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恋する女魔

 ───万魔殿(パンデモニウム) 第七層。


 死の神タナトスは、頭に黒鷲の羽根が一対、背には床につくほど大きな翼が一対生えており、パッと見は堅物そうな青年の姿をとっていた。

「もうすぐ我らが守護するこの層に敵がやって来るようだ」

 タナトスは鷹揚に言った。

「敵さんをお迎えするにはちょっと殺風景ですね、このフロア、タナトス様が好きにアレンジしていいのでしょ?」

 アグラトが歌うように訊ねる。

「まぁそうだが」

「わたくし好みに家具とか配置してもいいですか」

「これから戦闘が始まるのだぞ」

 タナトスは以前見たアグラトの女の子部屋を想像した。


(あのような部屋にするのか)


「変な風にはしないでくれ、この階層は威厳に満ちていなければならん」

「あはは、ガーリースタイルじゃなくて大人可愛いレイアウトにしますから」

「いや、荘厳な感じに……」

「ところでタナトス様」

「なんだ」

「逃げちゃいませんか」

「この私が負けると申すか」

「いえ、タナトス様は大丈夫でしょうけど、わたくしは死んじゃいそーじゃないですか」

「単独でいなければ大丈夫だ、六大魔神の三体もいる」

「死ぬのは怖くないんです、でもタナトス様とお別れするのが……」

「死なせはせん、私は死を司る神ぞ、万物の生死は私が決める」

「死ぬ時はどうかご一緒に」

 アグラトはいつになく感傷的に言った。これから戦闘をするというよりもデートのようなお洒落をしていた。しなやかなセミロングの黒髪から伸びた二本の触角がチャームポイントで、柔らかな素材の黒のタイトワンピースがボディラインを魅せるメリハリのあるシルエットを作っている。前の出陣で買った服であった。




 ◆

 休息を取ったオルドたち一行は、跳空間転移ディメンショナル・リープで再び万魔殿六層に入った。

 不自然なほど悪魔の姿は見えず、一行はそのまま七層への階段を降りた。


 しばらく歩くと暗闇から二体の悪魔の影が現れた。その後方に死の神タナトスの姿が見え、彼の後ろの陰にも二体の悪魔が控えていた。

 オルドが箱庭アプリでサーチ、上層にいた六大魔神の生き残り三体が一層下の守護者と合流したようであった。


 先陣を切って現れた悪魔は、禿頭に捻れた三本角を持つ六大魔神筆頭のルキフゲ、もう一体は非常に小柄な少年のような魔神アガリアレプト、二体ともすぐに襲ってくる様子はない。

 タナトスの背後から召喚士(サモナー)ネビロスが高位悪魔グレーターデーモンを三体召喚し、オルド達にけしかける。


「まずは様子見ってところか」


 襲い来るマッチョな悪魔、グレーターデーモンをオルドの二刀流とジュリアンの消えない炎が瞬殺した。

 そしてオルドはルキフゲ、ジュリアンはアガリアレプトにサシで対峙する。


 パトラはマリアを怯えさせた憎きタナトスとお付きの女魔アグラトにターゲットを絞った。今度こそマリアを守らねばならない、パトラはマリアの傍を離れずに後方から呪文の詠唱を始めた。パトラの挙動を確認したアグラトはサッとタナトスの陰に隠れる。


「あの女、嫌いなタイプ……」


 パトラの手の平から既に炎が漏れ出していた。


 死の神タナトスの発するプレッシャーは、普通の人間にとって耐えられるものではなく、魂を抜き取られるような不気味さと、実際に死をイメージさせられる幻術効果(イリュージョン)があった。デフォルトで幻術を放ち、その幻像は現実化する、つまり作り出された幻像の手で相手を物理的に殺すことが可能で、抵抗力の弱い者ならその場に居るだけで命の危険に曝される。カイとマリアは寄り添ってお互いの精神を守っていた。


(あいつだけは別格、早くに勝負を決めなくては)

 これまで幾多の強者を滅殺してきた『爆炎の魔女』パトラでも、死の神を相手にして楽に勝てる自信はなかった。


お読みいただきありがとうございました。

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