47 麻美の観察
土曜日、麻美がふらっとマナのお店を訪れた
「マナ、来たよ〜!」
厨房から顔を出すマナは、驚きながら微笑む
「麻美、どうしたの?」
「この間の話、気になってさ。
実際にどんな人なのか見に来たわけよ」
店内の雰囲気を見渡す
シンプルで、でもどこか温かみのある空間
そして——厨房の奥に、松永がいる
麻美は、一瞬だけじっと彼を見つめた
(なるほどねー、目鼻立ちはっきりして、俳優にいそうな顔してる……あと日常的に鍛えてる……マナは体格がっしりした人タイプだったなー、なるほど…マナのタイプど真ん中なのね……そりゃ優しくされたら好きになるわ)
───
席に座り、マナが松永に麻美の事を説明すると
厨房から出てきた
「マナちゃんの友達?今日はありがとうございます。もう少しでマナちゃん手が空くので待ってて下さい」
軽く会釈した
(近くで見ても若くみえる、ちゃんとした人っぽい……?)
麻美は、じっと観察する
(人は見かけだけで判断出来ないって、彼話してたよな……)
───
マナがムースの仕込みをしていた
松永は自分の仕事をしながら
マナが次に使うセルクルをとって
マナの台に置いていた
「えっーとセルクル、あっ…ありがとうございます」
(えっ……。)
麻美は、その瞬間を見ていた
自分の仕事しながらマナの事をちゃんと見てるんだ…
(なんか仕込み中、無口って聞いてたけど……思ってたより見てるし…ずっと、優しい)
マナを見る目が優しくみえる…
───
マナは仕事が落ち着き、麻美の席に向かう
「松永さん、思ったより良い人そうじゃん」
「えっ……」
「冷たい職人の感じで、もっとぽっちゃりのおじさんかと思ってた」
マナは、少し驚きながら微笑む
麻美は、ラテを一口飲み、視線を上げる
「マナが楽しそうなら、もう止めない 好きなら、好きでいいじゃん」
マナは、目を丸くした
「でも、最初は……
最初は現実的に見ろって言ったけど——」
「今、マナが幸せそうだから、応援するしかないでしょ?」
その言葉に、マナは思わず笑った。
「……麻美、ありがとう」
「いいよ。でも傷ついたら、すぐ相談ね?後私が持ってる恋愛本全部貸すから!」
「ありがとう」
2人の笑い声が静かに溶けていった——
松永は楽しそうに笑う2人をちらっと見た
(…俺……何か…あの茶髪の子に変な事言ったか?さっきまですごい視線感じた……)
松永はまさか自分の事を話してるとは夢にも思っていなかった
次回へ続く




