魔境ティベル②
「大した敵はいないようね」
パトラは辺りの気配を探りながら言った。
「まー甘ちゃんヒョロガリとマリアの修行にはなるか」
「むむ……甘ちゃんヒョロガリだと…」
パトラはカイのバグ事件を知らなかった。が、ハデスとスルトの存在が消えたことには勘づいていた。
カイは襲い来るリザードマンやホブゴブリンなどの亜人種を次々と氷漬けにしていく。
「やるじゃん」
パトラが感心する。
そして一行は森深きボスの居城に辿り着いた。
そこには玉座に座った唯心伯フロムと名乗るデーモンが待っていた。
「よくぞここまで…ぎゃおお~!!」
最後まで喋らせず、パトラがあっさりと無詠唱爆炎呪文で瞬殺する。
パーティは死者の指輪を手に入れた。
「すごーい!」
マリアがパトラの身体に絡みつく。そして、そっとキスをする。
それを見たセーラの胸がキュッと痛む。
「な、な、なにを……」
パトラはマリアを押して離れ、口を拭う。
「キスって気持ちいいでしょ……もっと良くしてあげる」
マリアは更にパトラにまとわりつき、首筋を舐め上げる。
「ちょっとマリア…やめてったら」
マリアの手が妖しい動きでパトラの下腹部まで延びる。
「……さぁ次行くか」
カイが二人を両手で離す。
「地図を見せてくれ、パトラ」
「借りは返したしここでお別れよ」
「パトラちゃん! 一緒にオリュンポスに行こうよ」
「楽しい?」
「うん!」
「でも駄目。わたしはやる事があるから…」
「やる事?」
「恐ろしい魔力を持った相手にやられた兄の氷漬けがある」
カイはバグった自分がやったという事は黙っていた。セーラ達も何も言えなかった。
「解呪方法を探さなきゃ、そして仇を討つ」
「恐らく解呪は唱えたもの、術者しか不可能だよ」
「それほど超高レベルの呪文ってわけね…そいつを探す」
「わたしたちも……手伝うよ」
セーラもマリアもそれしかかける言葉が無かった。
その頃、オルドは箱庭アプリを試していた。
相変わらず個人の僅かな記憶、直近の些細な行動ぐらいしか弄ることができない。
冥界のデータを見る。多量の追加がある。広大な冥府の中心にできた万魔殿、全部で九つの層があり、ハデス亡き今ルシフェル支配の元、魔神や悪魔どもがひしめいている。ソロモン72柱の悪魔もしっかりと全て作成されていた。
『ルミナス・エンジェル・アイ』
オルドはより詳細に万魔殿の内部を探る。極彩色の蝶がヒラヒラと飛び回っている。その中央に神々の祭壇がある。蝶はライナスが魂を分散させてよく転移する媒体でもあった。
ハデスの復活と悪魔の地上進出は、これまでリセットされてきたが、それが効かない今、地上は未曾有の地獄と化す危険性がある。この冥界を設定した人物の正体と目的をオルドは推測していた。
お読みいただきありがとうございました。
↓↓ブクマ、星評価ぜひお願いします。励みになります




