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六大悪魔

 囚われのセーラを追う一行は、万魔殿(パンデモニウム)の六層まで降りてきていた。箱庭アプリによると、ここからは上位の悪魔や魔神が出現するようであった。


 悪魔どもの支配者たる三精霊、ルシフェル、ベルゼブブ、アスタロト、その直属の部下には六体の上位悪魔が存在する。ここまでは全て伝承の通りに(何者かによって)設定されていた。六大悪魔とは「上級精霊」および「魔神」と呼ばれている悪魔の中でも格上の六体である。


 しかし、パーティーの体力は既に限界に近かった。


「いったん引き上げて出直すか。だいぶ悪魔も掃除したし」

 有名な侍に扮したオルドが床に両脚を投げ出して座る。

「わたしまだ全然いけるけど」

 平然とパトラが言う。

「君の魔力は底なしか?」

 ジュリアンが驚嘆しつつ続ける。

「再びこの階層から行けるよう、跳空間転移ディメンショナル・リープの座標印を刻んでおこう」

「待って、セーラが」

 マリアが口を挟む。

「彼女はすぐに殺されはしないだろう。何らかの秘密を吐かせるまでは」

「でも酷い目にあってるかも……!」

 取り乱すマリアを見てオルドが割り込んだ。

「セーラの身は心配だが、ここで上位悪魔が複数でも現れたら全滅しかねない、私たちはともかく、お前たちは…」

 カイとマリア、そしてパトラを見るオルド。

「私の回復魔法、治癒呪文ヒーリングはあと数回は使えるわ」

「オ、オレだってバグればまだ戦える!」

「アプリのマップでは九層が最下層、あと三つだがこのまま進むのはリスクが高い。できてあと一戦……」

 オルドはバグについて以前の惨状を悔いており、その話を拒んでいるようであった。



 パーティーがあれこれ相談してる間に、暗闇の向こうから三体の悪魔がぼうっと浮き上がる。すかさずオルドがアプリでチェックを行う。

 褐色肌のインテリ系、できる風な眼鏡女魔フルーレティは凍結術を使う、山羊の頭に人間の女の体、額に五芒星、背に大きな翼を持つ悪魔はサタナキア、バフォメットとも呼ばれる、そして地面に届くほど長いピンク色の髪に、羊の角と黒き翼を四枚持った女魔がサルガタナス……。

「三体とも上位悪魔だ!」

 オルドはそう叫ぶと二刀を構えた。

 サルガタナスはふふっと微笑すると他の二体を透明にし見えなくした。

 見えない全方位から、フルーレティの雹の弾幕、サタナキアの溶解液(S o l v e)が放たれる。


 パトラのシールドが拡張され、パーティー全員を包み被弾を防ぐ。

「消えた奴に目印をつける」

 そう言うとパトラは目を閉じ集中した。


(幽く 冷たき 地の底に這いずる者たちよ)


(その怨みを解き放て!)


« 冥府火炎怨殺(アッザー・ケイド) »



 冥界の怨霊たちの怨念を集約し、青白い瘴気の炎が対象をホーミング、三体の悪魔を追尾する。

 悪魔たちはそれぞれ耐火(レジスト)するが、瞬間、消えている二体のシルエットが顕となった。


「見えた!」

 ジュリアンとオルドが消えているフルーレティとサタナキアに攻撃を仕掛ける。

 ジュリアンは消えない炎を纏った『アダマスの大鎌』でフルーレティの胴体を横に裂き、オルドは二刀でサタナキアを千に切り刻んだ。


「……!!」

 サルガタナスは驚いたように後ずさった。


「やるじゃん」

 肉体の再生も途中でフルーレティは眼鏡をくいっと上げ、分断された胴体の火炎に侵された部分を捨てながら繋げていく。サタナキアは細切れ故に再生が遅く、まだ原型を留めていない。


「完全に消滅させないと死ねないみたいね」

 パトラは大呪文の詠唱を始める。


 オルドとジュリアンが動ける悪魔に波状攻撃を仕掛けて時間を稼ぐ。一方カイは自分が何もできていないという焦燥感と戦いながら氷の壁でマリアを守っていた。


お読みいただきありがとうございました。

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