第160話 バイクのエンジン音はお静かに
昨夜はフラフラになりながらも、サッとシャワーだけ浴びて、早々にベッドに倒れこんだのだが、朝早くから、ノワールに起こされた。
『お腹すいたのだ』
「ふぁ~っ、ごめん、ごめん」
髪の寝ぐせがひどいまま、ノワール用に粉ミルクを用意する。それを飲んでもらっている間に、自分用のシリアルとブルーベリーを皿に盛る。今日は、ちびっ子たちの食事も準備しなくちゃいけないので、さっさとすませることにする。
『五月、ぼくにもちょうだい』
「わかった、わかった」
私よりも少し多めにブルーベリーを盛ってあげる。これくらいあげても、まだだいぶあるし。
「早いところ、ジャムにでもしないといたんじゃうかなぁ」
私の食事としては、これで十分なのだけれど、最近のノワールは、私の知らないうちに、外に食べに行っていたらしい……いわゆる魔物を。
うちの山の中にはいないらしいんだけど、最寄りの山……あの盗賊とかがいた山とかの周辺には、いろいろいるらしい。昨日はビャクヤたちがいたから遭遇しなかっただけだったとか。怖いわ。
朝食を終えた私は、立ち枯れの子供たちの食事を用意するためにログハウスを出る。昨夜は遅かったから、きっとまだ寝ているだろう。
今日はビャクヤはいないのでバイクで移動。腰のカウベルの音は気になるものの、これを外す勇気はない。
立ち枯れの拠点に着いてみると、ガズゥが飛び出してきた。
「おはよう!」
「えっ!? お、おはよう?」
「みんなはまだ寝てる?」
「いや、女の子たちはまだ……」
バイクを止めて、小屋の方に行ってみると……ちびっ子男の子組が抱き合って目に涙をためていた。女の子たちは爆睡中。
「え、え、どうした、どうした?」
「す、凄い音が聞こえてっ」
「ぶるるぶるるいってたっ」
あー。
もしかして、バイクの音かっ!
『五月~、うちらの方は私がいたから、今は落ち着いてるけど、その音のなるやつ、うるさい~』
ユキに怒られてしまった。
たぶん、子供たちを見守ってくれていたのだろう、ホワイトウルフたちも、若干、落ち着かな気だ。
「ごめん、ごめん……こら、ガズゥ、それに触らないで!」
バイクをつつこうとしているガズゥに注意する。ちびっ子たちがビビってるのに対して、ガズゥの方は好奇心旺盛だ。
「さてと、女の子たちは……まだ起きてこないよね。ガズゥたち、朝ごはん、食べられるかな」
「食う!」
「食う!」
「うー!」
昨日の憔悴していた様子に比べて、今の元気いっぱいな彼らに、ホッとする。何度も思うけど、ブルーベリー最強。
池のところで顔を洗ってくるように言ってフェイスタオルを渡すと、さっさと動き出す男の子組。
「もしかして、あれだけ元気なら、しっかりしたのが食べられる?」
最初は、あまり食べていないだろうから、レトルトのおかゆでもと思ったのだけれど、ああも元気なら。
「ソーセージと目玉焼きでも大丈夫かな」
私は『収納』から、カセットコンロとスキレットを取り出すと、さっそく朝食の準備にとりかかった。





