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合流

「レイエスの中身は開発者の一人だったという事か…ダニーさんの話では、似た名前にライナスってのがいたな」

 ダニーを思い出しながらカイが言った。

「戻ってこい…って、その人と知り合いなの? セーラの本当の名前はミシェルなの?」

 矢継ぎ早に質問するマリア。

「ごめん、わたしにもはっきりとは分からなくて…色々混乱してる」

 セーラは申し訳なさそうに謝った。

「セーラは別世界から来た存在なんだ?」

 パトラがあけすけに訊く。

「遠い世界の記憶が断片的にある…けど…うーん」

「あまり考えすぎても良くない、分からないものは仕方ないさ。己の信じた道を全力で進むだけだ」

 カイは気を遣って話題を変えた。

「これからの悪魔との戦いは生半可な力と覚悟では乗り切れないかもしれない、まぁそれは今までもそうだったが…」

「今の戦力じゃ悪魔の本隊に狙われたら瞬殺されるよ、三人とも」

 パトラが悪意なく煽る。

「んぐ……」

 カイは反論できなかった。

 そしてせっかく皆に救われた命を再び投げ出すことになりかねない、箱庭アプリのバグにその身を投じる事も考えていた。



 ◆

 オルドの塔跡地、隠し地下室にて。

 オルドことソロは箱庭アプリの画面を眺めて危機感に震えていた。

 冥府の神ハデスが蘇った、それに伴いセーラやルーテの記憶を戻している。

 そして、一気に追加された万魔殿(パンデモニウム)のデータ。

 悪魔どもを束ねる首魁、堕天使ルシフェルに仕える魔神や悪魔の数が多すぎる、個々のステータスが高すぎる、こちら側の戦力がどうしたって足りず、数の上でも歯が立たない。事実、地上最強であった天空神ゼウス率いるオリュンポス十二神までもが悪魔の軍団に全滅させられたのだ。

 そして何よりやばくてまずいのは、このルシフェルが箱庭の存在に気づき、私たち開発者が死する方法を半ば突き止めていることであった。今はまだ自由に箱庭のキャラクターに転移でき、現世に戻る機能も作動するが、これらが箱庭世界に転移後、何らかの不具合で麻痺やパンクしたならば……。

 ジュリアンは気づいているだろうか? バグカイに敗れてから、とんと音沙汰がないが、バグった仕組みでも分析しているのかもしれない。もはやそんな余裕や猶予は無いというのに。


 ソロは数年ぶりにいったん現世に戻った。いや避難した。セーラ達を置いて危険な環境から逃げたのである。

 今まで世の中の情報などは箱庭内に居ながら逐一得ていたが、実際に転移から戻ったのは本当に久しぶりであった。

 人も疎らな地下鉄駅前、数軒のコンビニ、そこから徒歩五分、車もすれ違えない狭い道路の住宅街、変わらぬ景色がそこにあった。

 以前住んでいたアパートの一室はもう他人が住んでいて、ソロはホームレスになっていた。


 そこでソロはジュリアンの住まいを訪ねることにした。

 彼は豪邸に住むお坊ちゃんであるから、私の過ごす部屋くらい余っているはずだ。断られたら箱庭内で一度殺された事件を水に流す、という交換条件で居座ろうとソロは考える。

 彼とはとことん意見が合わないが、それでも今後のことを色々相談しなければならない。

 出来れば他のメンバーにも来てもらいたいのだが、ダニーはもうこの世にいないし、ミシェルは恐らくセーラの中、ライナスは来ないであろうから、結局ジュリアンと二人で話すしかない。


 ジュリアンの居住している屋敷は町外れの森林を抜けた先にあり、柵で閉まった前門に着くとソロはインターホンを鳴らした。

「ソロか!? 入れよ」

 本人がコールに出ると、門が自動でガラガラと音を立てて開く。ジュリアンが長髪を靡かせて玄関からソロの元まで駆け寄ってくる。

「待っていたよソロ、よく来てくれた」

 両手を広げるジェスチャーで、ハグを求めんばかりのジュリアンの目は涙で潤んでいた。


お読みいただきありがとうございました。

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