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番外編 航とマナの17年 中1と中3


校門の前、風に揺れる自分の金髪が視界の端でちらつく。

ピアスの金属がカチャリと鳴り、仲間の笑い声が耳に心地いい。


この感じが、今の“俺の居場所”だ。



(学校とかめんどくせぇ……教師もウザい……けど……)





人混みの向こう、小さな影が立ち止まった。

白い腕章。真っ直ぐこっちを見てる。



「……航、金髪ダメだよ。黒に戻して」


その声を聞いた瞬間、目の奥が一瞬だけゆるむ。



でも——仲間の前だ。簡単に笑顔なんて見せられない。



睨むように見せたけど、近づいてみればやっぱりマナだった。


「……マナ? なんでこんなとこに?」


「風紀委員だから」



きっぱりした声。

けど、そんなの俺からすれば“いつも通り”だ。


後ろで仲間のひとりがマナを睨み、前に出る。


「は? 一年のくせに何リーダーに口出してんだよ。ナマイキなんだよ」


(おいおい……マナに何してんだよ)


マナの肩が一瞬だけ揺れたのを見て、思わず手を伸ばす。


(怖がらせんなよ……)

仲間の肩を押して下げる。


「やめとけ。こいつ、昔からのダチだから。手ェ出すなよ」


少しだけ口元が緩んだ。


——でも、ここからは俺の“役目”だ。

からかって、軽く受け流してやる。



「……確かに、そいつの言う通り生意気だよな。二つ上の先輩にタメ口は失礼なんじゃない?」


「小さい頃から甘やかしすぎたかもなー。そろそろ“しつけ”してやんなきゃ……先輩として」


「“航先輩、黒髪に戻してください”って敬語で頼んだら、考えてやってもいいけど?」



ニヤつく俺に、マナは眉を寄せながらも視線を外さない。


その目の真っ直ぐさに、ちょっとだけ胸が鳴る。


「……航先輩。規則ですので……黒髪に、戻してください」


語尾がわずかに弱まる。

頬が赤くなるのが、はっきり見えた。


(……やば。かわいい)



「ははっ!  敬語、かわいーな。合格!」


後ろを振り返る。


「お前ら、今日帰ったら黒に戻せ。全員な!」


「え〜っ!?  航くんまでそれ言う!?」 「なんで俺まで〜〜!」


「シャツもしまえ、ピアスも取れ。……行くぞ」

「てか、お前は坊主な」「えっ…なんでっすか!?」




歩き出しながら、自分の耳からピアスを外す。

仲間たちは文句を言いつつも、ついてくる。


すれ違いざま、声を落として言った。


「……怖がらせて、ごめんな」



一瞬、マナが驚いた顔をする。

その表情を見て、心の中でそっと笑う。


(ほんと……変わんねぇな、お前)





続く


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