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彼らが死する方法

「へぶるるぁぁ(二度失敗した)」

 アスモデウスは覚悟を決めていた。

「へやぶらァぶら(恩赦はないだろう)」

 戻っても殺されるだけならば最後、全力で貴様らを葬るのみ!

「へばぶへぶらぁ(貴様らなど己一人で十分だ)」


« 暗黒磁流禍(タキオン) »


 闇属性の波動、暗黒磁流が竜に跨ったアスモデウスの身体から放出され辺りを包んだ。

 アスモデウスの怒号で広範囲に炎を吹く地獄の竜。

「うわちゃちゃ」

 カイ、マリア、パトラは四方に飛んで炎を避ける。


「でやぁぁぁ!!」

 セーラが空に大きく飛び上がり、そこから急降下して、アスモデウスの牛、人間、羊の三つの脳天に天使の鉞を打ち下ろした。


「へぶっ、へぶっ、へぶるぉぉ……」

 三つの頭を粉砕されたアスモデウスは、竜からずり落ち、静かに事切れた。そして主を失った暗黒竜は奇声をあげ飛び去っていった。


「敵ながら潔し。そのレア武器はオレが貰おう」

 カイは地面に転がった緋色の魔槍ロムルスを拾い上げる。

「あんたは殆ど何もしてないでしょ」

 パトラが毒づく。


「終わったわね」

 セーラは額の汗をハンカチで拭いながら言った。

「でも、あの悪魔たち、セーラを封じ込めようとしてた…」

 マリアが心配そうに訊いた。

「アイテムは破壊したけど、どうもボスは半悪魔のセーラが必要みたいね」

「まさか、セーラの悪魔の要素は全て取り除かれたはず……痛つつ…」

 カイは突然、片腕に痛みを感じた。しばらく何も感じなかった鱗粉タトゥの部分が疼く。タトゥは口を開き、低い声で言葉を発した。

「悪魔の王は世界の開発者を欲している」

「うわっ、喋った!!」

「キモっ! 何それ」

「分からない、声に聞き覚えもない」

「開発者を……」

 セーラは何故かズキっと胸が傷み、強い不安を覚えた。



 一方、オルドの塔地下室では…

「オルドがいない……この世界の中心を放置してどこへ…」

 アグラトは触角をせわしなく動かして訝しんだ。

「タナトス様、オルドは逃亡したようです」

「マモン達の波動も消えている。死んだな」

 タナトスは死を司る神。生者の波動を感じることができる。

「ひとまず万魔殿に戻るか、いやアグラト、奴が潜んでいそうな場所は他にあるか?」

「近隣の街や村にはたまに立ち寄っていたようですが」

「一応回ってみるか、優先して行きたい場所はあるか」

「いえ特には…タナトス様」

「なんだ?」

「あのー、デートみたいですね(ハデス様がいなければ)」

 アグラトは触角をフリフリしながら頬を赤らめた。



 そして、万魔殿(パンデモニウム)

「失敗したようだな」

 余裕の表情を崩さずルシフェルは呟く。

「しかし、そんなことよりも、近頃現れた二匹の怪物に下~中級悪魔が狩られているようだ」

「オリュンポス十二神の生き残りでしょうか」

「いずれ分かる、オノケリスよ、みなにこの事を周知し警戒を強めよ」

「はっ! 承知いたしました」

「第三勢力の正体は大体、想像がつく」

 チッと舌打ちをしてルシフェルは玉座から立ち上がり、大きく伸びをしたり、ウロウロと室内を行ったり来たりしたり、椅子の上に立ってバランスを取ったりしながら思考を巡らせた。


 報告にある怪物の外見的特徴は、インド神話における神のような薄青い肌の二匹の個体、その個体は胡座をかいて宙に浮いていて、両腕の代わりに無数のコブラの首がうねうねと体内から延びて、悪魔の部隊を一度に大量に殺害した、眠っていた古代神が同時に目覚めるわけもあるまいが、物理的に仕掛けてきたのは何故か?

 現存する開発者の中で一人は未確認、恐らくこいつは単独行動であろうが、彼らが操れるキャラクターは一人につき一人だけとは限らん、決めつけていた、そして、彼らは異世界(アザー・プレーン)での所業を楽しんでいる節がある、肉体の痛みを伴い、仮に死しても、元の世界(リアル・プレーン)に戻っていくらでもやり直しが効く、彼らにとってはこの世界は一種のゲームに過ぎないのだ、だがそこに付け入る隙がある、抜け穴は複数ある、彼らをこの世界に縛り付けておく方法は、つまり開発者が箱庭内で死する方法───。


「必ず突き止めてみせよう」

 ルシフェルは大仰な態度で玉座に座り足を組んだ。


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