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オリュンポス壊滅

「おおっさすがは新生カイ! まさか氷と炎、両方の魔法を同時に唱えるとは、高度な技術だ」

 オルドが褒め称える。

「このシミが口を開いて勝手に…」

 カイが片腕のシミを見回す。

「それに……バグっていた時のあの魔力には到底及ばない」

「もうやめてよ、あんなの!」

 慌ててマリアが釘を刺す。

「あの力は、あれは悪魔じみていたわ」

 セーラが臨戦態勢を解いて言った。

「それにしても、こんなところにまで敵が」

「もう安全な場所はどこにも無いの……?」

 マリアが顔を顰める。

「狙われてるのは私とオルド様だけ、マリアとカイは無理しないで」


「いや、ここより北、天空神ゼウスの治めるオリュンポス山が悪魔に攻め入られ崩壊寸前だ」

 オルドが割って入る。

「えっじゃあ援護に」

「もう遅いだろうな、勝敗はほぼ決した」

「そんな、オリュンポスの他の神々は…全滅したと?」

 カイが驚いてオルドの顔を見た。

「不在の神や眠っている者もいたのだろう」

「何? オリンポスって?」

 マリアが無垢に訊ねる。

「オリュンポス山は神々の最後の砦だ。そこが落ちたとなると、これからは私達だけでなく、天地の全土に悪魔の危険が及ぶ」

「そんな強大な力が、また世界を暗黒に」

「強すぎる…強すぎるんですよ! 奴らは!」

「何かの物真似すか、オルドさん…」

「…戦闘はまもなく終結するであろう。確認するにアレス神、アポロン神はまだ存命だが」

「間に合わなくても、戦火の跡地へ向かおう」

 勇ましくセーラが言う。

「オリュンポス山へ行く道中に上級冒険者の秘境、魔境がいくつかある。そこで強力な魔物との戦闘経験値や装備を整えるが良いぞ」

 オルドは導きの助言をする。

「出発しましょう。あたしももっと強くならなきゃね」

 マリアがカイに声をかける。

「オルド様も行く?」

「いや、私の身体は成長しきってないし、ここを守らねばならぬし……」

「はいはい」

 セーラとカイがマリアの両手を取り、三人は並んで飛び立って行った。


「しかし、オリュンポス十二神を滅せるほどの戦力…私とセーラを消す為にしては大袈裟すぎる…」

 オルドは一人、呟きながら思案した。


(制御がままならなくなった箱庭世界でも、新しいイベントやキャラクターを生み出せている者がいる、ジュリアンか、ライナスか、はたまたミシェルか……)



 ◆

 オルドの言葉通り、天空神ゼウスの治める聖地オリュンポス山には大量の悪魔どもが攻め入っており、闘いは終焉に向かっていた。

 激しい落雷の乱れ撃ちの中、ゼウス側の味方の多くは倒れ、ゼウス一人に対して複数人の打撃斬撃、後方からの魔法攻撃が重ねて連続され、とうとう…


「くっ! わしを誰だと……」



« 神殺しの雷刃 »



 幾筋もの巨大な雷の刃がゼウスの身体を貫き、ドスドスドスドス!!! と地響きを立てて地面に刺さる。


「うぎゃおおおおおおおおおおおお!!!!」

 身体に刺さった雷の刃は、そのまま内側から大爆発を起こし、ゼウスの首が飛んだ。


 悪魔たちの部隊は堕天した熾天使ルシフェル、強欲のマモン、死の神タナトス、ほか上位悪魔多数、人造人間多数とゼウスの部隊を数でも圧倒していた。


「さらばだゼウスよ、ここからは我々が世界を統治しよう…」


 雷撃に特化したゼウスを雷撃で殺し、その首を持ってルシフェルは、六枚の羽根を拡げ飛び去る。他の悪魔たちもそれに続きオリュンポス山を後にした。


お読みいただきありがとうございました。

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