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強欲の悪魔

 ドズゥゥンと地獄の竜が着地する轟音が響き渡り、悪魔どもはコキノピロス村に着いた。

 マモンは辺りを見回すがセーラ達パーティの姿は見当たらない。


「へやヘァ(建物を探すぞ)」

「へぶるるァ(手間を取らせやがって)」


 マモンとアスモデウスは村にある建物の残骸を片っ端から破壊していった。

 暴虐の限りを尽くせと命じられた暗黒竜も、長い尻尾を振り回して村のあらゆる物を広範囲に蹴散らした。



 一方、死の神タナトスは悪魔アグラトと共に上空まで上りハデスの黒球を見つけていた。

 タナトスの主である冥府の神ハデスは球の中でスヤスヤと眠っていた。

「ハデス様、ハデス様」

 タナトスが黒球の中にずぶずぶと手を入れハデスの身体を揺する。

「んー、誰だ…我を、起こす、ものは……」

「ハデス様、タナトスでごさいます」

「最近、寝ても、寝ても、眠いのだ」

「万魔殿をお探しで?」

「うむ、ルシフェルが、目覚めた、ようでな」

「場所はお分かりですか? わたくしがご案内いたします」

「おお、そうか、ちょうど、探して、いたのだ」

「途中少し寄り道をしますが…アグラト、行くぞ」

 タナトスは二本の触角が魅惑的な女悪魔アグラトを連れ、地上で暴れている悪魔に声をかけた。

「マモンにアスモデウスよ、そちらは頼んだぞ」

 タナトスとアグラトは介護をするようにハデスの黒球を両側から支えて、一足先にコキノピロス村から飛び去った。


「へやへぁ(行ったか)」



 セーラたちは凍ったスルトの棺のそば、比較的損傷の少ない無人宿屋の二階で夜を過ごしていた。カイはベッドに倒れ込むように眠り、セーラはソファでうたた寝しており、マリアとパトラは備え付けのパジャマに着替えて一緒のベッドで眠っていた。


 パトラが最初に悪魔の来襲に気づく。

「……!! また来たか…しつっこい」


「へぶぁ!(おらぁ!)」

 アスモデウスが宿屋の出入口ドアを蹴破る。


「何だ何だ!?」

 カイがベッドから飛び起きる。

「この前の悪魔だわ……一階フロントね」

 眠い目を擦りながらセーラが示す。

「ふぁーあ…まだ夜明け前じゃないの」

 マリアは時計を見ながら長い髪を一つに結び、パジャマから法衣に着替える。


 セーラとカイが一階の広間に駆け降りると、見覚えのある二匹の悪魔と竜が、崩れかけていた宿屋を更に破壊していた。

「へややぁっ(そんなところに隠れていたか)」

「お前ら…ビビって逃げたんじゃなかったか」

 カイが煽り挑発する。

「へぶらぁ!(問答無用!)」

 レア武器である魔槍ロムルスを構え、カイに向けて百裂突きをするアスモデウス。

「ぶららららららららるァァ!!」

「うわっと」

 軽い身のこなしでカイは槍を避ける。

「そんな武器を持ってたのか。…欲しいな」


 パトラは大きめの白いパジャマ姿のまま階段を降り、呪文の詠唱を始めた。

「へやぁっ(来たな)」

 パトラを見つけたマモンは対象の欲望を増大させる"ミルク色の魔弾"を放つが、パトラのシールドにあっさりと弾かれてしまう。

「へやふやっ(効かないだと)」


 続いてアスモデウスが少し距離のあるセーラに向かって、緋色に染まった魔槍を突いた。

「へるぁッ(くらえっ)」

 槍の先端から非常に細いレーザーのような光線が照射される。超スピードの光線はセーラの肩を掠めた。

 セーラの身体の自由がコンマ数秒止まる。

 その隙を見逃さずマモンは『パンドラの空き壺』をセーラに向け使用する。

「……!?」

 セーラはマモンの持つ壺に吸い込まれそうになるが、その前に金縛りから戻り、四枚の羽根を羽ばたかせて宙に逃げた。

 そしてパトラの呪文の詠唱が終わる。



« 等活地獄(セクタセプラ)!»



 複数の鋭利な真空の刃がマモンに向けて放たれる。マモンは壺ごと縦に並行にスライスされ「へやぎゃァァ!!」と断末魔の叫び声をあげて倒れた。だが、まだ生きており、マモンは輪切りになった身体に苦悶の表情で何事か訴えようとしていた。そして歩み寄ったアスモデウスに裂けた頭を踏み潰され絶命した。


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