番外編 航とマナの17年 高1と高3 R15
※R15の内容です※性描写あり
(……はぁ、勝手に上がってるし)
部屋に入った瞬間、ベッドで漫画を読んでるマナが目に入った。
スカートから伸びた脚が、やけに視界に刺さる。
「……何してんだよ」
「おばさんが“2階で待ってていいよ”って言ってた。あと、これ返しにきたの」
差し出されたのは、この前貸した少年漫画。
俺の部屋なんて相変わらず散らかってるのに、平気な顔で居座ってる。
「まだいるの?」
「次に借りるやつ探してたら、途中で読み始めちゃった」
「今ちょうどいいとこなんだってば」
無防備に寝転がるマナに、眉をひそめる。
(……太もも際どい。やべ……理性飛ぶ)
「スカート短すぎ。ジャージそこにあるから履け」
「はいはい、神経質〜」
笑いながらページをめくるその声が、やけに耳に残る。
「高校生活楽しい?」
「うん。美術の授業あるし、友達できたよ」
「そういえば航。ボード部、インターハイ決まったよね」
「あぁ。今年は3位以内狙ってる」
「すごいじゃん」
背中を向けて制服を脱いだとき、後ろから声が飛んだ。
「……うわ、航、腹筋割れてるじゃん。見せてよ」
「普通だって。他のやつもこんなもん」
シャツを着ながら、ふと口をついて出た。
「……高校でさ、彼氏できた?」
少し間があって、
「……できたよ」とマナから返ってきた瞬間、心臓が変な音を立てた。
「……はあ? いつの間に? 年上? 同級生?」
「……すぐ別れたけど」
「なんで」
「なんか違った。向こうもそう思ってたと思う」
「……したの?」
「何を?」
「……キスとか……最後まで」
「してないよ。図書館行ってただけ」
「……そっか」
胸の奥がじわっと熱くなる。
「俺は中3のとき、流れで……」
「知ってるよ。航、黒髪にしてからモテてたし」
マナは無防備に近づいて、髪を撫でてくる。
ふわっとしたマナのシャンプーの香りがする。
(近すぎる……)
──プツン
と何かが切れた
髪に触れながらからかうマナの手を、そっと振り払った。
そして、気づいたら言っていた。
「……お前さ、俺が手出さないって思って、安心してんだろ」
「……え?」
その顔を見た瞬間、気づけば手が動いてた。
マナをベッドに押し倒していた。
「ちょ、航……!」
「今、お前がいるの、男の部屋のベッドの上だぞ」
声は自分でも驚くくらい低くて、少しだけ震えてた。
逃げようとする手を、ぎゅっと握る。
「……俺が教えてやろうか」
冗談じゃない。本気だって、目でわかるくらい。
でも、マナはゆっくり首を横に振った。
「……航は、誰とでもそういうことできるかもしれないけど…… 私は……好きな人としかしたくない」
一瞬、息が止まった。
「……俺は……お前のこと……」
言いかけて、唇を噛んだ。
この先を言ったら、戻れない気がした。
そっと手を離す。
マナは起き上がって、俺をまっすぐ見ていた。
その視線から目を逸らすのは、悔しいくらい難しかった。
時計の秒針だけが、やけに大きく響いてた。
続く




