表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/98

レイエス

 オリュンポス山の中腹にあるコキノピロス村。

 元は石造りの家々が立ち並ぶ美麗な村であったが、神と魔神の烈しい戦いの末、あちこちの建物が酷く倒壊していた。


 セーラたち一行が到着した時には、生き延びたオリュンポス十二神のアレスとアポロンは、悪魔の追撃によって既に亡き者にされていた。二人とも見せしめのため十字に磔にされ、見るも無惨な姿で屠られていた。


「くっ…遅かった……」

 悔しそうにセーラが呟く。


 物陰に潜みながらセーラ達を見つけたマモンは、パトラが上級悪魔だとすぐに気づくが、自分の部隊以外の悪魔に対する仲間意識は希薄であった。


 落ち葉がひゅぅぅっと音を立てて風に舞う中で、セーラは父ハデスの気配を感じ取った。遥か上空を見上げると復活したハデスと思しき黒球が、他の星々と同じくらいの大きさの点として存在し、地上の様子をゆったりと監視していた。


「もしやセーラ様ですか?」

「誰!」

 セーラが急いで振り返ると、そこには地元民と思われる軽装の少年がいた。

「噂に聞き及んでおります。世界を救ってくださった天使セーラ様ですね…僕の名前はレイエスと言います」

 戦士然としたその村人はまず自己紹介をした。

「この神聖な村は、山頂に向かう途中の悪魔どもに蹴散らされて、ほぼ全滅してしまったようです、僕が旅から戻ったらこの有様で……」

 物音が殆どせず、辺りは静寂に包まれていた。

「手負いであったアポロン様、アレス様も……僕は…戦いたかった」

 拳を握り締めるレイエス。

「セーラ様、悪魔と戦うつもりでしたら、僕も助太刀いたします。これでも偽勇者と呼ばれるほどには腕に自信があります……フッ」

 そう言うとレイエスは、物陰に隠れながら会話を盗み聞きしているマモンのほうに視線を向ける、と同時にダッシュして飛びかかり、剣で敵の身体を斬りつけると優雅に着地しポーズを決めた。


「へがぁぁっ」

 胸部を斜めに斬られたマモンは、傷口を手で押さえながら遠くに飛び退いた。押さえた傷はすぐに治癒されていく。


「カラスの悪魔!? あんなところに隠れて」

 マリアが驚く。

「本隊はもう引き上げたかな。ここには数匹いるだけ」

 パトラが淡々と言った。

「左様ですね、でも僕たちが組めば、数匹の悪魔くらいすぐに退治できますよ」

「あのカラス以外の、他の悪魔はどこよ?」

「あそこだ!」

 カイが示した方向には、竜に乗ったキメラの悪魔が、空を遊泳するようにゆっくりこちらに向かっていた。

「それとあそこに」

 パトラが上空を指差す。

「わたしの知り合いもいる」

 ハデスの存在をパトラも察知していた。

「降りてこない。見物のようね」



「へブるるるァァァァ!!」

 下品な掛け声とともに暗黒竜に乗った三つ首のキメラが、スピードを増して襲ってくる。



« 武帝焔灼焼球(インテリペリ) »



 パトラが呪文を唱えると、襲いかかってきた地獄の竜の周囲に結界が作り出され、燃えさかる多数の火球がその中を飛び交った。


「ブルァッ」


 アスモデウスは結界を抜けて外へ飛び出したが、竜のほうはそのまま焼き尽くされドスンと大きな音を立てて落下した。


「あ、あの少女は」

 レイエスが驚く。

「なんと激しい魔力なんだ…」


 レイエスはパトラが悪魔だという事実に気づいていないようであった。前方に構えた彼の剣尻にカラフルな蝶が二匹止まった。そして、セーラ達に共闘の返事を聞く前に、悪魔どもとの戦闘は開始された。


お読みいただきありがとうございました。

↓↓ブクマ、星評価ぜひお願いします。励みになります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ