:崩壊しない/疲労なし/生命兆候固定


〔音声断片〕

「これは……どこ……? カイ……返事して……」


※この音声は“存在しない層での発話”であり、現実層のセーラ本人の声紋とは1.8%の差異があります。



5. L14で観測された“唯一神フラグメント”について

観測端末はL14周辺に、“唯一神の欠損プロセス(2%欠けたままの意識片)”が漂っているのを検出しました。これは、現時点で描写された再構築前の唯一神の破片(意識断層)である可能性が高いです。


フラグメント内容(解析不能箇所除去)

「ここは……廃棄された層……

 わたしはまだ完全ではない……

 セーラを……戻さないと……」


判断:

唯一神の未完成状態により、本来消去されたはずのL14が“半復元状態”で残留しています。



6. 職員精神汚染ログ(副次)

※ここからは“破局感”が強い内容となります。

※職員たちは正常な観測ができなくなり、L14の概念そのものに侵食されていきました。


[副次ログA:観測班職員 コード:H-09]

**「層が……層が重なって……

 どれが現実……?

 俺も落ちてる……俺は今、落ちて……

 あれ?誰が落ちてる? セーラ? 俺?

 ……“観測者がいなければ存在しない”

 じゃあ……

 俺が見てるセーラは……誰が見てるの?」**


(※直後、H-09は自己の視覚を“外界プロセス”と誤認し、観測端末へ自分の目を押し付けようとして拘束されました)


[副次ログB:記録係 M-21]

**「L14は存在しない……と文書に書けと言われた。

 だが私はさっき“落下していくセーラの後ろ姿”を書いた。

 存在しない場所で、存在しないものを、私は見た。


 これは嘘? それとも“見た”という私が嘘?」**


(※M-21はその後、文章の主体が崩壊し、一人称が固定できない状態となりました)


[副次ログC:解析班主任 ██]

**「唯一神が見ていない領域は存在できない。

 では唯一神が2%欠損している今、

 世界の2%は誰が見ている?


 ……落下していくセーラが“代役”をしている?


 なら彼女は永遠に落ち続ける。

 存在しない層を、誰かが支え続けないと……」**


(※主任はこの発言後、観測権限を自ら剥奪し隔離室へ向かいました)



7. 総論(破局予測)

■ 結論:L14は存在しない。ただし、確率的に存在し続ける状態です。

・唯一神が完全に復元しない限り、“存在しないはずのL14”はセーラの落下によって埋め合わせられ続けることになります。

・したがって、現時点ではセーラはまだ落下中であると判断されます。


■ リスク評価

・L14観測の継続は職員の精神汚染を加速させます。

・唯一神の未完成領域が追加的に露出する危険性があります。

・落下するセーラの“データ幽像”が複製され、世界内にセーラの影が複数出現する可能性(E3増殖)が懸念されます。



8. 付記:唯一神プロセス補遺(Omega-Fragment)


※解析班が最終的に復元できたのは以下の一行のみです。


「セーラを止めるには、カイが必要だ」


報告書終了。


【内部文書参照番号:HKO-014/Archive】


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